エンタープライズ:ニュース 2003/01/21 22:22:00 更新


日本HP、第4世代Alphaプロセッサ「EV7」を搭載した新「AlphaServer」を発表

日本HPは、第4世代Alphaプロセッサ「21364(EV7)」を搭載し、アプリケーション性能が既存システムより50〜100%高いという、新AlphaServerシリーズを発表した。

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は1月21日、東京本社で記者発表会を開催し、第4世代のAlphaプロセッサ「Alpha21364(EV7)」を搭載した「hp AlphaServer」の新シリーズを発表した。CPU間接続に「スイッチレス・メッシュアーキテクチャ」と呼ぶ新技術を採用し、既存のAlphaServerと比較して、アプリケーション性能が50〜100%向上するという。日本HPでは、この新製品を「AlphaServerのロイヤルカスタマー向けの戦略商品」と位置づけ、主にライフサイエンスやテレコム分野向けに販売していく計画だ。

第4世代Alphaプロセッサ「21364(EV7)」

 新AlphaServerシリーズが採用したEV7は、現行の「Alpha21264(EV68)」コアに、1.75Mバイトの2次キャッシュメモリ、RDRAMメモリコントローラ、I/Oコントローラ、およびプロセッサ間通信コントローラ4つを1チップに統合したプロセッサ。これまでプロセッサ外部にあった各種コントローラを統合したことにより、メモリバンド幅が毎秒12.8Gバイトと既存のAlphaシステムの5〜32倍に高速化したほか、データ遅延(メモリレーテンシ)も75ナノ秒と飛躍的に改善した。EV7の現在の動作クロックは1150MHzで、1プロセッサあたりの※SPECfp2000結果は1482。16ウェイ構成システムでのSPECfp_rate2000結果は274を達成、これはIBMのハイエンドUNIXサーバ「pSeries 690」(POWER4 16ウェイ構成)の2倍の性能に当たるという。また、プロセッサ周辺の部品点数が減ることで、MTBFが15〜30%向上するなど信頼性も上がったとしている。

※参考:Pentium 4/3.06GHzのSPECfp2000値は1077、Itanium 2/1GHzは1356。 Alpha21364.jpg
「Alpha21364」チップ。0.18マイクロメートルプロセスで製造されている。中央下の四角がEV68コアにあたる

スイッチレス・メッシュアーキテクチャ

 コンパックコンピュータ時代の2000年5月に発表した「Alpha21262A(EV67)」を搭載する「AlphaServer GS320(Wildfire)」は、プロセッサとメモリモジュールを階層型クロスバースイッチで接続するシステムアーキテクチャだった。これに対して今回発表した新AlphaServerでは、EV7がプロセッサ間通信(バンド幅は毎秒6.4Gバイト)を行うルータモジュール4つを内蔵し、最大4基の隣接するプロセッサと独立して通信できることから、プロセッサは2次元平面上に格子状に配置され、隣接するプロセッサ同士が互いに接続するという「スイッチレス・メッシュアーキテクチャ」を採用した。EV7はメモリコントローラとI/Oコントローラも内蔵するため、メインメモリとI/Oサブシステムは各プロセッサに直接接続される仕組み。

 4ウェイ以上のシステムでは、2次元トーラス(円環)の外周面にプロセッサを配置するという接続トポロジとなり、任意のプロセッサ間の接続ルートが複数存在する形になる。各プロセッサが内蔵するルータモジュールはダイナミックルーティング機能を備えており、常に最適な経路でプロセッサおよびプロセッサに接続されるメインメモリへのアクセスが行えるという。プロセッサ数が増えても処理性能はリニアに増加するとしている。

新AlphaServerシリーズ

 今回発表したAlphaServerは、EV7を2〜4基搭載可能な「hp AlphaServer ES47」、2〜8基搭載可能な「hp AlphaServer ES80」、2〜16基搭載可能な「hp AlphaServer GS1280」の3シリーズ。AlphaServer ES47およびAlphaServer GS1280は1月下旬、AlphaServer ES80は3月下旬に出荷開始の予定。AlphaServer GS1280においては、2003年中にEV7を64基搭載可能になるとしている。システムの価格は、2Gバイトメモリ、36GバイトHDDを搭載した2ウェイのAlphaServer GS1280が「Tru64 UNIX V5.1B」無制限ユーザライセンス込みで6321万9000円からとなっている。

AlphaServerGS1280.jpg
「hp AlphaServer GS1280」

 このほか、高速なインターコネクトを使って、最大2048基のEV7システムを構成できる「hp AlphaServer SC1280」も2003年中に予定している。

 HPはコンパックとの合併時に、EV7とその後継の「EV79」(2004年リリース予定)の開発継続をアナウンスするとともに、AlphaServerの2007年までの販売継続と2011年までのサポートをアナウンスしているが、今回の新AlphaServerシリーズ発表は、その約束を実行していることを示すものになる。将来はItaniumプロセッサファミリへ移行することになるが、少なくとも現時点で最速のHPTC(High Performance Technical Computing)サーバとして、高速演算処理やデータベース処理性能が要求されるライフサイエンスやテレコミュニケーション分野向けに販売していく。

 新AlphaServerシリーズは、2002年夏から10社ほどでフィールドテストを行っているが、非常によい評価を得ているという。具体的な数字は明らかにしなかったが、日本で2002年比20〜30%増(台数ベース)の販売を目指すとしている。

関連リンク
▼日本HP
▼新AlphaServerのページ
▼Alphaプロセッサのページ
▼AlphaServer GS1280と既存のAlphaServer GS320、IBM p690などとの性能比較

[佐々木千之,ITmedia]