エンタープライズ:ニュース 2003/07/03 09:46:00 更新


N+Iを支えるShowNet、そのShowNetを支えるのは……

NetWorld+Interopの最大の特徴の1つが、展示会場全体をカバーする「ShowNet」だ。10GbEをはじめとする最新の技術を活用したこのネットワークは、綿密な設計とさまざまなノウハウの積み重ねによって実現されている。

 NetWorld+Interopの最大の特徴の1つが、展示会場全体をカバーする「ShowNet」だ。この10年間、常に一歩先の技術を取り込みながら、出展各社にコネクティビティを提供してきた、デモンストレーションとインフラを兼ねたネットワークである。

 今年のShowNetだが、まず幕張メッセ内のバックボーンは10ギガビットイーサネット(GbE)で構築され、完全に、IPv4とIPv6のデュアルスタックネットワークになっている。コアを構成する機器はマルチベンダー接続を意識した設計で、さまざまな組み合わせが実現された。またインターネットへの接続回線(エクスターナル)には10Gbpsが2本用意されている。昨年はOC-192での10Gbpsだったが、今年は10GbEでの接続だ。

 もちろん、電源なども含め、ネットワークの主要な部分はフルに二重化されている。仮にトラブルが発生したとしても、出展社はそうと気づかない設計だ。

NOC

正面入り口を入るとすぐ目に入る、ShowNetのコア部分を収容したラック

ウラ側

その裏側。クーラーなどを用いて温度、空調に気を配っている

 ここまでは去年とほぼ同様なのだが、今年はルーティングに工夫を凝らしている。デフォルトルートを流す代わりに、コアの機器ではBGP-4を、それもフルルートを受けて動的にルーティングを行い、経路を決定することで、ホップ数を減らした。このため、経路情報を管理、変更し、複数のルータに配布するためのルーティングサーバ(ルートリフレクタ)「FITELnet-R10」も組み込んでいる。

 また会場の出展各社には、フロア内5カ所に設置されたPOD(Pedestal Operation Domain:各種機器を収めたラック群)経由でドロップ(接続するためのケーブル)が提供される。このドロップだが、10/100BASE-TXは当然として、1000BASE-Tや1000BASE-SXというギガビットイーサネットに加え、10GbE(10GBASE-LR)が加わった。実際、4社が10GbEを自社ブースの接続に利用しているという。

POD

ここから出展各社にネットワークがつながっている。POD2にはIDS(上部)も収容された

 PODは出展社だけでなく、各ShowCaseにもコネクティビティを提供。これを活用し、例えばIPv6 ShowCaseではIPv6マルチキャストやIS-IS接続が、Security ShowCaseではマルチベンダー環境での攻撃および防御のデモンストレーションが行われている。

 ちなみにNOC前のラック群や各PODは視覚的にも工夫が凝らされ、見ていて楽しい。また目立たないが、今年も温度や電源をはじめとするラック内の環境をリモートから監視できる松下電工の「ネットワーク対応ラック管理システム」を導入し、熱暴走などによるトラブルに備えるほか、ルートレックネットワークの「RouteMagic」を、リモートコントロールとトラブルシューティングに活用している。

メンテナンス

展示会初日が終わった後もメンテナンスは続く。最も基本的な熱暴走防止装置、クーラーと扇風機も大活躍だ

 これら監視用機器は、管理専用のネットワーク「スパイネット」に接続されている。つまりShowNetには、10GbEバックボーンとGbEのバックアップ回線、それにスパイネットと、主に3つのネットワーク系統が存在することになる。

セキュリティと運用の両立

 今年のShowNetのもう1つのポイントは、セキュリティ対策だ。昨年もセキュリティを意識してSOC(Security Operation Center)が設置されたが、今年はより積極的に取り組んでいる。

 SOCでは、マルチベンダーのIDS(不正侵入検知システム)やトレースシステムを通じてShowNetを監視。また申し出のあった出展社に対し、不正侵入監視やウイルススキャン、脆弱性検査といったサービスを提供している。無線LANの普及を受けて、勝手アクセスポイント(Rouge AP)を検出するといったことも行っている。

 セキュリティと使いやすさという2つのニーズを両立させるのは難しい。これはShowNetでも同様だ。

 今年はSOCの活動によって、ShowNetの中核たるNOC(Network Operation Center)の運用に不便が生じないよう、適度なバランスを求めて試行錯誤したという。その結果、10GbEで入ってきたトラフィックは、タップを用いて光レベルで分けたうえでSOCのIDSに流す設計とし、NOCには影響を与えないようにした。また、現時点では10GbEクラスのIDSが存在しないことから、ロードバランサーを用いてトラフィックをギガビットクラスに分散させる、といった工夫もなされている。

UPSを引っ張って……

 実はShowNetは、会期中よりもむしろ始まる前のほうが大変だという。数週間前から機材を持ち込み、本番と同様の環境を組み上げた上でさまざまな検証を繰り返し、課題を1つ1つつぶしていく作業があってはじめて、幕張メッセで高速なネットワークを利用できるわけだ。

 直前の組み上げ作業や疎通確認作業に費やす労力も大きい。ShowNetでは天井からネットワークケーブルを提供するが、その支えとなるワイヤーの設置作業にはじまり、ファイバーケーブルやUTPの引き回しが必要だ。それも、一般的なオフィスとはまったく異なる幕張メッセで、複数のベンダーが提供する機器を相手にして、である。

 このためNOCでは、まさに現場の知恵と表現するのが適切な、さまざまなツールを生み出してきた。微妙に形が異なる数種類のコネクタをいちいち取り出さなくてもすむよう、1本のケーブルにまとめて接続したものや、上空の誘導用ワイヤーからネットワークケーブルを引き出すための通称「如意棒」がその例だ。

コネクタ

マルチベンダー対応のオリジナルコネクタ

 ネットワークの疎通確認も、電源など存在しないフロアを駆け回りながら行わなければならない。そのため台車にノートパソコンとスイッチ、UPS(!)を載せ、これを持ち歩いてチェックするという。

台車

疎通確認作業の際に活躍するというのが足元の台車。「UPSが乗っているので重いです」とのこと

 しかも本人自身が、光ケーブルやUTPケーブル、光ケーブルのクリーナーに波長調整用のアッテネータ、物理層での問題までチェックできるテスター、ケーブルをまとめ、固定するためのガムテープや結束バンドまでを持ち歩いてだ。

フル装備

実際にはここまで全部を持ち歩くことはないというが、さまざまな機器やケーブルを持ち歩くことになる

 今回はプレス向けのShowNetツアーに参加したのだが、ツアーが終了した午後7時過ぎになっても、各PODやラックでは空調、UPSなどの調整作業が続けられていた。もちろんNOCは臨戦態勢だ。当たり前のように利用しているネットワークというインフラだが、こうした地道な作業があってはじめて利用できるのだということを改めて認識する。

 一連のShowNetの見どころは、会期中、1日に数回行われる「ShowNetウォーキングツアー」で詳しく知ることができる。ただし参加人数は毎回25名まで。人数が多い場合は抽選となる。

関連記事
▼NetWorld+Interop 2003 Tokyoレポート

関連リンク
▼NetWorld+Interop 2003 Tokyo

[高橋睦美,ITmedia]