サイベース担当者が語る「ディザスタリカバリの鉄則」(2)

【国内記事】2002.3.07

 その極意とはこうだ。「ユーザーを巻き込み,訓練することが鍵だ。プランだけでは何にもならない」(バーリー氏)

 同氏によれば,同時多発テロ事件とは別に,次のような例があったという。ある金融機関では見事なディザスタリカバリプランを立案した。だが,それが肝心の行員に伝達されていなかった。そのため,いざ緊急事態が発生したとき,行員たちは「いったいどうしたらいいんだ?」と顔を見合わせるだけだったという。

 また別の会社では,「障害が発生したという連絡を受けてリカバリ用の別のサイト(建物)にいっても,その旨が警備員などに通知されておらず,社員も入館証を渡されていなかった。その結果,大勢の社員が建物内に入ることができず,外で待ちぼうけとなった」という。

 こうした事態を避けるためには,プランの段階からユーザーを巻き込むことが大切だ。さらに「どの要素がクリティカルなのかをユーザーと話し合い,ユーザーが何を利用しているのかを理解することが重要。ディザスタリカバリやビジネス継続のためのプランは,技術陣とユーザーという2つのコミュニティの共同作業である」と同氏は述べた。

 別の表現をすれば「いざというときに備えてプランを周知させ,災害訓練を行うのと同じことだ。大事なのは,不測の事態が起きたとき,ユーザーが皆,何をすべきかを知っていることだ。(ディザスタリカバリは)訓練を行い,テストしてはじめて有効になる」(同氏)

 バーリー氏は,ユーザーがどう行動すべきかも含めてプランを想定し,訓練していた好例も紹介した。「あらかじめよく訓練を行っていたある会社の社員は,9月11日の朝,自宅でニュースを見て事件を知った。彼らは何をなすべきかを理解していたため,その日は混乱を来たすことなく,別サイトに出勤した」(同氏)

 同氏はもう1つ,ディザスタリカバリプラン立案後のポイントを指摘した。「常にプランを確認し,レビューするサイクル」である。「プランが陳腐化しないように定期的に見直しを行い,新しいリリースに合わせてアップデートしていくことが重要だ」(バーリー氏)

 バーリー氏によると,ディザスタリカバリにはさらにもうワンステップあるという。「落ちた時の即座の対応だけではなく,元の状態に戻さねば復旧とはいえない。つまりディザスタリカバリには,初期対応と,通常のオペレーションに復帰させるための作業という2つの部分がある」。

 しかし同氏によれば,たいていの企業では初期対応止まりで終わっているのも事実だという。だが真にディザスタリカバリを完結させるには,ここまで考慮する必要があると同氏は指摘した。

 さて,ここまで同氏が説明したプロセスを振り返ると,セキュリティシステム構築のためのプロセスによく似ていることに気付かされる。その点を指摘すると「セキュリティもまた,ビジネス継続のための要素の1つ」とバーリー氏は答えた。つまりビジネス継続という最終的な目的から見れば,ディザスタリカバリとセキュリティのどちらも重要であり,双方をプランに組み入れていく必要があるというわけだ。

「必要な人に必要な情報を」

 そしてサイベースでは,「こうしたアーキテクチャを実現するため,ローカルのデータ管理からミドルウェア,開発ツールに至るまで,さまざまなツールセットを提供している」とバーリー氏は述べた。

 その代表的な例が,複数のデータベース間でデータをレプリケーションするミドルウェア「Sybase Replication Server」や,クラスタ構成を可能にし,ハイアベイラビリティを実現する「Open Switch」だ。システム障害としては,ハードディスクのクラッシュや通信の途絶,何らかの操作ミスなどさまざまな可能性が考えられるが,一連のツールを利用すれば,自動的に接続先を切り替え,プロセスを維持することができる。

 しかも同社の製品は,プラットフォームを問わずにこの機能を提供できることが特徴だ。「われわれの製品は,必要とする人に,常に情報を提供できるようにする。つまり“Any to Any”だ」(バーリー氏)。

 同氏によれば,サイベースではバックアップの自動化などを目的に,EMCやベリタス・ソフトウェアといったハードウェアベンダーとの連携を進めているほか,Linuxプラットフォームにおけるソリューションにも注目しており,ソリューション提供に向けた活動を開始したところだという。

「われわれの製品は,1つのアプリケーションではなく,業務そのものをサポートすることを意図している。ディザスタリカバリはそのデザインの一部だ。サイベースではビジネスを継続するためのアーキテクチャを実現する」とバーリー氏は語った。

「どのような事態が起ころうと,ビジネスが妨げられるようなことがあってはならない」(バーリー氏)

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[高橋睦美 ,ITmedia]