エンタープライズ:ケーススタディ 2003/03/04 19:49:00 更新


基本選択肢としてのERP(1)〜Movexと独自の導入技法でユーザーを増やすインテンシア

スウェーデンのERPベンダーのインテンシア。柴田一朗社長は、ERPを構築する上でのキーワードを「全体最適」と強調する。8年にわたり同業界に関わる柴田氏に、パッケージ導入事情について聞いた。

 スウェーデンのERPベンダーで、ファッションや食品など業種別のソリューションを展開してユーザーを増やすインテンシア。ライセンス売上高で欧州2位、世界で5位にランクインする。同社日本法人の社長を務める柴田一朗氏は、ERPを構築する上でのキーワードを「全体最適」と強調する。「部分最適を集合」させるのではなく、全社的な視点からデータの流れを管理することはERPの基本理念だ。同社社長として8年にわたりERP業界に関わっている柴田氏に、中堅から大企業の基幹システムを中心に、ERPやSCM(Supply Chain Management)といったパッケージ導入事情について聞いた。

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「ERP導入でもはや失敗することはない。問題は大きく成功できるかどうかだ」と話す柴田社長

 柴田氏は「(ビジネスの)ポテンシャルは例年になくいい」と話す。2002年はIT投資の低迷により、ビジネス全体に下押し圧力があったが、ニーズ自体は根強く、今年になって状況は好転しているようだ。

 ERPパッケージは、SCMやCRMシステムに拡張することにより、導入企業にはさまざまメリットがある。

 例えば、企業が顧客から注文を受ける場合。ここで、通常取り引きしているメイン工場の在庫だけを参照して、顧客に納期回答するようなシステムでは、たとえ別の工場に余剰在庫が存在していても、それを認識できず、メイン工場が必要な数の製品を生産するまで待たなくてはならない。これでは、納品までのリードタイムが長くなり、顧客への回答納期が遅くなる。さらに、会社全体としては、各工場が過剰在庫を抱える事態にもつながり、全体最適とはほど遠い状況になる。

 そこで、Movexなどのパッケージアプリケーションを導入することで、各工場が持つすべての在庫の状態をリアルタイムに把握できるようにする。結果として、顧客からの注文に対して、メイン工場の在庫数が足りない場合には、次に優先度の高い工場から製品を取り寄せるといった解決策を打つこともできる。これにより、顧客の満足する納期回答を行えるだけでなく、抱える在庫も適正な水準に保つことができる。

 特に、「完成品在庫は資材や部品在庫と異なり、返品もきかず、自社で抱えればやがては陳腐化していく」という。さらには、企業財務を圧迫し始めるため、このような柔軟な製品供給体制を敷くことは重要になってくる。

 ERPパッケージの導入では、「日本の中堅企業はまだまだわがまま」だと柴田氏は話す。欧米企業では、ベストプラクティスとしてのパッケージに手を加えないで導入するべきというERPの考え方が定着しているが、日本企業ではまだ自社開発かERPかというところで迷うことが多いという。同氏は、あと1、2年後には、例外的なケースを除いてパッケージ製品を利用することが前提になり、自社開発という選択肢自体がなくなってくるとしている。

 ERPを特に中堅企業に導入する際に問題になるのは、なんと言ってもコスト。よく知られるパッケージのほとんどは、大企業向けに開発された場合が多いため、ライセンス費用が高い。さらに、コンサルタントへの報酬支払いが導入コストを最も圧迫するため、中堅企業では特に、「短期間導入かつ低コスト」が条件となる。当然、導入後の運用や仕様変更に対応するためにかかる費用も無視できない。

 こうした事情を考慮すると、パッケージ導入を成功させるためには、しっかりとした導入技法が確立されていることが大事になる。インテンシアは独自の導入技法「Implex」によって、Movexシステムを短期間で構築できることが特徴となっている。Implexは、いわば家を建てる場合のコンセプトに当たる。つまり、プロジェクト定義、設計、設定、インプリメント、カットオーバーというプロジェクトの始めから終わりまで、作業の実行や管理などを定義する標準だ。

「Implexは構造が分かりやすく、有効に利用されている。ほかのベンダーも同じようなツールを持っているが、あまり使われないケースが多い。」(柴田社長)

100%JavaのMovexはオブジェクト指向の基幹システム

 Movexのもう1つの特徴は、100%Javaで構築されていること。そのため、Movexもクラスによる部品化といったオブジェクト指向のメリットが生かされている。

 柴田氏は、「Javaでできていることにより、Xというコンポーネントを作る場合も、AとCのコンポーネントをくっつけることで実現できる」と話す。Javaで書かれた基幹システムはMovex以外にはあまり見当たらないという。

 同社は現在、食品・飲料、ファッション・アパレル、保守サービス・レンタル、鉄鋼、製紙、航空、自動車部品、流通の8つの分野で特化したモジュールを展開している。

[怒賀新也,ITmedia]