エンタープライズ:ニュース 2002/09/12 21:32:00 更新


インテル、「Calexico」で802.11a/bチップ推進

インテルが来年、初の自社製802.11a/802.11bチップをリリースする。同社はチップセット市場に参入したときのように、これら無線LANチップを自社製コンポーネントとセットで販売する計画だ。

 インテルは、ワイヤレス市場向けの初のチップのリリース準備を進めている。また同社は自らの強みを活かして、PC市場で他社に先んじようとしている。

 同社は「Calexico」というコードネームのPCカードモデムを準備中だ。これには、同社が初めて手がける802.11bおよび802.11aチップが搭載される。このモデムは、来年初頭にノートPCに搭載された形で登場する見込みだ。これを搭載したデスクトップ/ノートPCは、各国の家庭やオフィスに設置されている1500万−1800万の802.11b(Wi-Fi)ネットワーク、および(802.11bよりも)新しい802.11a規格を使ったワイヤレスネットワークにアクセスできる。

 売上促進のために、インテルはモデムモジュールを自社のプロセッサやチップセットとセットにして、「参照設計」付きパッケージとしてPCメーカーに販売する計画だ。これは、同社がチップセットやその他のコンポーネントを市場投入するときに使っている手法。

 例えば、同社はこのモジュールを、来年前半に登場予定の新モバイルチップ「Banias」とセットにするつもりだと、同社のモバイル製品部門副社長、アナンド・チャンドラセーカー氏は話す。

 インテルは、CalexicoをBaniasとのみ組み合わせて広範なテストを行い、動作を保証している。ノートPCメーカーは、他社の802.11チップを採用することもできるが、その場合は時間と費用をかけて、モデムとBaniasの動作テストを行わなければならない。

「当社はこれらコンポーネントがすべて連動するよう設計している。来年には、ノートPCの50%以上に無線LAN機能が装備される。Banias搭載ノートPCでは、その80%以上にデュアルバンド無線LAN機能が装備されるだろう」(チャンドラセーカー氏)。

 インテルはまた、Calexicoをデスクトップ向けのプロセッサ/チップセットとセット販売したり、TVなどの家電をWebに接続する「デジタルハブ」向けにも提供する意向。

 インテルは、これまで多大な成功を収めてきた法則を、ワイヤレス戦略にも適用している。同社はチップを単体で販売するのではなく、連動するコンポーネントをセットにした完全なパッケージを販売できる。かつて同社はチップセットの製造に積極的ではなかったが、自社のチップとチップセットをセットで販売することで、短期間で世界最大級のチップセットメーカーの座を獲得した。同社はマザーボードでも、同じ戦略を使った。

 PCメーカーにとっては、コスト削減がコンポーネントパッケージを購入する理由になる。またこれらメーカーは、インテルの参照設計を採用することで自分の設計作業を減らすことができる。部品を(パッケージでなく)バラバラに購入した場合は動作保証が必要になるが、この作業は時間と労力がかかる場合がある上に、差別化や業績の点ではほとんどメリットがない。それにインテルのコンポーネントを多く仕入れれば、ボリュームディスカウントが受けられる。

「インテルはコンポーネントのパッケージを、バラ売りするよりも安く販売できる。このため、PCメーカーには金銭的なメリットがある」と、マーキュリーリサーチの主席アナリスト、ディーン・マキャロン氏。

 802.11製品の提供は、インテルの通信部門にとってカンフル剤となるかもしれない。1990年代後半の通信ブーム時に設立されたこの部門は、通信市場の低迷により、ここ数四半期赤字が続いている。同社は1999年1月以来、30社を超える企業を買収しているが、そのほとんどがこの部門に吸収されている。

 チャンドラセーカー氏は、インテルの無線チップにより、コンピュータの性能も改善されるだろうと話す。これらのチップは、データの送受信を行っていないときは消費電力を減らすように設計されているので、バッテリー寿命が長くなる。

 Baniasは、インテル初のノートPC専用チップ。同チップを搭載したノートPCは、日常的にワイヤレス接続を利用するユーザーを主なターゲットにした初のデバイスになると、同社のプラットフォーム技術マーケティングマネジャー、ケタン・バート氏は話す。

 Calexicoは、802.11a/802.11bに対応したインテル初のモデムだ、と同氏。同社は以前から、これら規格に対応したアクセスポイントを販売しているが、内部の無線チップは他社のものを使用していた。

 ワイヤレス機器メーカーの間では、802.11a/802.11bの両方に対応するという方針が増えてきている。802.11aは802.11bよりも高速だが、価格が高い。例えば、802.11a対応のアクセスポイントは2000ドル以上することもあるが、802.11bネットワーク導入にかかるコストは総額500ドルに満たない。ほとんどの802.11b対応機器メーカーは、潜在顧客が価格にショックを受けないよう、802.11aと802.11bの両方に対応する機器を提供する計画だ。

 このようなデュアルバンド製品を提供しているメーカーには、Cisco SystemsやProximなどがある。

「難しいのは(802.11aを)市場に投入することだ」と、インテルのモバイルプラットフォーム部門マネジャー、マイク・トラニオー氏は話す。

[Michael Kanellos & Ben Charny,ITmedia]