Sun Product Forum 2002 Keynote:システム全体を1台の巨大なコンピュータとして仮想化するサンの「N1」

【国内記事】2002.4.25

 サン・マイクロシステムズは4月25日,都内のホテルで「Sun Product Forum 2002」を開催した。オープニングに登場した菅原敏明社長は,先ごろ20周年を祝った同社の足跡を振り返りながら,「やはり,The Network is“still”the computer(依然としてネットワークこそコンピュータ)だ」と話した。

「The Network is the computer」はもちろん,サンが創業時から掲げるフィロソフィーだが,同社は最近会社のロゴに「We make the net work.」(われわれはネットを機能させる)と付け加えるようになった。

「ネットワークをスケーラブルに,信頼性高く,常に利用可能に,そして何よりもオープンにしておくことがサンの使命だ」と菅原氏。

 この日のキーノートには,彼に促され,米サンでマーケティング担当副社長を務めるシャヒン・カーン氏が登場した。彼は,先ごろサンが明らかにしたばかりの構想「N1」を中心に,今後企業システムやアプリケーションが進むべき方向とサンの取り組みについて話をした。

 カーン氏は,半世紀のコンピュータの歴史の中で,向こう3年から5年,業界は抜本的な変化を経験するだろうと話す。しばしば,同社が用いるスライドに「インターネットの波」というのがある。コンピュータによるインターネットは,コンピュータが組み込まれたデバイスのそれへと拡大し,さらには地球上のすべてのものがつながる世界が予想されている。

「ソニーはすべての製品にIPアドレスをつけて出荷する計画があると聞いた。電球1本や衣服にさえチップが埋め込まれる時代がやってくる。そうなればコンピューティングのレベルは劇的に変化し,われわれのN1こそがそのキーとなるはずだ」(カーン氏)

 既に分散処理やアプリケーションのモデルも変化を余儀なくされている。クライアント/サーバからWebアプリケーション,そして次なる「Webサービス」へと進化するわけだ。

 カーン氏は,「これまでは1つのシステムがアプリケーションのプラットフォームだったが,ネットワークがプラットフォームになる」と話す。

 システムの観点から見れば,企業のデータセンターは1台の巨大なコンピュータから「Webサーバ/アプリケーションサーバ/バックエンド」といった多階層へと移行が進んでいる。そこでは,水平方向への拡張性が求められるWebサーバや,垂直方向への拡張性を誇るSMPサーバ,仮想化が進むSANストレージを組み合わせ,ネットワーク機器を介してインターネットと接続される。

手本はDialtoneスイッチ

 サンのスコット・マクニーリCEOは常々,これらのシステム要素をすべて1つのボックスに入れて「Webtoneスイッチ」と呼んでいる。信頼性が高く,ユーザーから複雑さも隠されている電話のDialtoneスイッチをお手本にするということだ。

 そもそもシステムはコンポーネントの集まりだが,そのシステムが集まりを1台の巨大なコンピュータとして抽象化のレベルを引き上げるのが「Webtoneスイッチ」の考え方。そしてアプリケーション開発者から見れば,Webサービスを開発し,配布するアーキテクチャが「Sun ONE」であり,運用・管理者から見れば,1台のコンピュータとして運用・管理できる「N1」が,Webtoneスイッチの世界を実現してくれるキーとなる。

 カーン氏は,「新しいコンピュータのアーキテクチャはネットワークだ」と話す。現在,メモリの故障を心配する必要がないが,将来はシステムレベルの故障を心配する必要もなくなる。

「N1のゴールは,プロビジョニングや管理を自動化すること」とカーン氏。

 サンでは,ユーザーをN1時代に引き上げるべく,グリッドエンジンや各種クラスタ製品,SAN管理製品,あるいはJxtaといったピアツーピアの技術を提供していくという。

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[浅井英二 ,ITmedia]