エンタープライズ:トピックス 2002年6月04日更新

NASAが火星探査プロジェクトにIBMのBlueBoard技術を応用へ

 米国航空宇宙局(NASA)とIBMは米国時間の6月3日、2003年に計画されている火星探査ローバー(MER:Mars Exploration Rovers)のプロジェクトにおいて、NASAの科学者の「テレロボティックデータ解析」支援を目的に協業することを明らかにした。NASは、IBMのプロジェクト「BlueBoard」と呼ばれるデザインをベースに、ネットワーク上で情報共有を効果的に行う「MERBoard」の開発に着手する。

 IBMアルマデン研究所(カリフォルニア州サンノゼ)のプロジェクトBlueBoardでは、通常のホワイトボードのような大型プラズマディスプレイとタッチスクリーンを組み合わせたデバイスを使い、チームのメンバーが情報共有を効果的に行えるシステムの研究を行っている。

 5月中旬、アルマデン研究所で一部の日本人プレスを対象にBlueBoardのデモが公開されている。その際のデモでは、タッチスクリーン付きの大型のプラズマディスプレイを介して、少人数のチームが電子ペンを使いながら、それぞれが持ち寄った文書や表計算シートを表示させたり、交換したり、注釈を書き加えたりしながら、効果的に情報を共有できる「ネットワーク型共有ホワイトボード機能」が紹介された。

 ミーティングにノートブックPCを持ち寄っても情報の共有がうまく図れなかった経験はだれにもあるだろう。BlueBoardであれば、単にプレゼンテーションを行うだけでなく、それぞれの作成した資料をその場で加工し、交換し合うことができる。ハードウェアやソフトウェアは、既に市場にあるものを組み合わせており、デモでは、Windowsを搭載したPCが使われていた。むしろ、そのユーザーインタフェースが主な研究の対象となっている。

「BlueBoardは、2〜3人がさっと自発的に集まり、共同作業を進めていくような場面にフィットする」と、その用途を話すのはアルマデン研究所の「USER」(User Sciences and Experience Research)グループで同プロジェクトを担当するアリソン・スー氏。

 スー氏は、コラボレーションだけでなく、ホテルのロビーやホワイエなどに置き、自分のポータルページやカレンダーにアクセスする「KIOSK端末」としての用途も考えられるとした。

 ちなみに、IBMのノートブックPC、ThinkPadに全面採用されているポインティングデバイスの「Track Point」も、このUSERの研究から生まれたという。

 NASAが開発に着手するMERBoardは、ミッションに携わる科学者やエンジニアが、異なる場所に分散していることを想定している。それぞれが利用しているPCやワークステーションに大型のタッチスクリーン付きプラズマディスプレイを接続し、情報を表示したり、略図や注釈を付け、それらのデータは異なる場所にある複数のディスプレイで共有できる機能も備える。

 NASAでは、このボードにより、科学者とエンジニアは、チームの科学的仮説の実地検証や、関連する火星探査ローバー活動や観測に対するチームの要望への対処を迅速化することが期待できるとしている。

 NASAエームス研究所の科学者、ジェイ・トリンブル氏は、「IBMのBlueBoardプロジェクトの設計基盤は、われわれの要件に一致した。火星探査ローバーのミッションにおいては、科学者とエンジニアに既に課されている膨大なトレーニングと専門的な作業を考えると、わずか10分のトレーニングで簡単に使えるようになるインタラクティブなコラボレーションツールが必要だった」と話している。

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[浅井英二 ,ITmedia]