エンタープライズ:ニュース 2003/02/13 22:50:00 更新


Exchange Server 2003とOutlook 11で、電子メール環境がさらに便利なものになる

一日目午前中の基調講演を終え、昼食をはさんで始まった午後最初のセッションから。次期Exchange Serverとなる“Exchange Server 2003”詳解として、マイクロソフト製品マーケティング本部 エンタープライズサーバー製品部 コラボレーションサーバーグループ マネージャの中川 哲氏が壇上に立った。

 はじめにExchange Server 2003のクライアントアプリケーションとなるOutlook 11の紹介が行われた。現在はまだ開発コード名で、これが夏以降に発売されるOffice 11に含まれる製品の正式名称ではない。

中川 哲氏

製品マーケティング本部 エンタープライズサーバー製品部 コラボレーションサーバーグループ マネージャの中川 哲氏


 さておき、インフォメーション・ワーカー、すなわちコンピュータを使って仕事をしている人々の生産性を向上させるツールとして、新バージョンのOutlookはどのような機能を装備したのだろうか。

 一見しただけで、受信トレイ画面のユーザーインタフェースが変更された点に気づく。

Outlook 11のユーザーインタフェース

改良されたOutlook 11のユーザーインタフェース


 従来から大きく異なるのは、右側に大きく表示されるようになったプレビューペインだ。縦型に表示されることで、可読性の向上が図られている。もちろん従来どおりの表示も可能で、差出人ごとあるいはテーマによるスレッド表示も行える。

 なお、Exchange Server 2003のクライアントアプリケーションとしては従来バージョンのOutlookも利用できるが、Outlook 11がベストクライアントとなるという(中川氏)。その理由が次に明かされた。

 それは、Outlook 11がバックエンドであるExchange Server 2003とどのような接続をするのかという点である。Outlook 11はExchange Server 2003との接続状況を監視しており、ネットワーク帯域の増減に合わせて自動的に動作モードを切り替える機能を備えている。中川氏はネットワークケーブルを引き抜いて擬似的にネットワークトラブルの状態を作り出してデモンストレーションを行った。そのときOutlook 11は自動的に「キャッシュモード」へと移行し、あらかじめローカルフォルダに持っておいたデータを使ってユーザーは作業を続けることができる。このデータは、通常の接続時にバックグラウンドで同期をかけていたもので、再びネットワーク接続が通常に戻れば、その差分を使ってデータを更新する。この機能はワイヤレス接続にも適しており、会場では実際に無線LANの電波状況が悪くなったというシナリオに置き換えてデモンストレーションが行われた。

 このキャッシュモードのメリットは、その差分のみをサーバ側へリモートプロシージャコールすればよいため、ラウンドトリップの削減につながるという。また中川氏によれば、MAPIのデータは圧縮してアクセスされるため、社内テストにおいて30%程度トラフィックのデータ量を削減することができたという。

 このように、キャッシュモードをはじめとしてOutlook 11にはネットワーク負荷を軽減するための新しい技術も導入されている。それでいて、オフラインアドレス帳を利用して名前の解決ができるなど、ユーザービリティを損ねていないことが特筆できる。なおキャッシュモードの注意事項として、アップグレードインストール時にOutlook 2002でオフラインフォルダの設定をしておかないと、デフォルトではこの機能が働かないので要注意である。

 モバイルアクセスの面でもOutlook 11の強化点は多い。まず、RPC over httpを用いることでhttps経由でのサーバアクセスが可能になった。これにより、敷居の高いVPN接続を必要としなくなったため、より手軽にExchangeサーバへのアクセスができる。

 また、Webブラウザを利用してExchangeサーバへアクセスできるOutlook Web Access(OWA)も強化された。Outlook 11と同様のインタフェイス画面となり、パブリックフォルダなどは選択後、別画面表示されるようになった。「仕事」や仕訳ルールの適用など、新しい機能も追加されている。さらにS/MIMEへの対応や、ローカルキャッシュをログアウトの時点で破棄するなど、セキュアなメールの送受信という点にも配慮される。デモでは、Netscape 7.0を使ったアクセスも問題なく機能した。ただしこの場合、ルックスは以前のバージョンと同様のものとなる。

 企業のTCOを削減するためのITインフラという面からExchange Server 2003を見た場合、そのメリットはどのようなものだろうか。まず、ホストできるユーザー数の拡大である。マイクロソフト本社ではテスト環境としてすでにExchange Server 2003が稼動しており、1サーバあたり平均5000ユーザーを扱っているという。これは、二世代前のバージョンであるExchange 5.5稼動時の1000ユーザー/サーバという数字の5倍に相当する。さらに信頼性の向上を目指し、Windows Server 2003が持つVolume Shadow Copy Service(VSS)をサポート。これによって、瞬時にデータのスナップショットコピーが行え、またさまざまなサードパーティ製のVSS対応ツールによるバックアップが可能となった。デモを交えながら解説する中川氏はパフォーマンスの向上にも言及し、仮想メモリブロックサイズが小さくなったことでフラグメンテーションが減少し、ディスクアクセス性が向上したと述べた。

 アンチスパムおよびアンチウイルス機能にも触れられたが、前者はまだ米国のみの機能で国内での実装は決定していないという。概要だけ紹介しておくと、リアルタイムブラックリスト、リレースパムサービス、スパムビーコンブロッキングといった機能が盛り込まれているとのこと。

 最後にアップグレードに関しての注意が述べられた。Exchange 5.5/2000とExchange Server 2003は共存が可能。またインプレースアップグレードもできるが、その際には稼働可能環境の違いから、はじめにExchange 2000を2003にアップグレード、その後OSをWindows Server 2003へという順序を必ず守らなければならない。これは、Exchange 2000がWindows Server 2003上では稼動しないためである。

関連リンク
▼Microsoft Enterprise Deployment Conference 2003 レポート
▼Windows .NETチャンネル

[柿沼雄一郎,ITmedia]