エンタープライズ:コラム 2002/09/11 15:17:00 更新


Gartner Column:第62回 メインフレームのすごさについて技術的に解説しよう[3]

メインレームは過去の遺物? とんでもない話である。メインフレームには、コスト高さ、および対応するソフトウェアの少なさという課題があるのは確かだ。しかし、メインフレームは、現在でも十分に魅力的な選択肢となる幾つもの優位性を持っている。

 今回は幾つかのメインフレームの優位性について述べると共に、その課題についても見てみたい。

 メインフレームの特徴的な機能としてLPAR(論理区画)機能がある。これは、1台のメインフレームをマイクロコード(いわば、ユーザーから直接には見えないシステム・プログラムと考えればよい)により論理的に複数のマシンに分割し、独立した環境として稼動させる機能である。

 現在では、ハイエンドのUNIXサーバやIntelサーバでも、区画分割機能(パーティション)がサポートされるようになったが、メインフレームのLPARは柔軟性の点で有利である。ひとつのCPUを複数の区画で共用したり、稼動中に資源の利用状況に応じて自動的かつ動的に(システムを停めずに)区画の構成を変更することができる。UNIXサーバの区画分割機能も急速に進化しているがまだ機能的な格差は存在する。

 ストレージ関連の機能においても、メインフレームは、シェアード・ファイル・システム、バーチャリゼーション(仮想化)、ポリシーベースの資源管理などUNIX/WindowsのSANの世界で最先端の機能をはるか昔から実現してきている。

 前回および前々回にも述べてきた以外にもメインフレームにはさまざまなテクノロジー上の優位性が存在する。これは、メインフレームの現実世界のスケーラビリティ、可用性、セキュリティの優秀性として表れている。科学技術計算環境のように、単独のアプリケーションを可能な限り高速で稼動するという環境ではUNIXサーバが有利かもしれないが、多様なタイプのワークロードが混在する現実環境で、最高レベルの性能と可用性を実現しようと思えばメインフレームが依然として最も確実なソリューションなのである。

「メインフレームは基幹系システムに最適のシステムである」というのは、単にIBMの営業のセールストークではないと言ってよいだろう。

 では、いかなる場合にも、メインフレームが最適の選択肢になるのかというと、もちろんそのようなことはない。メインフレームにも多くの課題がある。

 コストについて言えば、メインフレームは有利とは言えない。かつて、メインフレームとUNIXサーバでは、科学技術計算で2桁、商用計算で1桁の価格性能比の差があると言われていた。しかし、1994年に基本半導体テクノロジーを高速だが高価なECLから一般的なマイクロプロセッサと同等のCMOSに変更したことで、メインフレームの価格性能比は大幅に向上した。今ではハイエンド環境におけるメインフレームのソフトとハードの初期コストは、同等のUNIX/Windowsサーバと比較して2〜4倍程度高いというのがおおよそのところだろう(UNIXやWindowsもハイエンド環境で構成を組むと結構なお値段になってしまうことが多いのだ)。

 メインフレームの最大の課題はソフトウェアである。IBMは、SAP R/3、Dominoサーバ、WebSphere WAS等々新しいタイプのアプリケーションを精力的にメインフレーム環境に移植している(ないし、サードパーティーによる移植を奨励している)。しかし、それでも、ソフトウェアの品ぞろえという観点では、主流UNIXやWindowsとメインフレームの格差は大きい。

 これは、稼動しているメインフレームの台数が、UNIX/Windowsサーバと比較してはるかに少ない以上、いたしかたない話である。ソフトウェアビジネスの基本は、高額な開発コストを多数のライセンス販売により分散することにある。開発コストを比較的少数のユーザーで分配しなければならないメインフレームの世界では、どうしてもソフトウェアの価格が高くなり、また、ソフトウェアベンダーの開発意欲もUNIX/Windowsの二の次にならざるを得ない。

 アプリケーションの自社開発からパッケージアプリケーションの購入へのシフトが進む中、ソフトウェア面、特にIBM以外の独立系ソフトウェアベンダーのサポート上の課題は深刻だ。ユーザーは、ハードを選んでから、その上で稼働するソフトを選ぶのではなく、業務に必要なソフトを選び、それを稼働してくれるハードを選ぶことになるからだ。

 また、メインフレームのスキルの普及も課題である。若いエンジニアのほとんどは、Windows/UNIX/Linuxのスキルをまず身に付けるようになっている。結果として、今後、メインフレームのスキルの入手が困難(つまり、高価)になるリスクがある。

 結論としては、メインフレームは万能のソリューションではないが、カスタムメイドのアプリケーションを中心的に使用し、かつ既に社内にメインフレームのスキルが蓄積されている場合、多少コストが高くとも最大レベルのスケーラビリティと可用性を実現したければ、十分に魅力的な選択肢と言えるだろう。例えば、大手金融機関のオンラインシステムなどがその典型だ。

「メインレームは過去の遺物」とよく言われることがあるが、全くとんでもない話なのである。

[栗原 潔,ガートナージャパン]



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