エンタープライズ:ニュース | 2002/08/01 22:56:00 更新 |
システム拡張のカギを握るクラスタ技術(前編)
インターネットの拡大により、企業にとってシステム拡張はタイミングも方法も難しくなってきた。今後増え続けるデータに対して、Webサーバだけでなく、自社の基幹システムも拡張しなくてはならない企業は多い。
インターネットの拡大により、企業にとってシステム拡張の問題は、以前より読みづらいものになった。止まらないミッションクリティカルなシステムを構築し、容易に管理し、適宜拡張していくことがエンタープライズの命題になっている。インターネットの3階層モデルにおいて、Webサーバなどの「フロントエンド」は、処理するサーバの数を順次増やせば、基本的にはその分だけパフォーマンスが上がるため、比較的拡張しやすいと言われる。この拡張方法は、「スケールアウト」と呼ばれている。
しかしながら、アプリケーションサーバなどの「ミッドティア」、データベースやERPなどの「バックエンド」など、企業システムの奥に行けば行くほど、サーバの数を増やすのではなく、単一サーバ上でプロセッサの追加により処理能力向上を図る「スケールアップ」方式の拡張方法が求められる。例えばデータベース(DB)では、データの均一性を保つ必要があるため、データを複数のサーバに分散させないでシステムを拡張できるスケールアップの方が向いている。
しかし、スケールアップをしようとした場合、最悪のケースでは、サーバ自体を丸ごと入れ替えなくてなはらないこともある。これでは、柔軟な拡張や低コストのサーバ運用は難しい。システムのダウンタイムも発生してしまう。
一方で、スケールアウト方式は、まず小規模のシステムを構築し、必要に応じてサーバを増やしていけることがメリット。スケールアップ方式のように、初めに最大プロセッサ数を格納できる大規模サーバを買ったりしなくていい。そのため、初期投資が少なくて済み、柔軟性も高い。
このスケールアウトによる拡張を実現するための技術が、「クラスタ」だ。DBなどのバックエンドのアプリケーションも、クラスタ技術によってスケールアウトによる拡張が可能になる。クラスタとは、複数のハードウェアを仮想的な1台のシステムとして統合させること。例えば、顧客データが増えすぎてDBの処理が遅くなってしまった場合に、クラスタソフトを搭載した新サーバを追加すれば、性能を向上させることができる。
クラスタ技術については、高機能なソフトウェアの開発を目指して、ヒューレット・パッカード(HP)と合併するコンパックコンピュータが「Open VMS Cluster」などをリリースしてきた。
Oracle DBは、IBMのDB2やマイクロソフトのSQL Serverなどと、拡張性、可用性、管理性、動的負荷分散などの性能の観点でライバル関係にある。
その中で現在、オラクルがリリースした「Oracle 9i Real Application Clusters」(Oracle 9i RAC)が注目を浴びている。 先日の7月30日には、日本オラクルと日本ヒューレット・パッカード(HP)が「Real Appkication Clusters Summit」と題したセミナーを開催した。
セミナーの主旨としては、コンパックと合併するHPと、データベースからアプリケーション分野へ進出するオラクルが協力して、オープン系システムにおいて、サーバやストレージまでも統合した高性能なクラスタ技術を提供し、止まらないシステムを構築しようというもの。オラクルの言い方をすれば「Unbreakable」なシステムだ。また、インテルの64ビットプロセッサ、Itaniumも取り込んでいく。
また、今後はコンパックのRISCチップであるAlphaがItaniumに置き換えられていくことが決まっており、インテルアーキテクチャ(IA)による低コストのシステム構築という顧客の要望も考慮している。
後編では、これまで「共有ディスク方式」「シェアードナッシング方式」の2つに分かれていたクラスタのそれぞれの特徴と、共有ディスク方式の問題点を解決したというOracle 9i RACについて紹介する。その中で注目できるのは、Oracle 9i RACの「キャッシュ・フュージョン」と呼ばれる技術だ。
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[怒賀新也,ITmedia]