エンタープライズ:ニュース 2002/09/10 19:37:00 更新


半導体技術を通して新世代への進化をドライブするインテル

9月9日、カリフォルニア州サンノゼのコンベンションセンターで「Intel Developer Forum」(IDF)が開幕した。基調講演にはインテルの社長兼COOを務めるポール・オッテリーニ氏が登場し、第3世代のコンピューティングスタイルについて話をした。オッテリーニ氏が話す「コンピューティングと通信の融合」とは?

 インテルの社長兼COOのポール・オッテリーニ氏によると、第1世代のメインフレーム、第2世代のパーソナルに続く第3世代のコンピューティングスタイルは、さまざまなスタイルのコンピュータ、使い方を収れんさせたものになるという。

 その究極のゴールとは、いつでも、どこでも、だれでもコンピュータを活用できる環境をもたらすことにある。メインフレームの中央集中型でも、パソコンを中心にしたダウンサイジングでもない。その時、その場で適したデバイスやアプリケーションを用いて、同じクオリティの情報にアクセスし、同じことができればいい。

 そこでオッテリーニ氏が開発者向け会議のIntel Developer Forum Conference, Fall 2002(IDF)基調講演で取り上げたのが、コンピューティングと通信の融合である。かつて電子素子を1つひとつ組み上げていたシステムを半導体集積技術で統合することにより、マイクロプロセッサという新しい分野の製品が生まれた。これに倣い、半導体技術を用いてさまざまなシステムの統合を進めていく。その中で、最も力を入れているのがコンピューティングと通信の統合というわけだ。

 オッテリーニ氏は「われわれが行おうとしていることは非常にシンプルだ。すべてのコンピュータデバイスは計算を行いながら、同時に通信を行っている。そしてすべての通信デバイスは通信を行いながら、同時に計算を行っている。コンピューティングと通信のコンバージェンス(収れん)こそが、われわれのテーマだ」と話した。

 セキュリティや通信など、さまざまな機能をPCへと統合していく方針は、半導体の集積度が常に向上し続けている中では重要な戦略である。しかし、この基調講演でこのようなストーリーを展開させたのは、「Banias」プラットフォームへの無線LAN技術の統合へと話をつなげたかったからなのかもしれない。

 このIDFではBaniasのさらなる詳細が明らかになることになっているが、オッテリーニ氏の基調講演の中では、ワイヤレスネットワークを最も簡単に使え、ワイヤレス環境(もちろんACコンセントを含む)で長時間バッテリー駆動が可能なプラットフォームとしてBaniasを紹介するにとどめた。インテルはBaniasベースのシステムに802.11a/bデュアルバンドの無線LAN機能を統合しようとしている。

 さらにインテルは、無線LAN使用時の利用環境改善にも取り組んでいる。今までのコンピュータネットワークは、常にどこに接続しているのかを意識しなければならなかった。しかし、インテルはモバイルIP技術やシームレスな認証技術を組み合わせて、どんな環境下でも簡単にネットワークを利用できる技術やセキュリティ機能の強化に取り組んでいる。

「LaGrande」技術も、そうした取り組みの一環と捉えることができるだろう。この取り組みは、PCシステムのアーキテクチャレベルでデータのスヌープ(盗み見)や漏洩を防ぐ技術である。

 LaGrande技術では、メモリアクセスやディスクアクセス、ネットワークアクセスなど、あらゆるデータ経路を保護し、ハードウェアを用いた認証の仕組みを提供してくれる。常にネットワークに接続された(そこは保護された社内のネットワークとは限らない)環境において最新の攻撃手段に対抗するため、徹底したセキュリティ重視のアーキテクチャが採用される。

 詳細に関しては基調講演では語られなかったが、マイクロソフトやアプリケーションベンダーとも協力し、業界全体としてプロジェクトを進め、2〜3年後には市場に持ち込みたいとした。

「半導体技術は新しいコンピューティング世代への移行を加速させるためのエンジン(オッテリーニ氏)」と語るインテルの戦略は、ここ数年、IT不況に突入してから一貫している。派手なマーケティング手法から卒業し、本業である半導体製造にフォーカスした戦略である。インテルがこの姿勢を崩さずPC業界に新しい製品やコンセプトを投入し続ける限り、業界は前に進むことができるだろう。

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関連リンク
▼Intel Developer Forum Conference, Fall 2002
▼インテル

[本田雅一,ITmedia]