JavaOne 2002 San Francisco Keynote:Java/XMLによるソフトウェア連携へと軸足を移すSAP

【海外記事】2002.3.28

 3月27日,3日目を迎えた「JavaOne 2002 San Francisco」のキーノートにSAPの共同創設者であるハッソ・ プラットナー会長兼CEOが登場した。

 Tシャツやポロシャツにジーンズが大半というデベロッパーらを前にプラットナー氏は,「何を着ていいのか分からないときにスーツを着る。エリソン氏はいつもスーツなので,それに習ったがどうやら場違いだったようだ」と会場を沸かせた。

JavaOneには「場違い」のスーツで登場したプラットナー氏

 彼によると,同社は5年前からJavaに取り組んでおり,J2EE(Java 2 Enterprise Edition)の初期段階から,同社がエンタープライズ分野で何をしようとしているのか,サンは耳を傾けてきたという。

 2000年には「J2EE Web Application Server」の開発に着手し,SAP Eeterprise Portalソリューション,SAPマーケッツの製品群,およびSAP CRMアプリケーションなど,mySAPソリューションを支えるテクノロジーにJavaを採用している。

 J2EE Web Application Serverは,単にSAPのABAPアプリとJ2EEアプリの統合を狙った製品ではない。さまざまなJ2EEサーバ向けに開発されたアプリも統合し,さらにそれらをコンポーネントとして再利用し,その上に新しいアプリケーションを構築できるようにする意欲的な製品だ。

「ジェットエンジンは専業メーカーから航空機メーカーに供給されている。ソフトウェア産業もここまで大きくなった以上,もはや1社では対応できない。ほかの多くの産業では既に確立されているが,われわれは標準化の緒についたばかりだ」(プラットナー氏)

 J2EEアプリ同士の連携にはWebサービス標準を利用する。この連携は,SOAPやWSDLといったWebサービスの各種プロトコロルをサポートする「SAP Exchange Infrastructure Server」を介して行われるが,使う用語レベルでの理解,例えば,「会社とは何を意味するのか」といった統一がなければ,アプリケーション同士が話をするのは難しいとプラットナー氏は指摘する。SAPでは,そうした意味を管理するMaster Data Serverも用意するという。

 また,SAPではポータル機能もJ2EE Web Application Serverをベースに開発している。「SAP Enterprise Portal Server」と呼ばれるもので,「Exchangeインフラと並んで極めて重要だ」(プラットナー氏)という。

 なお,第2四半期にはJ2EE Web Application ServerがJ2EE 1.3に完全準拠するという。

オラクルと違い単一の中央DBはない

 ERPのリーダーであるSAPだが,プラットナー氏はERPが期待通りのエキサイティングな効果を生まなかったことを率直に認めた。

「ハイボリュームで繰り返される作業という会社の問題の一部しか解決できなかった」とプラットナー氏。

 SAPでは,JavaをベースとするExchangeインフラやポータル技術を活用し,エンタープライズの全域をカバーするアプリケーションを提唱している。

SAPでは標準化されたソフトウェアとその連携を重視している

 プラットナー氏は,「PLM」(Product Lifcycle Management),「SCM」「財務」「人事」,そして「CRM」という標準化されたアプリケーションを「5本の指」と呼び,Exchangeインフラによってそれぞれが互いに情報をやり取りしたり,ポータル技術を介してさまざまなリソースを1つのディスプレイにまとめあげるという考え方だ。

「(オラクルのE-Business Suiteと違い)単一のセントラルデータベースはない。標準化されたソフトウェアと,Java/XMLをベースとするExchangeインフラやポータル技術を組み合わせ,そのうえに新しいアプリケーションを書くことで,もはやソフトウェアを開発するのに何千万ドルも必要なくなる」とプラットナー氏。

 マイクロソフトのパートナーでもあることから,3月中旬,プラットナー氏はスティーブ・バルマーCEOに会い,SAPの構想に同社も参加するよう促したというが,色よい返事はもらえていない。

[浅井英二 ,ITmedia]