エンタープライズ:ニュース 2003/02/18 22:06:00 更新


Next Gen Mailで対Exchange戦も有利に進めたい日本IBM

日本IBMのロータス事業部は、2003年の製品戦略を明らかにし、「Next Gen」戦略についても説明した。同社では、第1弾であるNext Gen Mailは、コラボレーションのすそ野を拡大したい大企業だけでなく、Microsoft Exchangeがライバルとなる小規模事業者もターゲットしたいという。

 日本アイ・ビー・エムは2月18日、2003年の同社ソフトウェア戦略に関するプレスブリーフィングを行い、併せてコラボレーション機能をJ2EEベースで提供していくというロータス事業部の新しい「Next Gen」戦略も明らかにした。

 IBMソフトウェアグループLotus部門は、昨年のLotusphereカンファレンスで、J2EEによるコンポーネント化を進めることを明らかにし、さらに昨年5月、サンフランシスコの「IBM developerWorks Live!」でアル・ゾラー前GMがNext Gen戦略として明確に打ち出した。JavaやXMLをはじめとするオープンスタンダードベースでLotus製品のさまざまなコラボレーション機能を提供し、顧客やパートナーらが、アプリケーションに組み込めるようにしようというものだ。

 ロータス事業部長を務める神戸利文氏は、「ロータスが得意としてきたコラボレーションの領域をJ2EEにも拡大する」とNext Gen戦略を説明する。オープンスタンダードのJ2EEは多くの選択肢が提供され、また、スケーラビリティにおいても一日の長がある。顧客からすれば、TCOの削減という大きなメリットが得られる。

 Next Gen製品の第1弾として1月の「Lotusphere 2003 Orlando」で発表された「Next Gen Mail」は、基本的な電子メール機能を低価格で提供するもの。Notes/Dominoが培ってきたセキュリティ機能や使い勝手の良さはそのまま受け継ぎ、WebSphereアプリケーションサーバ上でコンポーネントを走らせ、メッセージはDB2リレーショナルデータベースに格納するもので、Tivoliのシングルサインオン機能も利用する。高いパフォーマンスとスケーラビリティを提供すると同時に、ミドルウェア4ブランドの再編・強化を推進するIBMにとっては「ショーケース」ともいえる。

 製品版は第2四半期にリリースされるNext Gen Mailの価格は未定ながら、神戸氏は「コストは(Notes/Dominoの)1/10程度に抑えられる」と話す。

 フル機能のNotes/DominoやSametimeが経営幹部やマネジャーを対象にしているのに対し、基本的な電子メール機能に絞り込まれたNext Gen Mailは、製造業や流通業のデスクレスワーカーを対象にしている。IBMとしては、Notes/Domino 6、Domino 6 + iNotes、そしてNext Gen Mailをそれぞれ明確にターゲットを区別しており、Next Gen MailによってNotes/Dominoがリプレースされるものではないとしている。

 実際、この日のブリーフィングでも、日本の都銀10行すべてがNotes/Dominoユーザーになったほか、中央省庁でのシェアも71.4%へと増加しているなど、その好調ぶりがアピールされた。神戸氏によれば、「セキュリティ」や「ウイルス対策」が評価された結果だという。

 神戸氏は、Next Gen Mailの特徴としても「セキュリティ」を一番に指摘した。標準で組み込まれた暗号化や認証の機能は、大企業にとって不可欠なものだ。

 米国のLotusphereでは、Lotus部門のGMに就任したばかりのアンブジュ・ゴヤール氏が、Notes/Domino 6の環境をさらに拡張するため、Next Gen Mailを採用するダイムラー・クライスラーの例を紹介した。彼らは、価格の安いNext Gen Mailを製造現場に配備し、TCOを節約しながら、コラボレーションのすそ野拡大を図ろうとしているという。

 ただ、日本IBMでは、このNext Gen Mailを「Microsoft Exchange対抗」と位置付け、より規模の大きな電子メール市場でも優位に戦いを進めたい考えもある。中堅企業向けには、電子メール、カレンダー、タスク管理を利用できるiNotes単体の導入しやすい価格のパッケージを3月に投入するという。2003年のロータス製品戦略は、大企業から小規模事業者まですべてのカテゴリーで攻勢に出るものになりそうだ。

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[浅井英二,ITmedia]