エンタープライズ:ニュース 2002/11/18 20:27:00 更新


Keynote:MS Officeの新アプリや「スマートな」家庭向け機器を披露したゲイツ会長

COMDEX/Fall 2002の開幕を翌日に控えた11月17日夜、米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウェアアーキテクトによる恒例の基調講演が、ラスベガスのMGMグランドホテルのグランドシアターを埋めた数千人の観客を前に行われ、新Officeアプリ「OneNote」などを披露した。

 COMDEX/Fall 2002の開幕を翌日に控えた11月17日夜、米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウェアアーキテクトによる恒例の基調講演が、ラスベガスのMGMグランドホテルのグランドシアターを埋めた数千人の観客を前に行われた。ゲイツ氏はMS Officeの新しいアプリケーションとなる超多機能メモソフト「OneNote」や、ワイヤレスネットワークでインターネットに接続された家庭用機器「SPOT」などを紹介した。

数多くの製品/サービスが紹介されたが……

 5月に発表されたオンラインゲームサービス「Xbox Live」の話題で始まったゲイツ氏の基調講演は、マイクロソフトが巨額の資金を投じて取り組んでいる研究開発の成果であるソフトウェア/ハードウェアを続けざまに観客に見せることで、1年前の同じ基調講演で提唱した「デジタルの10年(Digital Decade)」がシナリオ通り進んでいることを、強く印象づけようとしていた。

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米マイクロソフト、ビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウェアアーキテクト

 今回ゲイツ氏が基調講演で紹介したもののうち、キーワードになる製品/技術/サービスを挙げてみると、Xbox Live、Windows XP Media Center Edition(ネットワーク化された家庭向けのオーディオ/ビデオサーバ用OS)、Windows Media 9 Series、Smart Display(かつてMiraのコードネームで呼ばれていた。2003年第1四半期に発表予定)、Movie Maker 2、Tablet PC、Pocket PC、OneNote、Webサービス、信頼できるコンピューティング(Trustworthy Computing)、Windows .NET Server 2003、SPOTとなる。

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これを楽しみにしているという人も多い(?)ユーモアビデオ。今回はなかなか面白い、との評判しきり。画像は若い頃の(?)バルマーCEO。昔から叫んでいたらしい

 もちろんこの中にはXbox Live、Windows Media 9やTablet PCなど、既に別の機会で紹介済みのものが多い。マイクロソフト好きの観客といえども、これまた恒例のユーモアビデオの上映時に大歓声が上がったのを別にすれば、公演中大きな盛り上がりを見せたのは数度だった。

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Smart DisplayでMSN8を利用するデモ。「よく聞かれるがTablet PCとの違いは、Smart Displayはあくまでもディスプレイの進化したものだということ」と説明

Office 11ファミリの一員になるOneNote

 その数少ない盛り上がりを呼んだ製品が、この日初めて披露された「Microsoft OneNote」だ。OneNoteは、その機能のごく一部を紹介したデモによると、テキストと手書き文字を混在でき、Webページの画面をドラッグ&ドロップで簡単にコピーでき、音声のキャプチャも可能、というもので、Windows XP Tablet PC Editionに付属している「Microsoft Journal」の発展型とも思えるソフトウェアだ。Tablet PC専用というわけではないようだが、デモで見る限り、会議での資料に手書きでメモを書き込んだり、発言をキャプチャしたりしていたので、少なくともデスクトップではその機能を生かせず、ノートPCかできればTablet PCで使うアプリケーションだと思われる。

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OneNoteのデモ画面。テキストと手書き文字を混在させ、さらに手書き文字を箇条書きとして番号を振ったり、下線を付けたりできる

 テキスト、手書きメモ、音声などさまざまな情報をため込んで整理できるところまでは分かったが、それらの情報を後から利用するための検索機能については、残念ながら(デモはされたが)よくイメージがつかめなかった。全体としての印象は、自由なレイアウトで書き込むことのできる紙のノートの長所と、ほかの情報からのコピーや、内容の並べ替えなどが得意なPCのノート/ワープロの長所を併せ持つ(持ちそうな)、超多機能メモソフトというところだ。OneNoteは2003年夏頃に出荷予定の「Office 11(仮称)」と同時期のリリースになるとしている。

「SPOT」はほんとにスマート? 答えはCESに

 もう1つ、今回ゲイツ氏が2003年に発表予定として見せたのが「SPOT(Smart Personal Object Technology)」という家電製品向け技術だ。SPOTは、無線ネットワークで接続された家電製品に、インテリジェンスを持たせて、よりスマートな機器とするための技術という。

 デモンストレーションでは、前面にタッチパネルを備えたデジタル目覚まし時計が登場した。この目覚まし時計「Smart Personal Alarm clock」は、持ち主のスケジュールを読みとって、さまざまな情報を提供する。例えば、その日の最初のアポイントメントまでの時間や、搭乗予定の飛行機までの時間、今いる場所と飛行機で向かう目的地の天気予報などを表示することができる。

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SPOTを使った「Smart Personal Alarm clock」。画面4隅のアイコンをタップするとアラーム設定やその日の予定、天気予報などを表示できる

 SPOT技術の詳細は、2003年1月に開催される「2003 International CES」で紹介するとのことで、詳しいことは分からないのだが、一種のエージェント技術だと考えられる。家電に組み込むためのパートナーとして、米ナショナル・セミコンダクターとともに半導体チップを開発中だという。

 ゲイツ氏は2001年のInternational CESでの基調講演で、Windows XPが稼働するホームPCと、無線LANで接続され、好きなインターネットラジオ放送をアラームとして利用できるラジオ付き目覚まし時計を披露しているが、このコンセプトを発展させたものがSPOTなのかもしれない。

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Webサービスの例としては、ホテルの部屋のノートパソコンからインターネットを通じて最寄りのKinko's店舗を探し、そこのプリンタから出力させる、というデモを見せた

 最近のマイクロソフト幹部によるスピーチでは、家庭向けからオフィス向け(マイクロソフトが最近多用する言葉で言えば“インフォメーションワーカー”向け)まで、製品/サービスや同社が認識している問題に対する取り組みなどを大量に紹介することが多い。今回のゲイツ氏の基調講演もまさにそのパターンで、あまりに多くが詰め込まれていて、講演全体の主張はよく分からなくなったような気もした。ハードウェア/ソフトウェアにおいて次々に新しいものが登場するこの状態こそ、まさにデジタルの10年ということなのだろうけれども。

関連リンク
▼COMDEX/Fall 2002
▼米マイクロソフト
▼米マイクロソフト「Virtual COMDEX 2002」

[佐々木千之,ITmedia]