インタビュー
2002/11/19 17:43 更新


Interview:「モバイル市場でも競争力の高さは証明済み」とAMD幹部

11月11日、AMDはノートPC向けプロセッサの新製品「モバイルAMD Athlon XPプロセッサ 2200+」を発表した。モバイルプロセッサを担当するブース氏は、インテルのBaniasについて、自社の製品がそれに対抗し得る製品になることを強調した。同氏によると、Baniasでインテルがアピールしている幾つかの機能は、既に現行のモバイルAthlon XPでも利用できるという。

11月11日、AMDはノートPC向けプロセッサの新製品「モバイルAMD Athlon XPプロセッサ 2200+」を発表した。AMDモバイルプロセッサーグループのディビジョンマネジャー、マーティン・ブース氏は、来年モバイル市場にライバルが投入するBaniasについて、自社の製品がそれに対抗し得る製品になることを強調した。同氏によると、Baniasでインテルがアピールしている幾つかの機能は、既に現行のモバイルAthlon XPでも利用できるという。またモバイル分野における次世代プロセッサHammerシリーズへの切り替えを一気に進める計画も披露した。

amd.jpg
HammerテクノロジーのモバイルAthlonプロセッサを手にするブース氏

ZDNet AMDの企業向けノートPC戦略についてお聞かせ願えますか。

マーティン われわれのモバイルAthlon XPは、オールインワンのフルサイズノートPCにおいて、米国では既に高いシェアを持っています。そしてそのシェアは拡大しています。特に学校や政府といったマーケットで成長しています。日本ではそこまでのシェアを確保していませんが、それでも徐々に増加しているのです。

 また、2スピンドルのノートPCに向けても、マイクロPGAパッケージを採用したモバイルAthlon XPを投入することで顧客の要求に応じています。来年は2スピンドル市場で、さらにシェアを伸ばしていくことになるでしょう。

ZDNet AMDはノートPC市場のどのようなセグメントにフォーカスしようとしていますか。

マーティン AMDは現在、コンシューマー向け市場で50%ぐらいのシェアを持っています。そして新しい低消費電力版のモバイルAthlonは薄型・軽量ノートPCにも使えるプロセッサになります。加えて、低消費電力でありながらデスクトップ並みのパフォーマンスも示すことができるのです。われわれには優れた電力制御技術が既にありますから、バッテリー持続時間についても期待にこたえることができます。Baniasに対抗するためにキャッシュメモリを増やし、より低い周波数でパフォーマンスに優れた製品を提供できるでしょう。

ZDNet インテルはBaniasを携帯性を重視するユーザーに売り込もうとしています。BaniasはAMDの戦略にどんな影響を与えるでしょうか。

マーティン われわれの考えでは、Baniasで宣伝されている各種モバイル向けの機能は、すべて既存のAMD製品で対抗できると考えています。Baniasは特別なプロセッサではないのです。

 例えば、Baniasは電力管理機能が進化し、電圧と周波数を広い範囲で多段階に制御します。しかし、AMDではK6-2の世代に「PowerNow!」という名称で、この機能を実装していました。決してBaniasだけが特別ではありません。モバイルAthlon XPの平均消費電力は1ワットで、これはモバイルPentium 4-Mよりも低く、バッテリー持続時間に対する貢献は明らかと言えるでしょう。

 モバイルAthlonはこれまで、35ワットの電力設計枠をターゲットにしてきましたが、企業向けでは電力枠20〜25ワットの2スピンドル薄型ノートPCが最も高い人気となっています。さらに16ワット以下の熱設計電力枠もモバイルに特化したPC向けに設けています。

 もちろん、その下にも10ワットを割り込むような熱設計電力枠を必要とする小型PC市場が存在しますが、それはAMDのターゲットではありません。小型ノートPCが人気の日本市場でも、ノートPC全体の売り上げと比較すると10%以下です。ワールドワイドでの数字になるとさらに小さく、小型ノートPCは約5%の市場シェアしか持ちません。

 また、Baniasは積極的なクロックゲーティングを行うと聞いています。これはプロセッサを役割ごとに分割し、それぞれが不要な時に電源を落とすというものです。しかし、これは当たり前のことで、何も新しい技術ではありません。プロセッサは駆動時間の85%はアイドル状態で待機していますから、どんなプロセッサも十分に休息を取りながら動作しています。それよりもトランジスタの漏れ電流をどのように処理するか、といったことの方が重要なのです。

ZDNet インテルはBaniasプラットフォームでワイヤレスチップをディスカウントしたり、ソフトウェアを組み合わせたトータルのソリューションを提供しようとしています。同様のプログラムを行うつもりは?

マーティン 確かにインテルはBaniasをチップセットと無線LANと同時に発注することで、無線LANチップのディスカウントを行っているようです。しかし、それを勘案してもなお、AMDには大きな価格的なアドバンテージがあります。

 またインテルはワイヤレス技術の会社ではありません。ワイヤレスが得意なベンダーは数多くありますから、AMDの製品が不利になることはありません。

ZDNet モバイル向けでは実装の小型化や省電力管理の徹底を狙う上で、統合型モバイルチップセットも重要になるのでは?

マーティン その分野ではATIテクノロジーズが積極的に開発を進めています。彼らは単体のグラフィックチップで、プロセッサと同様の電圧とクロック周波数を動的に切り替える機能を提供しています。そうしたノウハウを投入した統合型チップセットが、ATIから登場するでしょう。

ZDNet モバイルAthlon XPには16ワットの熱設計電力枠もあるわけですが、これは小型・薄型のデマンドが強い日本市場では、特別な意味を持つでしょう。AMDはこのカテゴリーのカスタマーを獲得しているのでしょうか。

マーティン 具体的なベンダー名を挙げるわけにはいきませんが、16ワット枠のAMDプロセッサで設計を行っている顧客は既にあります。もちろんさまざまな日本のベンダーとも話をしているところです。当然ながら、日本のベンダーとは最優先で話を進めています。

ZDNet 16ワット枠のモバイルAthlonを搭載する製品は、どのようなものになるのでしょうか。

マーティン 熱設計電力枠の使い方はベンダーによって異なります。冷却ファンなしの静音モデルもありますし、25ミリという薄型ノートも登場するでしょう。PCベンダー次第としか言えません。しかし、平均消費電力は熱設計電力枠が異なっても変化するわけではありません。どのカテゴリーでも、同じように省電力です。

 薄型ノートPCの価格が下がっていないのは、その市場にインテルのライバルが存在しないからです。AMDが薄型向けノートPC向けに16ワット枠のプロセッサを出すことで、プライスポイントは下がっていくでしょう。

ZDNet 来年はHammnerベースのモバイルプロセッサも投入される予定ですが、これはいつごろになりますか

マーティン デスクトップPC向けのClawHammerは来年第1四半期の終わりごろに出荷されます。モバイルPC向けはその少し後になりますが、クリスマス商戦の製品には十分間に合うタイミングで出荷できるでしょう。デスクトップPC向けとモバイルPC向けの出荷時期の違いはごく僅かなものだと考えていただいて結構です。

ZDNet ノートブックにおける64ビット化の恩恵は何でしょう?

マーティン PCの進化は尺取り虫のようなものです。まずプロセッサが32ビットから64ビットになり、それからソフトウェアが64ビットになる。順番に進化していかなければなりません。Hammerは32ビットプロセッサとしても非常に高速ですが、64ビットアプリケーションが増えてくれば、ワークステーションクラスのアプリケーションをノートPCで利用することができるでしょう。

ZDNet Hammerへの切り替え期には、2つのプラットフォームが混在することになりますか。

マーティン まずIT機器の導入担当者は、複数の選択肢を持つ必要があります。インテルに加えて、AMDのモバイルプロセッサを選択肢に入れることで、柔軟な機種の選定が行えます。モバイルAthlon XPはバッテリー持続時間でモバイルPentium 4-Mを上回り、パフォーマンスもトップクラスです。

 また現在のところ、AMDは1つのアーキテクチャでノートPC向けの全エリアをカバーしているため、ソフトウェアの互換性について固定した評価を行えます。Athlonのみのプラットフォームに統一できることはTCO的に有利と言えるでしょう。

 もちろん、Hammerが登場すると一時的に2つのプラットフォームが混在することになりますが、Hammerへの切り替えは素早く実施する予定です。ハイエンドはもちろん、省電力な16ワット枠のプロセッサもHammerに切り替えることになります。約12カ月で、全カテゴリーのモバイルプロセッサをHammerアーキテクチャに切り替えます。

関連記事
▼日本AMD、ノートPC向け「モバイルAMD Athlon XPプロセッサ 2200+」を発表

関連リンク
関連記事
▼米AMD、新ロードマップを公開、2004年前期に90nm/SOIの64bitプロセッサ3種類を投入
▼米サンディア国立研究所向けスーパーコンピュータにAMD Opteronが採用
▼HyperTransportを生かしたOpteronのプラットフォーム技術

関連リンク
▼AMDニュースレター
▼日本AMD
▼日本AMD

[聞き手:本田雅一,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.