エンタープライズ:ニュース 2003/03/26 23:40:00 更新


ディスクの使い勝手とテープの低コストを足して二で割る「ATA対応CLARiX」

イーエムシージャパンが3月26日に発表した「ATA対応CLARiX」は、ディスクとテープという2タイプのストレージの間にあったギャップを埋め、コストパフォーマンスに優れたバックアップやアーカイビングを実現するという。

 イーエムシージャパン(EMCジャパン)は3月26日、ミッドレンジ向けストレージ製品「CLARiX」で、従来より搭載してきたファイバチャネルベースのディスクだけでなく、比較的安価なATAディスクも搭載できるようにした「ATA対応CLARiX」を発表した。

 今さら言うまでもないことだが、企業内外を流通するデータの量は指数関数的に増加しており、それにつれて、ストレージ管理に要する手間や時間も膨らんでいる。こうした中でストレージ管理者は、一種の「究極の選択」を迫られるようになった。すなわち、パフォーマンスや信頼性は高いがその分コストも高くつく「ディスク」か、あるいはローコストだがRAID構成などは採り難く、パフォーマンスや管理作業の面でやや難の残る「テープ」か、だ。

 このたびEMCジャパンが発表したATA対応CLARiXは、この2種類のストレージの間にあったギャップを埋めるものという位置付けだ。つまり、そこそこの、企業IT予算が許す範囲内のコストで導入でき、しかもまずまずのパフォーマンスとサービスレベルを実現するというわけである。

 同社によると、ATA対応CLARiXでの1Mバイト当たりのコストは、テープに比べれば1.4〜1.7倍、従来のディスクに比べると約3分の1。それでいてパフォーマンスは、頻繁にアクセスが起きる環境ではもの足りないながらも、バックアップ/リストアや、参照用データのアーカイビングといった用途には十分なレベルを達成するという。

 ストレージ管理においてはバックアップを取ることも重要だが、それ以上にクリティカルな作業が障害発生時のリストアだ。同社によると、テープを用いた場合、このステップで予想以上に時間がかかったり、トラブルに泣かされる顧客があったという。これに対しATA対応CLARiXを利用すれば、「低コストで高速なリストアを実現できる」(同社マーケティング本部本部長代理、宮治彦氏)。その上、従来はテープを用いて、完全にアーカイブとして保存しておくしかなかったデータにも、比較的速やかにアクセスできるようになる。

 しかもその使い勝手はディスクのものだし、EMCジャパンならびにベリタス・ソフトウェアやコンピュータ・アソシエイツ、レガートシステムズなどが提供する主要なバックアップソフトウェアの動作が確認されているという。

 ディスクとテープという2つの選択肢の間を埋めることで、よりよいコストパフォーマンスとデータの活用を実現するというアプローチは、既に他のストレージベンダーも打ち出している。ただ、「CLARiXという1つのストレージプラットフォーム上で、既存のファイバチャネルのディスクとATAディスクを混在できるのはATA対応CLARiXだけ」(同社マーケティング本部、プログラム・マネージャの雨堤政昭氏)。しかも、システムをコントロールするストレージプロセッサからは、ファイバチャネルディスクもATAディスクも同じように見え、TimeFinderをはじめとするストレージ管理ソフト群を透過的に利用できる点も特徴という。

 ATA対応CLARiXが搭載するのは、250Gバイト、5400回転のATAディスク。価格は、CX400をプラットフォームとして10TBの容量を搭載した場合で3000万円からで、同日より順次、代理店を通じて出荷が開始される。

 なおEMCジャパンは同時に、複数のストレージ機器の間で、ホストを介さずにデータの移動・コピーを行えるようにするソフトウェア「SAN Copy」を発表している。対応するのは同社のCLARiXならびにSymmetrix、ヒューレット・パッカードの「HSG80」だ。

 宮氏は、ATA対応CLARiXとSAN Copyを組み合わせることによって、「顧客のニーズに合わせて柔軟に、適材適所でEMCのプラットフォームを使えるようになる」と述べ、ひいては、アプリケーションの要求やサービスレベルに応え得る、データのライフサイクル管理を実現するソリューションにつながるとした。

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[高橋睦美,ITmedia]