エンタープライズ:特集 2003/07/28 16:20:00 更新

Microsoft Office Systemアプリケーションレビュー
第2回 入力環境の向上を目指したWord 2003

Word 2003では、文書作成をアシストする新しい作業ウィンドウが注目に値する。コマンドの種類が増えただけでなく、体系もリファインされて使いやすさが向上している。

 日本語ワードプロセッサとしてのWordの進化は、前々バージョンのWord 2000あたりで一段落した感がある。今回のWord 2003でも、確かに驚くような新機能はない。しかし、確実に進化は遂げていると感られる。スポットライトを浴びる機会はめっきり減ったが、依然として、Excelと並んで最も多くのユーザーが利用するアプリケーションであることは確かだ。きっちりチェックしておこう。

拡張された作業ウィンドウ

 起動すると画面右側に表示されるのが作業ウィンドウだ。ユーザーが行っている作業に合わせて、そのときに必要と思われる操作やコマンドなどを示しておいてくれる場所だ。この作業ウィンドウが、Word 2002のものよりも大幅に拡張された。種類が増えただけでなく、各作業ウィンドウが再整理されている。例えば、Word 2002にあった「翻訳」作業ウィンドウが消えているが、同じ機能は新しい「リサーチ」作業ウィンドウに統合されているといった具合。原稿執筆時点での違いは文末の表1にまとめたので参照してほしい。

 ここでは、Word 2003で新たに用意された、もしくは大幅な変更を受けた作業ウィンドウについて、簡単に解説しよう。

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画面1■前バージョンであるWord 2002の作業ウィンドウ。


Office_word02.gif

画面2■Word 2003の作業ウィンドウ。上のWord 2002よりもコマンドが大幅に拡張されている。


リサーチ

 Word 2002にあった「翻訳」作業ウィンドウは、Word 2003では「リサーチ」作業ウィンドウに統合された。文字どおり、翻訳機能も含んだより広範なリサーチ機能へと統合されている。

 例えば、本文中で調べたい単語を右クリックして[リサーチ]を選択すると、国語辞典による意味が表示され、同時に対応する英単語が表示される。これは、初期設定で[翻訳元の言語]が「日本語」、[翻訳先の言語]が「英語(米国)」になっているからだ。翻訳先の言語としては「ドイツ語」「フランス語」「中国語」など12カ国語が選べる。言語を変更すると、WorldLingoのオンライン辞書が調べられ、結果がすぐに表示される。文書全体の機械翻訳も可能だ。

 また、国語辞典、翻訳の他に、MSNサーチでの検索結果も表示できる。「すべてのリサーチサイト」をクリックすると、その単語がMSNサーチで検索され、結果が一覧される。クリックするとIEが起動して、Webサイトが表示される。

Office_word03.gif

画面3■「リサーチ」作業ウィンドウ。文書中の単語の意味を調べたり、翻訳結果を表示できる。MSNサーチでの検索結果も表示可能。


共有ワークスペース

 ExcelやPowerPointといった他のOfficeアプリにも用意されている作業ウィンドウ。これは、Windows Server 2003のサービスの1つであるSharePoint Servicesを稼働させている場合に利用できる。サーバ上に「ワークスペース」と呼ばれる場所を作り、その場所をこのウィンドウから利用する形となる。

Office_word04.gif

画面4■「共有ワークスペース」作業ウィンドウ。WSS上のワークスペースに文書を置き、他のメンバーと共同でドキュメントを作成できる。


ドキュメントの更新

 共有ワークスペースに保存した文書を最新状態に更新する。他のメンバーによって変更された内容を文書に反映するとき利用する。更新内容をチェックしてから、更新をかけることも可能。

文書の保護

 複数で1つの文書を作成するとき、書式の一貫性を保つ必要がある。そこで用意されたのが「文書の保護」作業ウィンドウだ(詳細は後述)。

XMLデータ構造

 編集中のXMLドキュメントのXML構造ツリーを表示する(詳細は後述)。

 新しく用意された作業ウィンドウの1つに「文書の保護」がある。これは、書式単位やユーザー単位で文書編集に制限をかける機能だ。例えば、表のオートフォーマットとして「表(エレガント)」だけを利用可にし、他のフォーマットを利用不可にできる。あるいは、文書中の特定エリアの編集を特定のユーザーにだけ許可するといった指定もできる。ユーザーによって編集できるエリア・権限を細かく指定できるので、例えばアルバイトにはデータ入力エリアだけ許可し、それ以外を編集不可にするといった使い方ができる。複数メンバーによるオンラインでの文書作成には、不可欠な機能と言えるだろう。

Office_word06.gif

画面6■「文書の保護」作業ウィンドウ。利用可能な書式、ユーザーの権限などを細かく設定できる。


文書閲覧に特化した閲覧モードを用意

 ここでは、そのほかの新機能をまとめて紹介しておこう。

 Word 2003では、文書を画面上で見ることに特化した「読みのレイアウト([ファイル]-[読みのレイアウト])」というモードが新たに追加された。これは、文書レイアウトとは無関係に、ページを読む・見ることを最優先に設計された画面モードだ。具体的には、次のような特徴を持つ。

  • 文字を大きく表示する
  • 行は短くする
  • 必要に応じて見出しマップを表示できる
  • 縮小表示を表示してページを切り替えられる

 実際に試してみると、他人から受け取った文書や長い文書にざっと目を通したいとき便利だ。表示倍率を調整したり、何度もスクロールを繰り返す必要がないため、ストレスなく文書が読める。今回の新機能の中では、誰もが効果を体感できる機能の1つだろう。なお、閲覧モードでも文書の編集は可能である。

Office_word05.gif

画面5■閲覧モード。画面上でドキュメントに目を通すのに便利なモード。文書に設定されている書式とは無関係に、オンラインでの閲覧にベストなスタイルが自動設定される。


 [名前を付けて保存]ダイアログでは、ファイルの種類として「XMLドキュメント(*.xml)」を選択できる。XMLファイルとして保存してもWordで設定した書式は保たれる。また、ユーザー定義のXMLスキーマを適用し、必要なデータだけを抽出したり、純粋なXMLデータだけを保存オプションも用意されている。

 Wordとは無関係にテキストエディタなどで作成したXMLファイルを直接読み込むことも可能だ。その場合、編集エリアにはデータがタグ付きで表示され、「XMLデータ構造」作業ウィンドウでXMLのデータ構造をツリー表示できる。また、「XMLドキュメント」作業ウィンドウに切り替えると、XSLファイルを指定して整形して表示することも可能だ。複数のXSLファイルを指定して切り替えられるので、1つのXMLファイルをさまざまな形式で表示できる。

Office_word07.gif

画面7■[名前を付けて保存]ダイアログ。[ファイルの種類]に「XMLドキュメント(*.xml)」が追加されている。


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画面8■テキストエディタで作成したXMLファイルを読み込んでみた。編集エリアにXMLタグが表示され、「XMLデータ構造」作業ウィンドウにはXMLのツリーが表示される。


Office_word09.gif

画面9■「XMLドキュメント」作業ウィンドウでは、XSLファイルを切り替えてデータの見た目を切り替えることができる。


 また、タブレットPCで使用すると、デジタルインクを使った手書きのコメントを入力できる。「インクコメント」ツールバーの[ペン]ボタンをクリックしたあと手書きする。なお、手書きできるのはタブレットPCだけで、Windows XP Professionalでは「インクコメント」ツールバーがグレーアウトして利用できなかった。

 [ファイル]メニューの[アクセス許可]は、Windows Rights Management Services(RMS)による文書保護機能だ。Windows Server 2003とRMSの組み合わせにより、ドキュメントの変更、印刷などを制限できるようになる。制限をかけるときは、アクセスレベルを「閲覧」「変更」「フルコントロール」の3つから選択できる。各レベルの特徴は次のとおり。

  • 閲覧……閲覧のみ可(変更、印刷は不可)
  • 変更……閲覧と変更は可(印刷は不可)
  • フルコントロール……閲覧、変更、印刷のすべてが可

 [表示]メニューの[縮小表示]は、各ページを縮小して左側に一覧表示する機能。クリックするとページが切り替わるので、長文の編集に便利だ。閲覧モードだけでなく、「下書き」「印刷レイアウト」の各モードでも利用できる。

 [挿入]メニューには[番号]というコマンドも追加されていた。これは、「ABC……」「TUV」などの書式を指定して番号を入力できる機能のようだ。特別、便利とも思えなかったが、Word 2002には見あたらなかった機能なので、一応、報告しておく。

Office_word10.gif

画面10■タブレットPCでは、コメントに手書きのコメントを入力できる。


Office_word11.gif

画面11■[ファイル]-[アクセス許可]-[配布禁止]を選択すると、[アクセス許可]ダイアログが開く。ここで制限するユーザーのメールアドレスを設定する。なお、この機能を利用するには、WRMクライアントをセットアップし、RMアカウント証明書の発行を受ける必要がある。


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画面12■画面左側に表示されるのがページの縮小表示。「下書き」と「印刷レイアウト」でも利用できる。


Office_word13.gif

画面13■[挿入]-[番号]で開く[番号]ダイアログ。


表1■Word 2002とWord 2003の作業ウィンドウの違い

作業ウィンドウ名 Word 2002 Word 2003 備考
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[井上健語, 池田利夫(ジャムハウス),ITmedia]