エンタープライズ:ニュース 2002/11/29 23:47:00 更新


「踏みとどまるラインを決めるべし」――NTT Comが語るビジネス継続の鍵

「データの消失は、ミラーリングやレプリケーションで乗り越えられるといった単純な話ではない」――NTTコミュニケーションズの高尾司氏は、こう警鐘を鳴らす

「やれ、ディザスタリカバリ(災害回復)だと言うけれど、その前にやっておくべきことがある。データの消失は、ミラーリングやレプリケーションで乗り越えられるといった、単純な話ではない」――NTTコミュニケーションズ(NTT Com)のEプラットフォームサービス部でサービス開発部門長を務める高尾司氏はこう強調する。

 NTT Comは今年、広域ストレージ・ネットワーク検証設備の共同構築をはじめ、さまざまなアプローチでストレージ分野に取り組んでいる。目指すところは、ビジネスの継続を確保する基盤となる広域ストレージネットワークサービスの提供だ。そのインフラとして、広帯域な通信サービスがあることは言うまでもないが、同社ではさらに、FC(ファイバーチャネル)スイッチの部分にまで踏み込んで、安定したサービスを提供していくという。

 高尾氏は、STORAGE NETWORKING WORLD/Tokyo 2002で開催されたワークショップの中で、幾つか興味深い指摘を行っている。

 いわく、「ネットワークをはじめとするリソースの統合が鍵だ。そして統合した上でリソースをコントロールし、企業戦略を立てていくことだ」「企業オフィスにおけるデータのバックアップが省みられることは少ない。しかし、ディザスタリカバリだとかミラーリングだとか言う前に、バックアップの状況を全社的に把握し、全社的にバックアップ管理を行うべきだ」。

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ワークショップの後、率直な口調でインタビューに答えてくれた高尾氏

 そのバックアップポリシーにおいては、「“そのデータが重要かどうか”ということよりも、更新の頻度に応じて、どのようにバックアップを取るかを考えるべきだ」(高尾氏)という。ただしこの作業は、マニュアルで行おうとしても限界がある。バックアップソフトウェアを適切に利用することにより、理想とするきめ細かなバックアップに近づけていくことができるという。

 9月に発表された広域ストレージネットワーク検証設備は、ストレージアレイやFCスイッチなど、参加各社の得意な部分を持ち寄って、ビジネスにつなげていくことが第一の目的だ。ストレージに関しては、とかく接続性の問題が指摘されてきた。だが高尾氏によれば、純粋に技術的な意味での相互接続は別として、コネクティビティはもはや問題足りえないという。

「既に(ストレージ機器がきちんと)つながるかどうかを試そうという会社はない。(顧客が知りたいのは)その先の、パフォーマンスなどを検証したいという部分ばかりだ」

 広域ストレージネットワークの実現に当たって、強いて困難な部分を挙げるとすれば、FCスイッチやFCIPゲートウェイの構成、設定に関わる部分だ。だがここは、「目立たない部分ではあるが、認定技術者をそろえてしっかりやっていく」と同氏は言う。

 もう1つの仮題は回線料金だ。これについては、「汎用的に用いられる回線とは異なる、ストレージ用途の回線という形で、新しいサービスメニューを考えていきたい。来年中には何とかしたい」(高尾氏)。

 ただ、いくらソリューションが用意されても、それだけでビジネスの継続が約束されるわけではない。高尾氏はこのように指摘する。「大事なことは、どこで踏みとどまるか、つまり“これだけは絶対に守り抜く”という部分を見極めるかだ。テープ持ち出しや複数のバックアップなど、ディザスタリカバリのインプリメンテーションの方法はさまざまだ。どこで踏みとどまるかを考えることによって、“レプリケーションだから安全だ”といった単純な議論から、我に返ることができるだろう」。

関連リンク
▼STORAGE NETWORKING WORLD/Tokyo 2002
▼NTTコミュニケーションズ

[ITmedia]