大幅なTCO削減で既存導入サイトの置き換えを狙うロータス

【海外記事】2002.1.31

 グループウェアのナンバーワンブランドとしての「Notes/Domino」という下りを何度原稿の中で書いてきただろうか。大企業への需要が一巡したことや景気後退の波に逆らえず,一時ほどの急激な導入サイトの延びはないものの,Notes/Dominoのビジネスは相変わらず堅調なようだ。

 2001年6月時点の米国のシェアを市場調査会社であるIDCの調べで見ると,トータルユーザー数で38.7%のシェアを獲得。マイクロソフトの33.8%には肉薄されているように感じる数字だが,金額ベースでのシェアは50%と他を圧する力を発揮している。

 この状況は日本市場でも同じだ。直接比較できる数字ではないが,導入サイト数(導入事業所数)で比較したレポートによるとNotesは55%ものシェアを持っている。昨年は,テロ直後こそ,営業面での大きな影響を受けたようだが「堅調」という言葉がふさわしい結果を残しそうだ。

 そのロータスの営業面では,現在2つのミッションがあるという。1つはここ数年,大企業への導入が進んでから,常にチャレンジし続けている中小規模事業者市場の開拓であり,もう1つは既存ユーザーの移行だ。

 中小規模事業者向けの営業では,スケジューラの使い勝手やWelcome画面の柔軟性の向上など,エンドユーザー向け機能の使い勝手改善が大きな意味を持つだろう。iNotes Web AccessのパフォーマンスがDomino 6で改善されたことも良い材料と言える。

 さらなるシェア拡大を狙うためには中小規模事業者の獲得が不可欠だけに,ロータスは継続して中小規模事業者市場の攻略にチャレンジするという。米国では「Move2Lotus」と呼ばれるる,競合製品からの移行キャンペーンや,新規にグループウェアを導入するユーザー向けに払い戻しを受け付ける「Buy-Backプログラム」といったマーケティングプランを展開し,ExchangeおよびGroupewiseのユーザーからの乗り換え需要を掘り起こしている。

 また「IBM eServer」とのバンドルパッケージを用意する予定もあるという(日本ではIBM製品とのバンドル販売は予定されていない)。日本ではこれと同じマーケティングプランを展開するわけではないが,やはり引き続き中小規模事業者の獲得に向けて,キャンペーンなどのプランを実行に移す可能性が高いという。

 しかしロータスがもっとも力を入れるのは「既存ユーザーを守り,ともにシステムをより良いものにしていくこと」だと担当者は話す。既存ユーザーを育てることで,既存インストールベースをバージョンアップさせることのメリットを創出する。ユーザーが一歩前に前進するサポートをすることで,自らのビジネスにもつなげていくということだ。

 この点において,最も力を入れるのがTCO削減に関する提案だ。詳細な記事は別途掲載済みだが,新バージョンのDomino 6は,信頼性の向上,管理性の向上,パフォーマンス向上などが実現しており,Notes 6との組み合わせではクライアントのバージョンアップなどをネットワークから集中して行うSmart Updateや,パーソナルデータをサーバ側に置くことで実現するローミング機能などが利用可能だ。

 これらの新機能を用いることで,導入サイトごとに具体的にどのように運用が変わっていくのか,そして導入コストと削減コストの見積もりと見積もり根拠を示していく。担当者は「バージョンアップのコストはもちろんかかるが,それを大きく上回るTCOの削減が可能だ」と話す。

 2001年12月にRadicati Groupが発表した調査データによると,Domino R5はExchnage 2000と比較して,導入,メンテナンス,インストールと設定,ダウンタイムなどの分野で低コストであるという評価が出ている。特にダウンタイムコストは,Exchangeの69ドル72セントと比較し,20.73ドルと圧倒的に低い。

 しかし,一方で管理者のコストはExchangeの25.54ドルに対して93.04ドルと水をあけられている。Domino 6では信頼性向上の努力により,アドバンテージのあるダウンタイムがさらに改善されたことに加え,従来の弱点であった管理性の問題を克服するため,多くの機能を投入しているという。

 Notes/Dominoを導入しているユーザーの中には,未だR5に移行していないサイトも少なくないが,それら保守的なユーザーに対して,ロータスは明らかなコスト削減を訴えることでDomino 6への移行を促す。元の管理者コストが高いだけに改善効果は大きい。

 実際にベンダーたちが参加しているLotusphereのセッションでも,サーバの管理性向上の話題は歓声が上がるほどの好評を博している。R5を見送ったユーザーも,新バージョンには興味を持つのではないか。そうした期待を感じさせる雰囲気が会場には溢れていた。

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▼ロータスソフトウェア

[本田雅一 ,ITmedia]