エンタープライズ:インタビュー 2003/05/28 21:13:00 更新


Interview:「エンドユーザーにパーベイシブと分からないのが重要」とシコラCEO

エンベディッドDB「Pervasive.SQL」を開発する米パーベイシブ。ハイエンド指向のエンタープライズDBに対し、10〜20人規模のSME市場で優位性を発揮している。同社のシコラCEOにエンベディッドDB市場とPervasive.SQLの強みを聞いた。

 エンベディッドデータベース(DB)「Pervasive.SQL」を開発する米パーベイシブ・ソフトウエア(パーベイシブ)のデビッド・シコラ社長兼CEOが来日した。Pervasive.SQLは会計ソフトの組み込みDBなどに全世界で採用されている。ハイエンド指向のエンタープライズDBに対し、専門のアドミニストレータを必要とせずアプリケーションに組み込まれ裏側で動作する、Pervasive.SQLは、すでに500万サーバシートと利用が進む。

 シコラCEOは、3年前にマイクロソフトが買収した会計ソフトのグレートプレインズもいまだにPervasive.SQLを採用していると語り、製品に対する自信を感じさせた。シコラCEOにエンベディッドDB市場とPervasive.SQLの強みを聞いた。

シコラ氏

2002年7月に米パーベイシブ社長兼CEOに就任したシコラ氏。合併と買収による企業拡大などに優れた実績を持つという


ZDNET パーベイシブについて教えてください

シコラ 私たちの会社は、エンベディッドのデータベース(DB)「Pervasive.SQL」を提供する企業です。ソフトウェア企業が私たちのDB製品上にアプリケーションを載せて出荷される形になります。当社の製品は市場に出てから20年が経っており、世界中で販売されています。昨年は4000万ドルの収益を上げました。ヘルスケア部門から金融、会計、テレコムなど幅広い顧客がいます。日本でのパートナーはエージテックです。

1987〜94年までの間、私たちはノベルの一部でもありました。ノベルでは「NetWare」のデータベース側を担当していました。

当社の製品はPervasive.SQLの1製品だけでしたが、6カ月ほど前に「DataExchange」というDBの同期化とレプリケーション用の製品を出しました。DBのレプリケーションのためのミドルウェア階層にあたる製品です。私たちは世界中に1万以上の顧客がおり、そういった顧客が私たちのDB上でアプリケーションを構築していくわけですから、これからはDBを補足するためのプロダクトラインを拡大したいと考えています。DBと一緒になってシナジー効果を上げていきます。

ZDNET 今回はDataExchangeのプロモーションのために来日したのですか?

シコラ そうではありません。今回は、日本の顧客に直接会うためと、エージテックとの間のビジネスのために来日しました。

ZDNET DataExchangeの日本市場投入予定はあるのですか?

シコラ まだ正確な予定は設定していません。2003年度中だと思いますが、秋に入りこむぐらいでしょうか。

ZDNET エンベディッドDBとはどのように捉えたらよいでしょう?

シコラ データベースには、エンタープライズDB市場とエンベディッドDB市場があります、この2つの間には一線が引かれます。つまり、エンタープライズデータベース市場とエンベディッドデータベース市場に求められるものは、大きく違うということです。

エンタープライズ市場の顧客はDBそのものを買うのに対し、エンベディッド市場の顧客はアプリケーションを買うといった違いがあります。エンベディッドDBの利点といえるのは、顧客サイドにまったくITインフラがなくてよいのです。

パーベイシブは、エンドユーザー数10〜20人のSMEの市場で成功しています。すでに500万サーバシートで展開されています。例えば、会計のアプリケーションのティンバーラインソフトウェアを顧客としていますが、ティンバーラインの顧客が3万ですから、この数字は大きなものだということが想像できると思います。

ZDNET 競合製品は何に当たるのでしょう?

シコラ エンベディッド市場というのは、非常に細分化されているといえます。ひとつにはマイクロソフトのMS SQL(Microsoft SQL Server)がありますが、そのほかには小さなプレイヤーがたくさん存在している状況です。しかし、DBのほとんどはエンタープライズ市場にあたります。サイベースなども競合です。

ここでひとついい例を挙げましょう。マイクロソフトが3年前に買収したグレートプレインズ(会計ソフト企業)がマイクロソフト製品ではなく、まだ私たちのDBを利用しています。3年も経っているのにです。私たちのエンベディッドDBが、うまくいっている好例といえるでしょう。

グレートプレインズの顧客は3000以上いますが、その顧客が私たちの製品に満足しているのです。第1にTCOが低く、アドミニストレータが不要だからです。また、使用のためのトレーニングもいりません。それでもなお、パフォーマンスと信頼性が高いといったところがメリットになっています。

10〜20人の企業では、データベースアドミニストレータの予算などとれません。OracleにしろMS SQLにしろアプリケーションを動かすためには、まずDBをインストールしなければなりません。パーベイシブの場合は、アプリケーションと一緒にインストールできるキットを用意しています。エンドユーザーはDBをインストールしたことも知らない、DBがパーベイシブとも知らないのです。それがすごく重要です。

マイクロソフトのDBの認定アドミニストレータというのが何万人といますよね。もしデータベースの運用が簡単だったらそんな認定などいらないわけです。

ZDNET 十数人規模であれば、「Excel」や「Access」で十分ということはないですか?

シコラ それはありません(笑)。たとえば、バックエンドにPervasive.SQLを使って、フロントをAccessということはあり得ると思います。ただ、マイクロソフト製品であればAccess以上の信頼性などを求めたい場合、次はMS SQLを買わなければなりません。価格的にもこのギャップは非常に大きなものです。また、サイベースにしても「SQL Anywhere」と「Enterprise」のギャップは非常に大きいといえます。

ZDNET 組み込みということはパーベイシブの顧客はISVなどになるのですね?

シコラ そうです。ソフトウェア会社が当社の製品をアプリケーションに組み込んで販売するわけです。ですからエンドユーザーに直接かかわることはありません。

ZDNET デベロッパーがPervasive.SQLを組み込みやすくするために、どのような工夫をしていますか?

シコラ デベロッパーは私たちにとって顧客です。彼らには常にオープンな環境の中でデータベースを利用してもらうために、一連のAPIを提供しています。また、SDKの中にインストール用のキットを提供しています。先ほどもお話しましたが、これによりエンドユーザーがDBをまったくインビジブルな状態で利用できるようになります。

もうひとつ。テキサス州オースティンに「パフォーマンスラボ」を持っており、顧客に公開しております。そこで、当社のエンジニアと一緒にパフォーマンスを上げる努力をすることが可能です。アプリケーションとのインタフェースの部分を最適化する努力をしています。顧客となるデベロッパーも、それぞれに何万という数のパフォーマンスを気にする顧客を抱えているわけですから、そういった意味で最大限の助けを提供しています。

ZDNET MySQLなどオープンソースのDBについてはどのようにお考えですか?

シコラ ほとんどの場合、社内アプリケーション用に使うもので、リセールのために使うものではないのだと思います。もしソフトウェアに組み込んで再販することになれば、データベースの技術に対してだけでなく、販売先の会社に対する責任も生じてきます。オープンソースというと、何かソフトウェアを変えるような大きなものと捕らえられがちですが、実際にはひとつのビジネスモデルと考えたほうがいいと思います。

また、オープンソースはまったく知識がない人が使えるものではないのです。パーベイシブは知識のない人のために良くしてきているものなので、そこはずいぶん違うと思います。

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[聞き手:堀 哲也,ITmedia]