エンタープライズ:コラム 2002/09/27 21:49:00 更新


Opinion:流通チャネルの真ん中で存在感を示すPRM

PRMこそ間接的流通チャンネルを通して活動する企業が存在価値を末端の顧客にまでアピールするための唯一の方策だ。PRMの機能がCRMに統合されるとき、中間業者はようやく相応しい評価を得ることができるだろう。

 これまで長い間、「中間業者」という単語には消極的なイメージがつきまとってきた。インターネットをビジネスに活用することで期待される効果の1つとして、中間業者の排除という考え方が一部にあったのである。

 最近になって、「中間業者離れ」という発想が多くの企業を惹きつけている。それは、インターネットを活用して顧客と直接やり取りしようというもので、そうすることによって中間業者の存在を排除し、経費の節約を図ることができる。もちろんそれが実際に実現されることはこれまでなかった。

 その点に関してアバディーンのアナリストであるケント・アレン氏は、「売り上げや流通チャンネルを活発化させている従来からの中間業者組織は、あまりにも大きな存在価値を持っているために、経済史のなかに彼らを葬り去ることなど不可能だった」と話す。

 結局のところ、大部分の企業が、再販業者や販売業者、流通業者、卸業者、あるいは、企業が顧客に接触する際に利用する外部のサービス提供会社などの中間業者を必要としているのである。

 大抵の場合、広範囲な市場を対象にした製品ラインの開発やマーケティングを取り扱う企業よりも、間接的事業提携会社のほうが、地域市場や特定の顧客に対してより質の高いサービスを提供することが可能である。

 AMRリサーチの調査によれば、およそ7割の企業が、間接的流通チャンネルを通じて収益の大半を稼いでいるという。また、ヤンキーグループの調査によれば、一般消費者向けパッケージ商品や個別生産形態、あるいはハイテク業界などの一部の業界では、間接的流通チャンネルからの売り上げが総収益の6割から7割を占めているという。

 多くの企業が今、間接的流通業者を排除することに力を注ぐよりもむしろ、彼らともっと有効な協力体制を築くことが重要であるということに気が付き始めている。そしてその結果、新たなカテゴリのソフトウェア製品群が生み出された。

 この数年の間に、パートナーリレーションシップマネージメント(PRM)と呼ばれる新しいアプリケーションカテゴリーが登場し、企業と間接的流通業者のより効果的な共同作業を支援するものとして注目を集めている。PRMツールは、アレジスやチャンネルウェーブ、クリックコマース、コマージェント、ハートコマース、インフォナウ、オラクル、シーベルシステムズなど、さまざまなベンダーから提供されている。

 これらのベンダーからは、企業がその提携企業とより効果的に共同作業を進めることができるような、さまざまな優れた機能が提供されている。だが、PRMが独立した1つのソフトウェアカテゴリとして完全に確立されるかどうかは今はまだ微妙である。

 

 PRMツールは、企業とその提携企業が共有するタスクの自動化を支援するものだ。主な機能としては、営業実績管理やオンライントレーニング、認定などがある。さらに、共同マーケティングやコンテンツ管理、注文管理、共同予測、契約交渉、キャンペーン管理、新規の提携企業の契約、あるいは提携企業のプロファイリングなども、PRMの管轄に入る。

 営業実績管理ツールは、優秀な営業担当者の配置と、その営業実績の追跡調査の自動化を支援する。マーケティングの過程で、企業は有望な営業担当者を集め、顧客とより緊密な関係にあって営業を行ううえでより適した設備環境を持つ間接的流通業者のもとに彼らを送り出すのである。企業は、営業担当者の能力を最大限に引き出せるよう、提携企業との組み合わせを慎重に選定する必要がある。

 オンライントレーニングは、その企業が扱っている製品についての商品知識を提携企業に習得してもらい、より優れた営業担当者の育成につなげるためのものである。企業は、特定の提携企業がトレーニングコースの各課程を修了するごとにその進み具合を確認し、認定手続きを自動で行うことが可能となる。

 さらに、企業と提携企業は、企業が訴えたい企業メッセージを市場に広く浸透させるために、提携企業の地域レベルでの取り組みに対して助成金を支払い、互いにマーケティングで協力関係を結ぶ。PRMツールは、共同マーケティングプログラムの管理や、その成果の追跡確認、市場振興基金の払い戻しなどの支援機能も提供する。

 PRMのこれらの機能はさまざまな利点をもたらすものだが、全体としてみると、現状はPRMが目標として掲げる理想像からは遠くかけ離れているようだ。PRMを導入している企業の大半が、個別の作業を処理するために特定のツールを利用するだけで、広範囲にわたる機能統合の実現にはいたっていない。

 PRMベンダーの1つ、チャンネルウェーブのマーケティング担当副社長のドリュー・ウィリアムズは、「われわれの取り組みは、これまでだれも手をつけてこなかった分野に、少しづつ視認性を高めていこうというものだ。間接的流通チャンネルというのはこれまでほとんど目に見える形として存在しなかった分野である。というのも、これまでの提携企業というのは、何も義務を負わないかわりに、しばしば消極的な姿勢が見受られたからだ」と説明する。

 PRMの支持者たちは、最終的にはPRMによって需要連鎖を通じて視認性を高め、それによって素晴らしい利点を提供することができると確信している。だが、それを実現する道はまだまだ険しいようだ。企業と提携企業との関係には依然として多くの議論があり、新技術を導入するうえで必要となる根本的な信頼関係と協力関係の課題が、多くの場合、無視されているのが実情なのである。

「提携企業は、企業が彼らをないがしろにして事を進めてしまうことを恐れて、情報の共有化には消極的である」とヤンキーグループのアナリストであるシェリル・キングストーンは分析する。

 PRM構想で、東芝カナダやシンボルテクノロジーズ、トレーンカンパニーなどいくつかの企業が、初期的な段階での成功を報告しているものの、広範なPRMプログラムの実施の動きが多くの企業に広がるまでは、まだしばらく時間がかかりそうだ。

 フォレスターリサーチのアナリスト、ローリー・オーロブは、「PRMを成功させるためには、訓練や優れたプロジェクト管理、刺激要素、さらには使いやすいシステムが必要である。そしてこれらすべての要素がPRMの効果的運用に向けて相乗効果を発揮しなければならない。それが実現するのにはまだしばらく時間がかかることになり、それはPRMを1つの独立したソフトウェアカテゴリとして確立するのには間に合わないだろう」と分析する。彼女は、大部分のベンダーが倒産か、合併、買収という運命をたどることになると予想している。

 今後PRMベンダー間で合併が進む可能性が最も高い。全般的な観点から考えれば、おそらくPRMはCRMと統合されるだろう。というのも、この2つは、顧客と彼らにサービスを提供する企業の関係をつなぐより大きな連鎖のなかの一つながりに過ぎないからだ。

 アバディーンのアレンは、これまでCRMの概念は、直接的流通チャンネルにあまりにも偏ったものだったが、今後の過程でPRMも含め、間接的流通チャンネルに対しても拡大されることになると断言する。

「CRMとPRMのハイブリッドモデルが、ひょっとするとWebサービスのバックボーン上に登場することになった場合、流通チャンネルに特化したアプリケーションを提供するITサプライヤーの間で、合併と買収の動きが加速するだろう」(アレン)

 だが、それでも、PRMの特徴や機能の開発は続けられるだろう。というのも、PRMこそ、間接的流通チャンネルを通して活動する企業が、自分たちの存在を末端の顧客にまでアピールするための唯一の方策だからである。PRMの機能がより広範な定義を得たCRMに統合されるとき、中間業者はようやく彼らに相応しい評価を得ることができるだろう。

[Adrian Mello,ITmedia]