Interview:組み込みLinux市場で「世界征服」を目指すモンタビスタ

【国内記事】2002.2.22

組み込みデバイス市場に,Linuxをベースとした水平方向のソリューションを提供しているモンタビスタソフトウエア。新製品の投入で,コンシューマ市場および情報家電分野からテレコム市場にフォーカスを広げた同社の今後の戦略と,Linuxやオープンソースコミュニティへの貢献について,米モンタビスタのマーケティングディレクター,ビル・ウェインバーグ氏とシニアプロダクトマネジャー,アンソニー・ジャクソン氏に話を聞いた。

米モンタビスタのジャクソン氏(写真左)とウェインバーグ氏およびマスコットのHard Hatペンギン

ZDNet これまで「Hard Hat Linux」と呼ばれていた組み込みLinux製品の名称が,新バージョンから「MontaVista Linux」に変更されました。これは,どのような戦略によるものなのでしょうか。

ウェインバーグ モンタビスタは,組み込みLinuxの分野では著名なジム・レディが設立した会社です。これまでは,技術面ではHard Hatブランドを,会社としてはMontaVistaブランドを,と2つのブランドによりビジネスを展開してきました。

 ちょうど6カ月くらい前に,マーケティングチームで今後のブランディングについて話し合いの機会を持ったのですが,そのときにブランドを一本化し強化すべきではないか,という結論になりました。そこで,企業イメージとしてのMontaVistaブランドを前面的に打ち出すことにしたのです。

 モンタビスタは,MontaVista Linux製品だけでなく,クロスプラットフォーム開発環境,カーネル,コンポーネント,モンタビスタゾーンによる最新情報の提供,ソフトウェアのアップデートなど,組み込み分野に関わる,水平方向のあらゆるソリューションとしてプロジェクトごとに提供しています。また,グラフィックス,Java,高可用性などの技術的な要素に加え,プロフェッショナルサービスやトレーニングなども含まれています。

 提供するソリューションが多岐に渡るため,ブランドの統一化をした方がビジネス面でも展開しやすいという考えもありました。

ZDNet 製品名の変更により,どのような効果が期待できますか。

ウェインバーグ すぐに目に見える効果を得ることはないかもしれません。しかし,長期的に見ればビジネスに対するメリットは大きいと思っています。短期的にもわれわれの会社名と提供する技術が顧客にイメージしやすいという意味で効果があると思います。

ZDNet Hard Hatブランドをなくすことで社内の反発はなかったのですか。

ウェインバーグ (マスコットの)Hard Hatペンギンがいなくなるのか,ということで動揺はありました(笑)。しかし,ペンギン自体は,元々はLinuxのマスコットなので,今後もそのまま使っていきます。

ZDNet Hard Hatは,Red Hatに対抗したブランド戦略だったのですか。

ウェインバーグ Linux分野では,Red Hatが有名なので,よく間違われたりするのですが,Linux分野では,赤や青や黄色など,さまざまな帽子が登場します。ジムが名づけたHard Hatというブランドは,別にRed Hatを意識したわけではなく,ヘルメットが持っている,堅牢性や信頼性,安全性というイメージを,われわれの技術や製品にも取り入れようと考えたのです。

コミュニティへの貢献が将来性を約束

ZDNet 組み込み分野でのモンタビスタの強みはどんな点なのでしょう。

ウェインバーグ われわれの強みには2つの側面があります。1つは,「独自プラットフォーム対オープンソースプラットフォームでの強み」であり,もう1つが「オープンソースプラットフォーム同士での強み」です。

 まず,オープンソースプラットフォームと独自プラットフォームでの強みですが,オープンソースを利用することにより,ロイヤルティがフリーであること,ソースコードにアクセスできること,そして複数のベンダーのソリューションが利用できるという強みが挙げられます。

 例えば,独自プラットフォームを利用すると,その製品を提供するベンダー1社に囲い込まれてしまい,拡張性やほかの製品との接続性の範囲が狭くなってしまいます。しかし,オープンソースを利用すれば,複数のベンダーのソリューションを組み合わせて利用することも可能です。またLinuxは,インターネットなどのネットワークにつなぎやすいという利点もあります。

 次に,オープンソースプラットフォーム同士での強みですが,われわれが提供するソリューションは,オープンソースそのものであるということです。例えば,リネオが提供するソリューションでは,Linuxをベースにしているものの,独自の拡張が施されています。また,レッドハットはエンタープライズ向けの戦略が中心で,それを組み込み分野にも採用しようと考えているようなので,組み込みソリューションをどこまで保障してくれるか不透明です。

 その点,モンタビスタは,オープンソースコミュニティのキーメンバーでもあります。ですから,コミュニティとコミュニケーションしながら,新しい技術を開発しています。単にオープンソースコミュニティに関わっているだけの会社は多いのですが,われわれはオープンソースコミュニティの中で密に活動しているのが最大の特徴です。

 現在,モンタビスタは,オープンソースを利用して製品を開発し,独自に展開するだけではなく,開発した製品をオープンソースにフィードバックしています。MontaVista Linuxの最新バージョンでは,モトローラ,インテル,MIPS,PowerPC,日立製作所,ARM6つのアーキテクチャ向けに技術を提供しています。この6つのアーキテクチャのクロスプラットフォーム開発技術においてもオープンソースコミュニティに貢献しています。

 また,Linuxにリアルタイム機能を拡張した「プリエンプティブカーネル」の技術もコミュニティにフィードバックしています。この技術は,次期バージョンとなるLinux kernel 2.5に組み込まれることになっています。その意味でも,MontaVista Linuxは,業界標準といえるでしょう。これにより,将来性,拡張性,安定性など,高い品質を提供できるのです。

ZDNet マイクロソフトも組み込み分野に進出していますが。

ウェインバーグ Windows XP Embedded……? (提供するマイクロソフトにとっても,利用する側にとっても)チャレンジングだね(笑)。

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[山下竜大 ,ITmedia]