エンタープライズ:ニュース 2002/12/02 22:45:00 更新


イーマシーンズがツクモと提携、ハイバリューPCが日本上陸

イーマシーンズと九十九電機は12月2日、販売契約を締結し、国内販売を開始することを明らかにした。経営不振から昨年11月に身売りされたイーマシーンズだが、「ハイバリュー」を武器に米国リテール市場でも盛り返しているという。その基本戦略は、販管費を抑え、その分をカスタマーサポートに回すことだった。

 カリフォルニア州アーバインのイーマシーンズと九十九電機は12月2日、販売契約を締結し、12月20日から九十九電機および石丸電気の32店舗で販売を開始することを明らかにした。

 イーマシーンズは1998年11月に創業した、低価格が売り物の新興PCメーカー。iMacに似たデザインのWindows PCを発売し、裁判沙汰になったことでも知られる。2000年暮れから続いているPC市場の世界的な低迷は、同社にも大きな打撃を与え、2001年5月にナスダック市場での取引が停止された。同年11月には、さらに追い討ちをかけるように身売りも発表された。

 しかし、同社のコアの強みである「ハイバリュー」を武器に、米国のリテール市場で再び存在感を増し、現在ではシェアも20%を超えるまで盛り返している。

 この日の記者発表会には、2001年2月下旬に創業者のあとを受けて社長兼CEOに招かれたウェイン・イノウエ氏以下、同社の幹部がずらりと顔をそろえた。イノウエ氏のCEO就任は、ベストバイなどの上級幹部を務めた経験を買われたもので、2001年第4四半期からは黒字を回復し、その成果も着実に表れている。イノウエCEOは、「私の仕事は、ビジネスモデルをだれにでも分かるようにシンプルなものにすることだった」と振り返った。

 その原則は、販管費を抑え、製品のライフサイクルをきちんと管理し、優れた製品を計画し、ブランドを維持することだ。中でも同社ビジネスモデルの基礎ともいえる販管費の抑制は際立っている。

「(リテール市場で競合する)HP/コンパックやソニーの販管費率(売上高に対する販売管理費の比率)は20%以上だが、われわれは6.5%に抑えている」と話すのは、プロダクト管理とチャネル開発を担当するボブ・ダビッドソン上級副社長。彼もベストバイで上級管理職として働き、イノウエCEOから誘われたひとりだ。

「デルでさえ9.9%だ」と彼は胸を張る。

 イノウエCEOは、イーマシーンズの役割を「ブランドマネジャー」と位置付ける。業界標準のPCビジネスは、スペック面での差別化が難しく、製造も専門会社に委託されるケースが多い。そこで同社がとった新しい戦略は、販管費を抑え、その分をカスタマーサポートに回すことだった。これによって、同社は購入後のサービスの質を高め、顧客の満足度を勝ち取ることができたという。

2台目、3台目に最適

 イーマシーンズが日本上陸にあたり想定した顧客層は、決してPCの初心者ではない。ダビッドソン氏は、「技術にも精通している日本の消費者ならイーマシーンズのバリューを理解してくれる。2台目、3台目のマシンとして最適だ」と話す。

 彼が売れ筋として紹介した同社の「ハイパフォーマンスモデル」は、Celeron/2.0GHz、128MバイトDDR SDRAM、40GバイトHDD、CD-R/RW、モデム、10/100Mbpsイーサネット、キーボード、マウス、スピーカー、Windows XP Home Editionの構成で価格は5万9800円。Celeronのクロック数が1.8GHzになり、CD-R/RWがCD-ROMになるものの、Windows XP Professionalをプリインストールする「コーポレートモデル」(5万9800円)も特に日本市場に合わせて設定されている。これらを含む4モデルすべてに1年間の製品保証が付き、年中無休で6:00から24:00までサポートしてくれるコールセンターも開設される。

 九十九電機の鈴木淳一社長は、第1四半期で1万台という控えめな出荷台数の目標を掲げるが、それも立ち上がり時のサポートをしっかりと提供するためだという。イーマシーンズでは、ワールドワイドで3種類のカスタマーケアプログラムを実施しており、ユーザーに選択肢を用意している。日本市場にも「End-User Replaceable Parts Program」(故障個所の新しい部品を配送してもらい、ユーザー自身が交換する)、「Depot Repair」(無料の引取りと配送による修理)、および「Authorized Services Center」がそのまま持ち込まれ、九十九電機がその店頭にAuthorized Services Centerを開設することが決まっている。

 このほか、電子メールやライブチャットによるサポートも用意されており、こちらは期間の限定はなく、無償で応じてくれるという。

 なお、12月20日の発売に先立ち、九十九電機のネット通販や九十九電機および石丸電気の店頭では予約の受け付けを開始している。

 イーマシーンズでは、デスクトップ製品だけで初年度10万台の出荷を目指すほか、第1四半期から第2四半期にかけて液晶ディスプレイやノートブック製品を追加してラインを拡充していく計画だ。

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[浅井英二,ITmedia]