自己管理機能搭載で運用コスト削減を目指すIBM
【国内記事】 | 2002.2.27 |
日本アイ・ビー・エムは2月27日,「IBMフォーラム2002」の会場で,IBMがProject eLizaで推進する「Autonomic Computing」をプレス向けにブリーフィングを行った。この日のブリーフィングでは,Autonomic Computingを統括する副社長,アラン・ガネック氏が講師を務め,同技術の現状と未来について紹介した。
アラン・ガネック氏 |
会見の冒頭でガネック氏は,「時代の流れと共に,あらゆるコンピューティングの価格性能比は向上している。しかしながら,システム全体としてのコストや複雑性も増大してしまった」と話す。
さまざまなアプリケーションが混在するシステム環境で,それらを管理する多くの技術者が必要になってしまったために,システム所有の総コストに占める人件費の割合が飛躍的に増えているという。
こうした現状を救うべく,自己管理能力をコンピュータに持たせるAutonomic Computingが登場したというガネック氏は,「Autonomic Computingによって,TCOの削減,システムの柔軟性の向上,サービス品質の向上などを実現し,顧客に利益をもたらす」と話す。
IBMの考えるAutonomic Computingは,Self-configuring(環境の変化に自己を適応させる),Self-healing(自己治癒),Self-optimizing(外部に合わせて自己を最適化),そしてSelf-protecting(外部からの侵入を防ぐ)の4つをすべて実装したシステムだ。
「呼吸や血圧など,各部門の機能を調整し,外部に対応させる自律神経系を持つシステムを実現する。運用管理者が意識しなくても,すべてを自動的に最適化できる仕組みを提供したい」(ガネック氏)
Project eLizaが生んだ成果の一部は,既にeServer zSeriesに実装されたIntelligence Resource Director(IRD)などで具現化されている。IRDは,zSeries内で稼動する仮想サーバのパフォーマンスをモニタリングすることで,運用管理者の手をわずらわせることなく,動的にリソースを最適化する機能だ。
またガネック氏は,IBMが先週,「OGSA」(Open Grid Services Architecture)の実現に向け,Globus Projectとの協業を発表したことについても触れ,「信頼性,サービス品質は,分散コンピューティング環境でも提供しなければならない。ワークロードを最適に配分し,自律的な管理機能を提供することが必要と考えた」とした。
なお,Globus Projectは,米国防総省,米エネルギー省,NASAなどから資金を受け,米アルゴンヌ国立研究所,南カリフォルニア大学で開発された「Globus Toolkit」を提供している。Globus Toolkitは,分散拠点に設置されたコンピュータを使って,膨大な処理を並行稼動させるための基盤となるオープンソースソフトウェア。
「今日,Autonomic Computingは大きな挑戦だ。われわれは,ステップバイステップのアプローチで,e-ビジネスを支える自己管理技術を開発していく。そして,運用管理者を低レベルな作業や複雑な作業から開放したい」(同氏)
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[井津元由比古 ,ITmedia]