エンタープライズ:トピックス 2002年6月12日更新

Sun ONEとN1への歩みをSolaris 9で

 サン・マイクロシステムズ(サン)は6月12日、同社OSの新バージョン「Solaris 9」を発表した。2000年1月にリリースされたSolaris 8以来、久方ぶりのメジャーバージョンアップであり、300以上の新機能が盛り込まれている。

 中でも最大のポイントは,J2EE(Java 2 Enterprise Edition)準拠のWebアプリケーションサーバとLDAP対応のディレクトリサーバをOSにバンドルし、統合した形で提供することだ。ここからも、Solarisを、同社が推進するWebサービス構想「Sun ONE」(Sun Open Net Environment)の基盤として位置付ける同社の戦略は明らかだ。

 Solaris 9では、以前のバージョンから最適化してWebサーバ「Apache」に加え、従来はiPlanetブランドの元で「iPlanet Application Server」の名称で提供されてきた製品を、「Sun ONE Apllication Server 7, Platform Edition」としてバンドル。さらに「iPlanet Directry Server 5.1」もSolarisに統合する。ただしアプリケーションサーバの統合は2002年第2四半期以降となる見込みだ。

 Solaris 9の発表に合わせて来日した、米サン・マイクロシステムズのSolarisソフトウェアマーケティング担当アンディ・イングラム氏は、「SolarisはBEA WebLogicの最大のプラットフォームであり、同時にIBM WebSphereの最大のプラットフォームでもある。JavaやJ2EEに基づいたアプリケーションは何であれ、Solarisに最適化することができる」と述べている。

N1実現に向けた仮想化機能

 その一方で、OSとしての性能や使い勝手も向上している。まずパフォーマンスの面では、Solaris 8に比べてメモリ管理の手法を最適化し、J2SEやJavaVMの性能や、各種ベンチマークの数値は軒並み向上した。サーバOSとしての基本的な機能であるファイルシステムやボリュームマネージャにも改善が加えられている。

 同時に、リソースの効率的な利用を実現する「Solaris 9 Resource Manager」が搭載された。Solaris 9 Resource Managerは、CPUやメモリといった各種リソースを仮想化し、稼働中の複数のアプリケーションに最適な形で割り当てるものだ。サービスレベルの実現を手助けするとともに、障害などによるサービスへの影響を最小限に抑える効果ももたらす。

 同社によると、これはリソースの最適化を実現する「Solarisソフトウェアコンテナ」の一部であり、今後も拡張していく計画という。

 サンでは会社創立時より「The Network is the computer」を掲げてきたが、その次のネットワークコンピューティングのあり方として掲げているのが、Sun ONEと、今年に入って明らかにされた新しい構想「N1」である。大量のサーバやストレージなど、複数のシステムを仮想化し、単一の巨大なコンピュータとして扱うというものだが、Solaris 9で加わったこの機能も、N1を支える1コンポーネントと考えることができるだろう。

 イングラム氏はこうした戦略を踏まえてか、「サーバ単体の管理ではなく、それを拡張し、複数の分散したシステムが協調して動くネットワーク全体の管理を実現することが、次の課題だ」と述べている。

TCOの削減とセキュリティの強化

 他にも、サーバの運用管理を効率的に行い、TCOの削減を手助けするツール群が追加されている。イングラム氏は「一連のプロビジョニングツールによって、管理タスクの効率を劇的に向上させ、また手作業によるミスやロスを防ぐことができる」と語っている。

 その1つが「Solaris Flash」で、各デスクトップやワークステーションにおけるインストールや再構成作業を効率的に行うためのツールだ。検証を済ませたソフトウェアスタック全体のスナップショットを作成し、それをコピーするだけで、システムを立ち上げることができる。また、再起動はおろか、アプリケーションを停止させることなくOSのアップグレードを行える「Live Upgrade」機能も搭載された。

 さらに、ファイアウォール「SunScreen 3.2」の統合やKerberos v5、Secure Shellの搭載、バッファオーバーフローを生じさせる可能性を未然に防ぐためのチェック機能などが加わり、セキュリティ面でも強化が図られた。パッチの確認と適用を助ける「Solaris Patch Manager」や、Solarisベースのベストプラクティス共有を実現する「RAS Profile」といったサービスも提供される。

 駄目押しで、「Solaris 8や7で稼働しているアプリケーションは、何ら手を加えることなくSolaris 9に移行できる。われわれは互換性を完全に保証し、顧客の投資を保護する」(イングラム氏)

 さらに同氏は、「アプリケーションサーバやディレクトリサーバのバンドル、セキュリティ機能の統合がなされており、追加の投資は必要ない。Solaris 9によって顧客は、アプリケーションの導入をより安価に、ずっと安全で、しかも高い可用性を備えながら実現することができる」と語った。

Solaris 9は同日より出荷が開始されている。バイナリコード形式とライセンス形式の2形態があり、同社のパートナー経由で販売される。価格は、メディアにバイナリコードを収めた「Solaris 9 システム管理者向けメディア 日本版」が3万円などとなる。

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