エンタープライズ:ニュース 2003/04/30 17:07:00 更新


Keynote:「テクノロジはビジネスプロセス変革の推進力」とチェンバースCEO

今年もまた、シスコシステムズ社長兼CEOのジョン・チェンバース氏がNetWorld+Interop LasVegasの基調講演に登場した。同氏はITこそが企業の生産性を向上させ、それがGDP成長につながるという楽観的な見通しを語った。

 NetWorld+Interop LasVegas展示会の開幕を飾ったのは、今年も、シスコシステムズ社長兼CEOのジョン・チェンバース氏だった。同氏は、4月29日に行われた基調講演の中で、「Networked Virtual Organization(NVO)」というおなじみのコンセプトに触れながら、ITへの投資こそが企業の生産性向上を実現するという楽観的な見方を示した。

 もちろんさすがの同氏も、いったいいつ景気が回復し、企業による投資が増加に転じるのかという問いに対する答えは持ち合わせていない。しかし、生産性の向上が実現されれば、それは必ずや投資の回復につながると同氏は主張する。

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「ITテクノロジが生産性向上を実現する。それについては楽観的だ」とチェンバース氏

「生産性の向上には、ビジネスプロセスの変革が必要だ。ビジネスプロセス変革の推進力となるのはテクノロジであり、Webをベースとしたビジネス、Webベースのアプリケーションである。そして生産性の向上こそが、GDP成長の鍵である」(チェンバース氏)。

 チェンバース氏によると、米国大手企業のCEOやCIOも同様の考えを持っているという。先日行われたフォーチュン500企業の会合で、同氏は、多くのCEOが、ITこそが事業成功の鍵であり、組織の変革を実現するものだと考えていることを知った。そしてこのことが、同氏の楽観的な見方の根拠にもなっている。

 ちなみに、IT技術を活用して生産性を向上させた例として取り上げられたのは、やはりシスコ自身だった。チェンバース氏によると、この数年間、同社が特に力を入れてきた作業は「リソースの再編」だったといい、この結果、市場や技術の変化に迅速に対応できるようになったほか、今後もより多くの成果が期待できるという。

NVOを支える新しいトレンド

 チェンバース氏はことあるごとに、今後も生き残っていく企業の姿とは、ネットワークを活用して迅速な意思決定を実現し、安定した競争力を維持し、それでいながら顧客にはガラス張りの組織である「NVO」に他ならないと主張してきた。今回の基調講演でもやはり、その主張は繰り返された。

 ここでチェンバース氏が注意すべきとしたのが、「アウトソース」と「アウトタスク」の違いである。NVOというコンセプトには、企業は中核的でミッションクリティカルな事業に注力すべきであり、本質的ではない業務は外部に任せるべきであるという考え方が含まれる。しかし、関連性の高い業務については、あくまで自社内に戦略とコントロールを保持した上で、パートナーに委託する「アウトタスク」を選択すべきと同氏は述べている。

 同氏はさらに、次の新しいトレンドについて触れた。同氏は2000年より、ネットワーク化されたネットワーク、つまり「ネットワーク・オブ・ネットワーク」というコンセプトを提唱してきた。その次の流れこそ、「インテリジェント・インフォメーション・ネットワーク」だという。

「インテリジェント・インフォメーション・ネットワークとは、パフォーマンスとインテリジェンス、それにインフラという3つのカテゴリにおける革新からなる。つまり、より速く、より洗練され、それでいて耐久性のあるネットワークということだ」(チェンバース氏)。しかも、データと音声の統合をカバーし、新しいアプリケーションに柔軟に対応できる性質を持つ。

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文書の共有やユニファイドメッセージング、無線LANなどの技術を活用して、建設会社の業務の効率化を実現する、という想定でのデモンストレーション

 チェンバース氏によれば、インテリジェント・インフォメーション・ネットワークは生産性を向上させ、ビジネスプロセスを実現していく――つまりNVOを実現するものだという。そして、「サプライヤーやパートナー、従業員、顧客をすべて巻き込んだNVOこそが、組織を完全に変革していく」(同氏)。

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関連リンク
▼Networld+Interop LasVegas 2003
▼シスコシステムズ

[高橋睦美,ITmedia]