エンタープライズ:ニュース 2002/10/30 22:38:00 更新


日本アリバのLive 2002 Tokyoで中谷巌氏、「形式知はITで、人は暗黙知に注力せよ」

日本アリバは10月29日から2日間、同社のB2B購買アプリケーションを紹介する「Live 2002 Tokyo」を開催した。「攻めの購買が経営を変える」をテーマに、特別講演にはUFJ総合研究所の理事長兼多摩大学学長の中谷巌氏が登場し、企業活動において戦略的な購買管理の大切さが紹介された

 日本アリバは10月29日から2日間、都内のホテルで「Live 2002 Tokyo」を開催した。今回は、「攻めの購買が経営を変える」をテーマに、同社の戦略的な管理購買ソリューション「Ariba Spend Management」が強調された。また、特別講演には、UFJ総合研究所の理事長兼多摩大学学長の中谷巌氏が登場し、ルイ・ヴィトンのブランド戦略や、V字回復を果たした日産自動車、サービス重視にシフトして成功したIBMなど多彩な例を挙げ、企業活動において戦略的な購買管理や、収益確保の仕組みを構築することが不可欠であることが紹介されている。

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中谷巌氏。日産のゴーン社長について、「技術の日産」では消費者には何もアピールしないことにすぐ気付いた点が素晴らしいと述べた。

「ブランド構築には時間がかかる」と話す中谷氏。中国の安い労働力によりデフレが進行する中で、モノの値段が最低価格に収斂するコモディティ化が止められない状況という。同氏は、企業が生き残りを賭けて抜本的な構造改革を行う必要があるとする。それが、スケールメリットを生かした戦略的な購買活動によって、企業の支出を徹底的に抑えることを目指すアリバの製品のコンセプトにつながるわけだ。

「松下幸之助氏の“企業の使命は良いものを水のように提供していくこと”という水道哲学が日本企業に今も深く根付いてしまっている」と話す中谷氏。これは、モノがあふれる現代の経済状況とは相いれないという。

 同氏が強調するのはブランドの構築だ。日本企業の多くはブランド戦略があまり上手くないという。商品が売れると分かっていても、必要以上に生産せず我慢することからブランドが醸成されてくるという。

「日本企業の多くは、商品がヒットすると途端に増産に走る」という。結果的に、その製品は供給過剰の状態に陥ってブランド価値を失うとしている。

 典型的な成功例としてルイ・ヴィトンが挙げられた。ルイ・ヴィトンは一切値引きを行わず、店の前に長蛇の列ができていても、店員は「ごゆっくりお買い物をお楽しみくださいませ」と微笑みかけて、客をもてなすという。「外で待っている人間はイライラしているんですが」というものの、その枯渇感がブランド価値として息づいてくるわけだ。

 ブランドの重要性を強調した上で同氏はITの活用について触れた。ポイントは、形式知はITに任せて、人間は暗黙知に専念するべきという点。

 ここで、暗黙知に分類されるのが「理由は分からないけど好き」といった具合に顧客を引き付けるブランド価値となる。つまり、生産管理や在庫管理、需要予測など、数値や言語に変換できる形式知は徹底的にIT化してコストを削減する。IT化でひねり出した余力を、ブランドを確立するための人件費に回すことが望ましいという。言いかえれば、企業はERPやCRM、SCMのシステムを活用すると同時に、経営戦略にもっと力を入れるべきといったニュアンスになる。

 同氏は、サービス提供を重視するビジネスモデルで成功しているIBMについても触れた。IBMは、顧客ごとに個別化したサービスを提供しているが、その90%はIBM社内では標準化されたシステムを利用していることについて、ITを上手に活用している例として紹介した。

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▼日本アリバ

[怒賀新也,ITmedia]