エンタープライズ:ニュース 2002/11/27 02:34:00 更新


Itanium 2がRISCプロセッサを上回ったとするHP、「その差は今後開くばかり」

日本ヒューレット・パッカードはItaniumについて紹介するプレス向けのブリーフィングを行った。性能とプライスパフォーマンスの優位性を武器に、IPFに対する自信満々のコメントが相次いだ。その真意はいかに?

 日本ヒューレット・パッカードは11月26日、同社とインテルが共同開発しているItanium Processor Family(IPF)について、現状と今後の取り組みを紹介するプレス向けのブリーフィングを、市ヶ谷カスタマーセンターで行った。同社は各種のベンチマークから、IPFのパフォーマンスはRISCベースのプロセッサを上回ったとし、その実力差は今後さらに開くばかりとする。同社は、PA-RISC製品の開発および提供も同時並行で継続し、ユーザー企業に数年単位の移行期間を設定するという。性能とプライスパフォーマンスの優位性を武器に、IPFに対する自信満々のコメントが相次いだ。

 ビジネスクリティカルシステム統括本部の松本光吉本部長は、「PA-RISCベースの次のアーキテクチャに向けて、インテルとIPF共同開発の話を始めたのは8〜9年前」と話す。同社は、Itanium 2搭載サーバ向けのOSとして、Linux、Windows、hp-uxをサポートする。hp-uxについては、IPFをサポートする「hp-ux 11i v1.6」が紹介された。同OSでは、「Aries」と呼ばれる動的コードトランスレータにより、PA版のhp-uxとItanium版hp-uxの32/64ビットのアプリケーション・バイナリ互換、ソース互換、データ互換、管理環境互換を提供する。これにより、既存ユーザーの投資を保護するという。

 また、チップセットも、インテルとの共同開発によるノウハウを生かし、他社との差別化への武器とする考えだ。現在提供している4ウェイ以下までのzx1は、Itanium 2の開発段階からインテルによって使われてきた実績を持っており、メモリの低レイテンシやI/Oの帯域幅、マルチビットエラーへの耐障害性などに優位性を持つという。他社製品と比較して15〜20%高い性能を持つとしている。今後は8CPU以上のハイエンドサーバ向けチップセットも提供する予定があることが伝えられた。

Itanium搭載64CPUのsuperdome

 同社は、現在は、Itanium 2搭載サーバとしては、2ウェイの「rx2600」、4ウェイの「rx5670」をリリースしているが、8ウェイ以上の大きなマシンはまだ出荷されていない。

 これについては、同社のハイエンドサーバであるSuperdomeシリーズとして、64CPUの「Madison」(Itanium 2の後継プロセッサ)を搭載したサーバを、2003年の中ごろを目処にリリースする予定という。ただし、これについては、インテルのMadisonの発表時期に依存することも加えた。

 また、IPFの技術的な動きについては、1つのシリコンにItaniumが2CPU載るデュアルコア版が、2004年を目処に登場する可能性があるという。外部キャッシュを置くことで、商用アプリケーションに高いパフォーマンスを提供すると同社は強調した。

 その商用アプリケーションだが、Itaniumに対応したものが不足しているという問題は今も健在だ。Windows .NET Serverの64ビット版のリリースが遅れていることはもちろんだが、HPが宣言するように、RISCベースのハイエンドサーバを展開するIBMや、サン・マイクロシステムズを凌いでいくためには、もっと上のレイヤーにIPF対応アプリケーションを増やす必要がある。ただし、この日は、オラクルやSAP、BEAシステムズといった主要なISVが、Itanium 2をサポートすることを表明していることなどが紹介されており、対応アプリケーション不足の問題にも、解決に向けて明るい兆しが見えているようだ。

 この日は、Itanium 2のパフォーマンスが優れている理由などの解説もされている。IPFは、RISCをさらに進めたEPIC(明示的並列命令コンピューティング)アーキテクチャを採用したことが改めて挙げられた。EPICでは、実行する命令のスケジューリングをチップではなくコンパイラが事前に行う。

 さらに、命令は並列実行できるグループ単位にまとめられる。同じグループに属する命令は同時に実行できるわけだ。命令を同時実行する分、そして、チップ上にできた余力を別の処理に利用することで、さらに高い処理性能を実現できるという。

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[怒賀新也,ITmedia]