Interview:Operaブランドを確立し「プレミア」製品として長期的な成功を狙うオペラソフトウェア
【国内記事】 | 2002.2.26 |
2月25日,ノルウェーからオペラソフトウェアのジョン・フォン・テツナーCEOらが来日し,都内のホテルで記者会見を行った。オスローに本社を置く同社は,既に勝負がついたかにみえるブラウザ市場に「第3のブラウザ」「世界最速ブラウザ」の異名を取るOperaを引っ提げて参入している。しかも,巨人のInternet ExplorerがほとんどのPCにプリインストールされている中,4800円という低価格ながら有償で販売しようというのだから驚く。CEOと共に来日したデスクトップ製品担当のディーン・カクリダス副社長とアジアでの事業開発を担当する冨田龍起氏に話を聞いた。
カクリダス副社長(左)と冨田氏。日本のあと,中国,台湾,そして米国を回るというタフな2人だ |
ZDNet 日本語版のダウンロードが好調な滑り出しのようですが,Internet ExplorerがほとんどのPCにプリインストールされている中,オペラソフトウェアはどのような事業展開を考えているのですか?
カクリダス われわれはIEよりも優れたエクスペリエンスを提供し,「Opera」ブランドを確立してきました。低価格ではありますが,お金を支払ってもらえる「プレミア」製品として販売していきます。
また,Webメールのようなサービスと組み合わせ,申し込むとOperaブラウザも提供されるようにしたいとも考えています。
ZDNet 日本における販売パートナーのトランスウェアは,Webメールの「Active! mail」を大学や企業に販売していますね。そうした狙いもあるのですか。
カクリダス オスローから日本市場をサポートしていくのは簡単ではありません。トランスウェアは,既に大学や企業にチャネルを築いており,彼らにWebメールシステムを納入しています。われわれのOperaブラウザであれば,単なるブラウザとしてではなく,メールシステムに適したカスタマイズを行って納入することもできます。
パートナーとしてはハードウェアメーカー,Linuxディストリビューター,ISP,コンテントプロバイダーもあります。われわれは,マイクロソフトと違って,ISPをやっているわけでもありませんし,コンテントを提供しているわけでもありません。競合するのではなく,あくまでも彼らのビジネスを支援していきます。ISPにとっては,Operaを販売し,その手数料を得るということもできます。フリーのIEではそれはできませんし,MSNとは競合してしまいます。
米国のYahoo!とは,Yahoo!ユーザー向けにカスタマイズされたOperaブラウザをOEMする話し合いを進めています。Yahoo!では既にWindows用のIE for Yahoo!がダウンロードできるようになっているのですが,Linux版やMacintosh版はまだありません。
ZDNet それは企業や大学にも言えますね。
冨田 はい。企業や,政府,大学にはざまざまなOSが存在し,管理者もユーザーも単一のインタフェースを求めています。Operaではカーネルがプラットフォームから切り離されており,どのプラットフォームでも同じクオリティが維持されています。
カクリダス Operaでは,ブラウザ,メッセンジャー,そしてe-メールがパッケージングされ,速くてサイズが小さく,そしてセキュアです。セキュリティは最も重要な関心事で,われわれは高い評価を得ています。
ZDNet しかし,LinuxやMacintosh向けの日本語版はまだ出荷されていません。いつになるのですか。
カクリダス 最良のブラウザエクスペリエンスを提供するため,それぞれのプラットフォームごとに出荷のズレがあります。しかし,Linux版が第2四半期初め,Macintosh版は第3四半期初めを予定しています。日本ではMacintosh版への期待が高いことも知っています。
いろいろな収益のストリームがありますが,最も重要で最も難しいのが,「プレミア」製品としてのクオリティです。
われわれは,検索機能としてgoogleを組み込みました。短期的に見れば,もっと有利なオファーもあったのですが金額ではありません。ユーザーへのベネフィットが大切なのです。
冨田 私は今オスロー本社で働いているのですが,長期的なOperaブランドを希薄化させたくないという意識が深く根付いているのを感じます。
ZDNet 昨日もジョン・フォン・テツナーCEOが,フィードバックやユーザー同士のサポートを行ってくれるコミュニティーの存在を誇りに感じてると話していましたね。
冨田 はい。「moonstone.jp」のようなユーザーグループの存在です。これはもちろん日本だけに限らず,世界的な動きとなって,われわれを支援してくれています。
カクリダス 組み込み向けのブラウザは,ノキアなどにライセンス販売すれば,それで完了するようなところがあってシンプルですが,企業やコンシューマーに販売するとなると,常にフリーのブラウザにリプレースされる恐れがあります。「プレミア」製品として販売するには,短期的な金額に飛びつくのではなく,長期的な成功を狙うのがわれわれの一貫した考え方です。
[聞き手:浅井英二 ,ITmedia]