エンタープライズ:ニュース 2002/09/13 20:51:00 更新


IAサーバはUNIXを追い落とせるか?

Webサービスの台頭などにより拡大するインターネットを含めて、今後のシステム環境をハードウェアの側面から期待されるのがIAサーバだ。ここでは、IAサーバについて、これまでの歩みと今後の展望について整理したい。一言で表現すると、「UNIXをリプレースできるか」が最大のテーマになる。

 つい数年前に普及し始めたインターネットだが、今では企業の基幹システムをも支えるようになりつつある。IBMやサン・マイクロシステムズといった「Java陣営」が推進するWebサービス、マイクロソフトも.Net構想においてこれに加わっている。いずれも、インターネットを基盤にする技術だ。異なるシステム間をつなぐことは非常に苦労を伴うというこれまでのシステム実装の事情からしても、インターネットによる「統一」プラットフォームが画期的なことに疑いはない。

 拡大するインターネットを含めて、今後のシステム環境をハードウェアの側面から支えていくことが期待されるのがIA(インテル・アーキテクチャ)サーバだ。ここでは、IAサーバについて、これまでの歩みと今後の展望について整理したい。

そもそもIAサーバとは?

 IAサーバの特徴は文字通り、インテルアーキテクチャのプロセッサを搭載していること。具体的には2つに分類できる。まず、XeonやPentium IIIなどx86系プロセッサを搭載したサーバ。これらは、IA-32プロセッサファミリーと呼ばれ、1回の処理で32ビットのデータを扱える32ビットCPUだ。もう一方は、64ビットのItaniumファミリーを搭載したサーバとなる。

 いずれも、CPUをはじめ大量生産の利く汎用部品を採用しているため、独自仕様のコンピュータよりもコストが低いことが何より強力な武器となっている。

 IAサーバは、SOHOやチームのファイルサーバなどとして利用するエントリークラスや、エンタープライズでの部門サーバといったミッドレンジの市場では、現状でも圧倒的なシェアを持つ。さらに、インテルや各サーバメーカーが目指す企業の基幹システムをはじめとしたエンタープライズ市場でも、年々採用されるケースが増えている。UNIXマシンでは何年も前から実現されていた64ビットプロセッサだが、ようやくIAでもItaniumシリーズとして投入された。現在の最新版は7月にリリースされたItanium 2だ。Itanium 2は、UNIXシステムが高いシェアを誇るミッションクリティカルシステムへの導入を強く意識した製品となっており、各ベンダーの注目度も高い。

UNIXリプレースはItaniumがカギ

 ここで、基幹システムを支えたサーバ機の歴史を振り返ってみよう。

 まず、70年代に普及したのがメインフレーム。メインフレームは価格が数億円を超える大型コンピュータだ。空調設備を完備した専用ルーム、専門家チーム、諸々を含めた膨大な維持費が必要で、メンテナンスは非常に大変だった。また独自のハードウェア、自社製OS、自社製アプリケーションといった特徴は、メインフレームがメーカーにとって、顧客の囲い込みの手段でもあったことを示している。メインフレームに使われる技術は、現在もUNIX機やIAサーバの手本になっている。

 その後、メインフレームを代替していったのが、RISCプロセッサとUNIXのOSを組み合わせたオープン系のサーバ機だ。RISCプロセッサは、それまでのCISCよりCPUを制御する基本的な命令を減らし、演算処理の能力を向上させたもの。RISCは1975年、米IBMのワトソン研究所、ジョン・コック氏が提唱した。現在では、サン・マイクロシステムズのSPARCや、旧デジタルイクイップメントのAlphaなどの製品がある。

 RISCベースのUNIXシステムでは、1つのベンダーが独自に、ハードウェアからソフトウェアを開発するケースが多い。システムの開発ベンダーが1つであれば、メンテナンスやシステム変更なども一括して行いやすい。コストよりも信頼性が重視される基幹システムで、存在感を示してきた理由はここにある。

 その一方で、RISC・UNIXのシステムでは、独自仕様になるためにほかのベンダーが入り込みづらくなることがある。ユーザー企業は場合によってはベンダーの「言いなり」になり、思わぬコスト負担が発生する可能性もある。

 また、システムを拡張は、「同一サーバ内で」CPUのパワーを増やす「スケールアップ方式」で行われる。このため、データベースで大量のトランザクションを処理するようなケースでも、処理プロセスを切らすことなく行うことができる。RISC・UNIXをベースとするマシンには、ヒューレット・パッカードの「superdome」(最大64Way)、サン・マイクロシステムズの「Sun Fire 15k」(最大106Way)、富士通はなんと最大128Wayという「Primepower 2000」という製品をリリースしており、スケールアップの拡張に十分耐えうる体制が出来ている。

 そして、RISC・UNIXシステムとは逆の特徴を持つのがIAサーバだ。つまり、独自仕様ではなく、汎用的なプロセッサやチップセットを搭載する「サーバの数」を増やしていくことでシステムを拡張を行う「スケールアウト方式」を採用することで、コストを低く抑えることができる。ただし、スケールアウトの場合、重いトランザクションを処理する場合、同一サーバではなく複数サーバが「協力」することになるため、性能の高いクラスタリングソフトウェアが必要となる。この辺りが、IAサーバはデータベースなどのバックエンドアプリケーションを稼働させることが苦手と言われてきた理由となる。

 ただし、IAとともにクラスタリング技術も日々向上しているのも事実だ。また、不況によって多くの企業がコストに敏感にならざるを得ないという時代背景も、IAサーバには追い風となっているのだ。

 そして、期待のかかるItaniumは、RISCをさらに進めたというEPIC(明示的並列計算:Explicity Parallel Instruction Computing)という計算モデルをベースにしている。

 従来のモデルでは、機械語の命令プログラムは並べられた順序にA、B、C、D、Eと実行するしかなかった。これに対し、EPICでは、これらのA、B、C、D、Eといったプログラムを、グループ1はAとB、グループ2はC、グループ3はDとEというように並列実行可能なグループに分類する。ここでは、同じグループ内のプログラムは並列実行できるため、この例で言えば、AとBは同時に実行できることになり、その分処理速度が上がることになる。

増え続けるインターネットへの対応

 インターネットのサーバ環境では、Webサーバなどの「フロントエンド」、アプリケーションサーバなどの「ミッドティア」、データベースサーバをはじめとする「バックエンド」といういわゆる「3階層モデル」が一般的になっている。

 この3階層で言うと、フロントエンドのWebサーバは、ユーザーからのアクセスを受け付けて、ミッドティアやバックエンドに処理要求を行う製品だ。拡張は、サーバの数を必要に応じて増やしていくスケールアウトで行える。

 一方、ミッドティアやバックエンドサーバにおいては、性能向上の方法に、数を増やすのではなく、1台のサーバの性能を引き上げるスケールアップの手法が必要になることが多い。そのため、前述した通り、スケールアウトの拡張が基本であることも、IAサーバが基幹に食い込むための障害になっていたが、技術の日々の向上により、この限りではなくなってきた。

プラットフォームOSは?

 IAサーバがエントリー、ミッドレンジを超えて、データセンターサーバを支えるUNIXの牙城を崩すためには、サーバOSが安定していることが絶対条件となる。

 プラットフォームOSとしては現在、 WindowsとLinuxがメジャープレーヤーとなっている。特に、Windowsは既に、Windows 2000 Datacenter Serverをリリースし、安定性に対する評価も高い。

 今後は64ビットプロセッサであるItaniumファミリーの普及を待つことになり、64ビット対応OSとしてWindows .Net Server 2003がリリースされる予定だ。この「2003」は最近ネーミングに追加することが決まったもので、同OSのリリースが「2003年ずれ込むことを示すもの」といった辛口の意見も聞かれる。同OSの「ファーストリリース」が、企業のハイエンドシステムにどれ程採用されるのかは注目されるところだ。

関連記事
▼エンタープライズの牙城を突き崩すIAサーバ
▼完成度高まるWindows .Net Server

[怒賀新也,ITmedia]