エンタープライズ:ケーススタディ 2002/07/23 16:05:00 更新


PeopleSoft8へのアップグレード、トラブルには運用で対処した阪急電鉄

日本ピープルソフトは7月23日、阪急電鉄が従来より利用してた同社の人事管理アプリケーション「PeopleSoft 7.5 HR」をピュアインターネットアーキテクチャと呼ばれる完全なWebブラウザベースの「PeopleSoft8 HR」にアップグレードしたことを発表した。

 日本ピープルソフトは7月23日、阪急電鉄が従来より利用してた同社の人事管理アプリケーション「PeopleSoft 7.5 HR」をピュアインターネットアーキテクチャと呼ばれる完全なWebブラウザベースの「PeopleSoft8 HR」にアップグレードしたことを発表した。

 大阪に本拠を置く阪急電鉄は、梅田を基点として神戸三宮までを結ぶ神戸線をはじめ、京都河原町までを結ぶ京都線、および宝塚までを結ぶ宝塚線の3つの路線を持ち、阪急東宝グループの中心を担う企業。

 同社では、1998年9月に日本ピープルソフトの人事アプリケーションPeopleSoft 7.5 HRの採用を決定。導入は、オージス総研のサポートを受けて進め、わずか半年後の1999年4月に稼動させた。この新システムにより、それまでメインフレームで管理してきた人事情報を、戦略的に有効活用できるデータ中心システムとして管理できるようになったという。

 同システムは、すべての人事担当者向けに、従業員データを有効活用するための検索ツールを提供するなど、エンドユーザー向けに優れた機能を提供し、同社の人事業務改善に繋げた。また、同社では、人事制度変更に柔軟に対応するための意思決定権者向けの仕組みも手に入れたという。

 例えば、人事担当者が膨大な紙の資料と格闘していた春闘前の多忙時にも、PeopleSoftが蓄積したデータを使って迅速に資料を提供できるようになっている。

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左から、神吉氏、横尾氏、萩尾氏、和田氏

 同社の統括本部人事統括室で労務担当調査役を務める萩尾晃氏は、「PeopleSoftが稼動するまでは、時間に追われながら、膨大な紙の資料に定規を当てて、組合に対する説明用の資料を作っていたが、稼動後、欲しいデータを瞬時に引き出し、Excelのピボットテーブルを使って加工するようになった」と話す。

「最新のデータを使って、短時間で試算できるメリットは大きく、ROIの観点からも、優れたシステムと考えている」(萩尾氏)

 2002年、阪急電鉄は次のフェーズとして、このシステムをPeopleSoft8 HRにアップグレードした。7.5 HRの導入プロジェクトを統括した同社の人事統括室で人事担当調査役を務める和田等氏は、「端末に縛られずに業務を行えるようになったことと、今後PCの買い替え時にインストールする手間がかからなくなることが大きなメリット」と話す。

 人事統括室では、説明会を開いたり、稼動後にエンドユーザー向けの個別サポートを提供するなど、PeopleSoft8の定着を推進した。その努力もあってか、前バージョンの操作性に慣れていたユーザーも、「当初はとまどいもあったが、3カ月ほどで慣れてきた」(和田氏)という。

 運用面における進歩も見られた。同社の人事統括室で人事を担当する横尾大輔氏は、「欲しい画面にすぐ行けるように、よく使う画面を“お気に入り”に登録するなど、実際に使っているユーザーが良いアイデアを生み出したケースもある」と話す。

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「お気に入り」登録で楽にジャンプ

 また、サーバ側ですべてのモジュールを走らせるPeopleSoft8の売り物のひとつであるネットワーク負荷の削減も見られた。同社人事統括室の人事担当、神吉修氏は、「アップグレードしてから、ネットワークトラフィックが約10分の1に減ったという報告を受けている」と話している。

 一方で、アップグレード直後には障害がつきものだ。阪急電鉄でも、以前に利用できていた検索機能やWebブラウザのバージョンによる不具合などの障害が発生してしまった。

 しかし同社は、あらゆる障害に運用面から対処し、それを乗り切ろうとしている。例えば、和田氏は、「優れたクエリー機能が不具合を起こしたことで、アップグレード検討時には致命傷に近い障害だと認識していた。しかし、人事統括室のWindowsクライアントを使うことで、全社のクエリー要件を一手に引き受けるなど、柔軟に対処した」と話している。

 日本ピープルソフトによると、これらの不具合には、マイナーアップグレードにより、すべて対応できているという。阪急電鉄では、オージス総研のサポートを受け、開発ツール「People Tools」を使って自前で勤怠モジュールを開発。勤怠と人事を共通プラットフォームで稼動させた。

 今後、阪急電鉄では、グループ展開を睨み、グループ内における人事情報の有効活用を実現するツールとして、PeopleSoft8 HRとGP(給与モジュール)、およびPeople Toolsを使って開発した勤怠モジュールを利用する計画という。

 和田氏は、「従業員個人に紐付く異動や出向などのデータの履歴管理が可能になれば、メリットは大きい」と話している。

関連リンク
▼日本ピープルソフト
▼阪急電鉄

[ITmedia]