エンタープライズ:ニュース | 2002/10/09 21:27:00 更新 |
TPC-Cベンチマークで見るIAサーバとUNIXサーバの戦い
TPC-Cベンチマークは、オンライントランザクションの処理性能を測るベンチマークで、基幹システムで用いられるシステム環境に近い「ノンクラスタード」部門では依然としてUNIXサーバが強い。しかし、IAではNECやユニシスのマシンがトップ10に食い込み、コスト優位性という特色も生きている。
サーバの性能を測るためのベンチマークとして、TPC(Transaction Processing Counsil)という組織があり、日本語名では、「トランザクション処理性能評議会」となる。これは、有力なコンピュータメーカーが集まり、製品の性能指標を作成する目的で設立された非営利団体だ。ベンチマークにはA、B、C、Dと4種類あるが、現在主に利用されているのは、卸売り会社のオンライン・トランザクション処理をシミュレートするC、アドホッククエリ向けの意思決定支援を行うH、Web上のe-コマース向けのW、ビジネスレポート向けの意思決定サポートを行うRがある。A、B、Dは既に廃止になっている。
Cは1分間に処理できるトランザクション数を示すもので、「tpmC」で表す。特にCは、企業の基幹システムをシミュレートするため、エンタープライズ向けサーバを提供するメーカーやプラットフォームベンダーは、性能を競う上で重要な指標として認識している。
現在、TPC-Cのノンクラスタード部門でのトップは富士通の「PrimePower 2000」。先日、富士通はそれを性能で1.8倍上回るというUNIXサーバの最上位機種「PrimePower 2500」をリリースしている。このTPC-Cの現在のベンチマーク結果を用いて、IAサーバとUNIXサーバの比較を性能とコストの面から考えてみたい。
TPC-Cは、1台のサーバ上での処理を示す「ノン・クラスタード」と、データベースを複数のサーバマシンにクラスタリングさせた環境で処理を行う「クラスタード」の2つに分かれる。実際の基幹システムのデータベースサーバでは、ディスクが分散するクラスタード環境はあまり用いられていない。そのため、より現実的な環境を実現しているノンクラスタードへの注目度の方が高いのが現状となっている。
ノン・クラスタードはほとんどがUNIX
そのノンクラスタードでは、IAの性能が上がったとはいえ、依然としてほとんどはUNIXのシステムだ。トップは富士通の「Primepower 2000」で45万5818tpmC。後を追うのは、ヒューレット ・パッカードの「9000 Model Superdome Enterprise Server」で42万3414tpmC、さらにIBMの「eServer eSeries 690 Turbo」が40万3255tpmCとなった。そして、先日のIntel Developer Forum 2002で、NECの「TX7/i9510 C/S with Express5800/120Rd-2」とWindows .Net Server Datacenter Server Editionベースの組み合わせが30万8620tpmCで、IAサーバとしては異例の5位に食い込んだ。IAではほかに、ユニシスのES7000が16万5218tpmCで10位に入っている。
トップのPrimepower 2000のシステム環境は、128ウェイ、DBは「Symfo Ware Server Enterprise Edition VLM 3.0」、OSは「Solaris」、TPモニターは「BEA Tuxedo 6.5 CFS」。
一方で、これをtmpC当たりのコストの視点で見ると、IAサーバの強さが浮き彫りになってくる。性能で5位だったNECのIAサーバが、14.96USドルでコストの低さでは第1位。このIAサーバ環境は、OSが「Windows .Net Server 2003 Datacenter Edition」、DBは「SQL Server 2000 Enterprise 64ビット」、TPモニターはCOM+となっている。
低コストランキングの第2位はHPのSuperdome Enterprise Serverの15.64ドル。このマシンは性能でも2位に入っており、性能とコストの両面で優位性を発揮している。DBは、Oracle 9i Enterprise Database Server、OSは「hp-ux 11.i 64-bit」。TPモニターは「BEA Tuxedo 8.0」 。
なお、性能でトップだった富士通のPrimepower 2000のコストは28.58ドルで、性能トップ10の中では7番目に位置する。
クラスタード部門のOS、DBはMSが独占
「現状ではポピュラーな環境ではない」とただし書きされることも多いクラスタード部門。
この部門では、ハードウェアもさることながら、OSのWindows 2000 Advanced Serverと、データベースではSQL Server 2000と、マイクロソフト製品が上位を占めているのが非常に目立つ。
DBでは、4位にIBMの「DB2 UDB V7.1」、7位にOracle 9i R2 Enterprise Editionが入っているだけ。OSでは、7位にRed Hat Linux Advanced Serverが入っている以外すべてWindowsとなっている。
性能で見た場合のクラスタード部門のランキングトップは、HPの「ProLiant DL760-900-256P」で70万9220tpmC。OSはWindows 2000 Advanced Server、DBはSQL Server 2000 Enterprise Edition。2位はIBMの「e xSeries 370 c/s」で、OSとDBは1位のHPと同じ。
ただし、TPCのベンチマークにもある程度の課題があることも広く認識されている。パフォーマンスチューニングの方法などによって、比較する際の実質的なシステム環境に製品による差があるケースなどがあるからだ。
向上するクラスタ技術
クラスタードの構成が、基幹システムであまり利用されない理由として、DBの特性上、データを複数のサーバのディスクに分散することが、パフォーマンスの悪化につながるという認識がある。
エンジニアには、「ディスクI/Oはメモリ転送に比べて100万倍遅い」と話す人もいる。100万という数字自体に意味はないかもしれないが、それくらいの差があるということだ。オンライン・トランザクションでは大量のデータをリアルタイムで処理し、止まることが許されないという環境であるため、単一ディスクでスケールアップの拡張が基本となるメインフレーム、あるいはオープン系ではUNIXベースのシステムが採用されてきた。
一方、IAサーバでは、低コストマシンを追加するスケールアウト方式でシステムを拡張を行う。では、IAサーバが基幹システムに入るためには何をすればいいのか。
そのカギを握るのは、分散するサーバマシンを共有ディスクのイメージで処理できるクラスタ技術だ。これについて、オラクルが「Oracle 9i RAC」のキャッシュ・フュージョンと呼ばれる技術でこれに対応した。キャッシュ・フュージョンとは、複数システムに分散して存在する共用データのキャッシュを、システム間で直接読み書きできるようにする技術。これにより、ディスクアクセスの頻度が少なくなるため、パフォーマンスの飛躍的な向上が見込めるわけだ。
IAサーバについては、XeonやItanium 2などのプロセッサだけでなく、ソフトウェアの性能アップも重要なポイントになる。
TPC-Cノンクラスタードのランキング
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UNIX打倒でIAサーバは基幹システムへ
[怒賀新也,ITmedia]