エンタープライズ:インタビュー 2002/11/18 19:24:00 更新


Interview:「シャーシの標準化」を進めるIBMのブレードサーバ戦略

ブレードサーバにハードウェア各社が参入し、Webサーバなどフロントエンドとしての役割だけでなく、汎用的なサーバとしての利用が想定されて始め、IBMも同様にブレードに力を入れている。同社は、業界全体を通して、ブレードを格納するためのシャーシを標準化することが必要だとし、推進していくことを明らかにした。

 IAサーバのクラスタ環境および、LinuxやWindowsといった組み合わせで、コスト効率と信頼性の高い基幹システムを組んでいくことが、今後のシステムの大きな潮流として各所で紹介されている。ここで、IAのハードウェアとして最も注目されているのは、省スペースと管理性にメリットがあるブレードサーバだ。IT業界の巨大企業の1つであるIBMも、「オートノミックコンピューティング」を実現するための製品としてブレードサーバに注目している。

 先日は2ウェイの「BladeCenter HS20」と、シャーシ「BladeCenter」をリリースした。同社は今後、ブレードに64ビットのハイエンドUNIXサーバに搭載されるPowerプロセッサを採用するとも言われている。

 IBMアジア・パシフィックサービスのeServer xSeries & Intellistation ブランド・アンド・プロダクトマネジメントでIAサーバを担当する藤本司郎氏に、同社のブレードサーバにフォーカスを当てて話を聞いた。

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リリースされたBladeCenter HS20

ZDNet IBMのサーバ製品について概要を教えてください。

藤本 IBMのサーバ製品は全体を示す「e Server」の下で、メインフレームの「zSeries」、UNIXサーバの「pSeries」、統合アプリケーションサーバ「iSeries」、そしてIAサーバは「xSeries」として展開しています。

ZDNet IAサーバであるxSeriesをどのように位置づけていますか?

藤本 性能の面ではIAサーバとWindowsといった組み合わせは、メインフレームやUNIXサーバが使われているハイエンドの基幹システムを稼動できるほどにまで上がってきています。UNIXシステムを性能面で凌駕している部分も出てきています。ただし、顧客サイドが持つスキルとしては、この分野ではUNIXの方をよく知っている技術者の方が多い。また、顧客がなぜIAにしてくれないかと言えば、日本ではこれまでメインフレームがずっと普及してきたという事情もあります。例えば中国では、元々メインフレームがあまり普及しなかったため、IAが爆発的に増えつつあるのです。

ZDNet プロセッサをはじめ、オープンなアーキテクチャを採用してシステムを構築することに技術的な限界はあるでしょうか?

藤本 CPUとメモリを連携するフロントサイドバス(FSB)を例にとった場合、オープン製品のプロセッサでは、FSBは良くても533MHzなどとなっています。しかし、独自仕様でCPU周りをチューニングできれば、FSBを2GHzくらいにすることも可能になります。やはり、性能に自分で手を入れられるという点ではオープンアーキテクチャではできないこともあります。

ZDNet 先日、IBMはブレードサーバとしてBlade Center HS20をリリースしました。同製品の特徴について教えてください。

藤本 一般にブレード製品は、「密度重視タイプ」「性能重視タイプ」2つのタイプに分かれます。密度重視タイプには、ヒューレット・パッカードの「ProLiant BL e-Class」や富士通の「Primergy BX300」、NEC「Express5800-410Ea」などがあり、用途としてはほぼISPやASPが利用するWebフロントエンドのみといっていいものです。プロセッサは、低電圧のPentium IIIなどパワー不足なものが多く、SMPにも対応していません。

これに対し、Blade Center HS20は性能重視タイプと言えます。CPUにはXeon 2.4GHzを搭載したSMP対応の2ウェイモデルとなっています。また、4Gバイトメモリや、ギガビットイーサネットおよびSANへの対応、さらに電源などを徹底して2重化していることも、IBMの技術力を背景にした強みとなっています。対応エリアも、フロントエンド、アプリケーションサーバ、データベースサーバという3階層全体で汎用的に利用できます。

BladeCenterとしては具体的に、サーバ統合やハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)およびグリッドコンピューティングを想定しています。また、SANに対応していることなどを生かして、NotesやExchange Serverといった一般的なアプリケーションサーバとしての利用にも最適です。

ZDNet ブレードサーバを今後もっと普及させるために何を推進しますか?

藤本 ブレードについて他社と最も異なる考え方をしている点ですが、IBMは今後「シャーシの標準化」を進めていきます。現状では、各社のブレードで対応するシャーシが異なっており、これは顧客にとって使い勝手が悪いだけでなくリスクにもなっています。つまり、顧客はある1つのメーカーの仕様に縛られることになるからです。例えば、そのメーカーが製品ロードマップを一新して、既存のプロセッサをサポートしなくなったりしたら困るわけです。

IBMは、業界全体を通して、ブレードについてシャーシや拡張コネクタ、SCSIの仕様などを標準化していきます。

ZDNet ブレードの場合、多数のサーバをまとめて、かつリモートの環境から管理できることがメリットの1つになっています。HPもProLiant Essentialsなどのソフトウェアによる管理で差別化を図ろうとしていますが、Blade Centerではどう対応していますか?

藤本 Blade Centerでは、「IBM Director 4.1」によって管理します。ボトルネックやアプリケーション異常、メモリ異常、リソース異常などのソフトウェアトラブルの検知機能と、システムダウンやCPU、メモリ、HDDなどのハードウェア異常も検知することができます。

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BladeCenterに自信を見せる藤本司郎氏

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▼日本IBM

[聞き手:怒賀新也,ITmedia]