エンタープライズ:ニュース 2002/12/04 22:18:00 更新


IBMが強調するe-ビジネス・オンデマンドのインパクトは?

来日している米IBMのe-ビジネス・オンデマンド担当ゼネラルマネジャー、ラダウスキーバーガー氏が、同社が今後全社的に展開するe-ビジネス・オンデマンドについて説明を行った。

 日本アイ・ビー・エムは12月4日、プレス向けのブリーフィングを行い、来日している米IBMのe-ビジネス・オンデマンド担当ゼネラルマネジャー、アービン・ラダウスキーバーガー氏が、同社が今後全社的に展開するe-ビジネス・オンデマンドについて説明を行った。e-ビジネス・オンデマンドは、電気や水道と同じように、ユーザーが利用した分だけ料金を支払うユーティリティ方式を、ITインフラについても普及させようとするもの。いわゆるアウトソーシングやASPに近いとも言えるが、コンセプトは異なる。同社は、先日のPwCの買収も、e-ビジネス・オンデマンドを実現するための布石だとしている。

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米大統領情報技術諮問委員会の共同委員長も兼任するラダウスキーバーガー氏

 ラダウスキーバーガー氏はまた、e-ビジネス・オンデマンドと技術的に関連の深いグリッドコンピューティングやオートノミックコンピューティング(自律型コンピューティング)の責任者も兼任しているという。e-ビジネス・オンデマンド推進のために、Linuxやオープンソースへの同社の参画など、次世代のインターネットインフラの利用方法について指揮しているという。

「e-ビジネス・オンデマンドはユーザーにビジネスの選択肢を広げる」と話すラダウスキーバーガー氏。現状では企業システムは複雑化しており、管理や拡張に時間やコストを費やしているが、パートナーと連携してオンデマンドサービスとしてそれらを外に出すことで、ユーザー企業は自社のコアコンピタンスに経営資源を集中できるようになるという。また、中小規模の企業でも最新のアプリケーションを利用することもメリットになるとする。

「問題なのはスキルを持つ人的資源には限りがあること」(ラダウスキーバーガー氏)

 イメージとしては、ある企業がメールサーバをIBMのe-ビジネス・オンデマンドで稼働させるようなケースが考えられる。データはIDC(Internet Data Center)に格納されているため、利用料を支払っていればシステムを管理する必要がない。また、サポートユーザーの増減など、システムの変更リスクも軽減され、柔軟で安定したコスト構造に改善することができるという。

 また、災害時におけるシステム停止やセキュリティ問題などについても、オンデマンドサービスの提供者としてIBMがしっかりと対応するという。少なくとも、ユーザー企業からすれば、責任の所在を自社以外のプレーヤーに明確に委ねることができるわけだ。

 同氏は、e-ビジネスオンデマンドが提供する機能として、「ビジネスモデルの再構築」「データセンター」「運用環境」「ユーティリティサービス」を挙げている。そして、サービスを提供する側として、IBMを支えるのが、オートノミックコンピューティングであり、グリッドコンピューティング、オープン環境、仮想化技術だ。

 例えば、グリッドコンピューティングによって、分散しているシステムを大規模な仮想コンピュータとして利用できるようになれば、IBMは柔軟なサービス運用をすることができる。また、オートノミックコンピューティングによって、システムの自己修復、自己管理などが可能になれば、セキュリティの向上、ワークロード管理、ソフトウェアアップグレードなど、サービスを提供するに際して発生する作業量を抑え、低コスト化、人的ミスの減少を促進することができる。

 同社によれば、提供するシステムは、ハードウェアからミドルウェア、アプリケーション層まで、システム全体に及ぶという。

業界全体への影響は?

 e-ビジネス・オンデマンドは、展開する規模によれば、IT業界の現在の姿を変えてしまう可能性を持っている。つまり、ユーザーはシステム管理作業をしなくなるため、例えばサーバ管理ツールが必要無くなるといった状況も考えられる。何よりも、サーバやストレージといったITインフラは自分で買って使うという「常識」自体が崩れる可能性がある。

 逆に言えば、普段身近に使っているアプリケーションやハードウェアの複雑性がサービス提供者によって隠蔽され、詳細に操作することがなくなるため、ユーザーにとってはIT全般が「つまらないもの」になる可能性はある。

 それが、電気なり水道と同じ仕組みにするということにつながるのかもしれない。普段使っている電気が、水力発電でできたのか、風力発電でできたのかなどは、一般の人にとっては知る由もないのと同じことだ。

「どのベンダーも同じことを始める」

 ラダウスキーバーガー氏は「どこの企業も同じようなことを始める」と加える。ヒューレット・パッカードや富士通、サン・マイクロシステムズ、NEC、マイクロソフト、BEAシステムズ、オラクル、EDS、アクセンチュアなど、e-ビジネス・オンデマンドのようなことを始めそうな企業を同氏は並べた。

 市場で受け入れられれば、ISV(Internet Service Provider)なども参入することも当然考えられるため、「IBM以外のハードウェアは売れなくなるんじゃないか」といった心配は特に必要ないかもしれない。

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▼日本IBM

[怒賀新也,ITmedia]