エンタープライズ:トピックス 2002年5月20日更新

BorCon 2002 Keynote:「Java vs. .Net? 最良のツールを提供するのがわれわれの使命」とボーランドCEO

 5月19日,カリフォルニア州アナハイムでボーランドソフトウェアの「BorCon 2002」が本格的に開幕した。同社の年次デベロッパーズカンファレンスは今年で13回を数える。ボーランドのツールを愛する約2000人のデベロッパーが集まったアナハイムコンベンションセンターは,「JBuilder 7」をはじめとする新しいツールの発表やデモに沸いた。JBuilder 7の正式発表は,米国時間20日に予定されている。

 1983年,フィリップ・カーン氏によって設立されたボーランドは,来年設立20周年を迎える。1995年,デスクトップアプリケーションへの拡大策が裏目となってカーン氏はボーランドを去り,社名も一時「インプライズ」に変わった。しかし,同社は一貫して「クラフトマンシップ」を掲げ,デベロッパーコミュニティーからも根強い支持を獲得してきた。JBuilderのシェアは実に40パーセントを超えている。

 ただ,オープニングの基調講演に登場したデール・フラー社長兼CEOは,「われわれは,デベロッパーらが必要とするベストの製品と技術を提供していく」とし,彼らが特定のプラットフォームや技術に縛られないツールを提供していくことを確認した。

かつてはアップルでノートブック部門を率いていたフラーCEO

 BorConのホスト役を務めるデベロッパーリレーション担当のデビッド・インターシモン副社長も,ボーランドをスイスにたとえ,同社のツール群が主要なすべてのプラットフォームやアプリケーションサーバをサポートし,またJavaやWebサービスの最新技術をサポートしているとし,「Java vs. .Net」の構図を一蹴している。

 ステージでは,JBuilder 7で追加された新機能のハイライトが紹介されたほか,開発中の「Delphi 7 for .Net」もプレビューされた。

JBuilderのデモに喝采

 JBuilder 7のデモを行ったのは,3月のJavaOneカンファレンスでも基調講演に登場したJavaビジネスユニットのアーキテクト,ブレーク・ストーン氏だ。いつもの軽快なテンポで,新しいJBuilderに搭載された「リファクタリング」の機能や,アプリケーションを最適化するツールの「Optimizeit」を披露し,会場を埋めたデベロッパーらの喝采を浴びた。

 リファクタリングとは,既存のコードを再利用しやすくする作業のこと。例えば,長いメソッドから1つのメソッドを切り出して,粒度を小さくすることなどが考えられるが,クラスの依存関係などが理解できていないと難しい。

 JBuilder 7には,そうした開発者の抱えている問題を解決する支援機能が幾つか追加される。UML(Universal Modeling Language)によるコードのビュー機能もそのひとつ。単にUMLをデザインのために使うだけではなく,既存のソースコードがどう依存し合っているのかをビジュアルに見せるためにも利用する。

 巷では「Java vs. .Net」という構図で対峙するマイクロソフトの.Netへの対応も着々と進めている。ステージでは開発中のDelphi 7 for .Netがプレビューされ,注目を集めた。

 デモで使われたのは,単に文字列を追加していくだけの簡単なプログラムだったが,コンパイルしたコードを.NetをサポートするWindows XP,Pocket PC,そしてTablet PC上で次々と動作させてみせた。

Tablet PCのプロトタイプ上ではアプリはペン対応に

 このほか,ワイヤレスやWebサービスについても,Javaを搭載したNokia 9200スマートフォン向けの対戦ゲームをデモし,その取り組みをアピールした。JBuilderのアドオンである「Web Service for Java」によって,クラスをWebサービスとして公開し,Nokia 9200のJ2MEアプリケーションからアクセスするというもの。Webサービスを利用することで,開発者は,たとえばソケットインタフェースの複雑なプログラミングから解放されるという。

 BorCon 2002は,22日までデベロッパーらによる活発なディスカッションが行われる。

「エア・バズーカ砲」でTシャツを飛ばすフラーCEO

[浅井英二 ,ITmedia]