エンタープライズ:ニュース 2003/07/31 18:49:00 更新


MicrosoftがLonghornについて言えるこれだけのこと

次期WindowsメジャーリリースのLonghornに関する最新情報が先週、明らかにされた。「カンファレンスのたびに変わる」Longhornの概要を、現時点における最新情報でまとめてみた。(IDG)

 Windowsの次期メジャーリリースであるLonghornは、Microsoftの会長兼最高ソフトウェアアーキテクトであるビル・ゲイツ氏に言わせると、「少しビクビクするかも」という。ゲイツ氏は先週、金融アナリストに対してこう告白した。コンピュータユーザーが「少しビクビクするかも」というのは、Longhornの製品版は現在のMicrosoftソフトウェアと非常に異なったものになる予定だからだという。しかし、このソフトウェアはMicrosoft自身にとっても恐ろしい存在になりそうだ。

 Microsoftは昨年、LonghornはただのWindowsクライアントだと述べていた。しかし、Longhornが飼育されているソフトウェア家畜小屋では、多数の.Netウェブサービスのホルモン投与が行われているのは明らかだ。「Longhornこそが次の世代だ。われわれにとっての大きな賭けだ」とゲイツ氏は先週の金融アナリストミーティングで語った。

 このミーティングに出席したMicrosoftの幹部はその後のインタビューでは同社の戦略についてあまり話したがらなかったが、その計画の一端を見せてくれた。.Netの採用と統合化への加速がLonghornにはもたらされる。

 このOSは新しいファイルシステムが採用され、クライアント版、サーバ版の両方が提供される。Microsoftは同時期にOffice Systemアプリケーション、Visual Studio開発ツール、Microsoft Business Solutions製品のLonghorn対応バージョンをリリースする予定だ。また、BizTalk ServerをMicrosoftの“E-Business Server”2製品、Commerce ServerとContent Management Serverを統合する“Jupiter”プロジェクトの成果も同じ時期に予定されている。

 「Longhornの場合、われわれはこれが次世代Windowsであるだけではなく、次世代の製品すべてだと考えようとしている」とMicrosoftのCEO、スティーブ・バルマー氏はアナリスト向けのプレゼンテーションで述べた。「われわれは信念を持ってイノベーションの統合に取り組んでおり、次世代のWindowsの成功を確信している」とバルマー氏。

 LonghornはWindows File System(WinFS)と名付けられた統合ファイルシステムが採用されており、「Webサービスが内蔵された部品として機能する」とゲイツ氏は説明する。このファイルシステムは、来年末に予定されているMicrosoftのSQL Serverの次世代版であるYukonの技術を基にしている。WinFSを使うと単なるフォルダやディレクトリの中身を表示するだけではなく、ドライブのさまざまな物理的な場所にあるファイルをインデックス表示で見ることが可能だ。

 Microsoftは新しいテクノロジーと複数の製品をLonghornとともに立ち上げる「ビッグバン」リリース計画を以前よりはオープンにしているが、出荷時期については口をつぐんでいる。同社は5月の時点で述べていた、2005年にLonghornを出荷するという件については距離を置いている。「われわれは実のところ、正確にいつになるのかは分からない。何年も取り組んでいるのは確かだ」とゲイツ氏は先週、Longhornについて語った。

 Windows XPは2001年10月に発表されており、PCベンダーはLonghornの早期出荷で売り上げを伸ばしたい考えだ。しかし、Windows Serverのユーザーは4月にWindows Server 2003にアップグレードしたばかりで、少なくともあと3年間はアップグレードを望まないだろう。MicrosoftはWindows XP TabletPC EditionとWindows XP Media Center EditionのアップデートでPCベンダーにアピールしようと考えている。

 Longhornは3年前に立ち上がる予定だった.Netを再度浮上させるための試みだ。今回は本物だ、と独立系調査会社のDirections on Microsoftで調査ディレクターを務めるロブ・ヘルム氏。

 「.Netは大きな賭けだとMicrosoftは言っていたが、.Netは消えて会社は残った。Longhornは.Netが本当に賭けるべき存在になったときに登場する」と同氏は主張する。「現在のデスクトップで.Netフレームワークを備えたものは存在しない。それがLonghornの登場で変わる。Windowsを搭載したすべてのマシンが突然に.Net開発技術を備えたものに生まれ変わるのだ」とヘルム氏。

 .NetはSOAP (Simple Object Access Protocol) やXML (eXtensible Markup Language) といった標準テクノロジーを使い、アプリケーションをインターネットを通してリンクさせ、Webサービスを構築するMicrosoftの技術である。

 Longhornはコンセプト段階の先に進んだが、その将来は定かでない。先週Microsoftが描いた計画は、また変わるかもしれない。

 「Longhornの計画は、カンファレンスが開かれるたびに変更される」とヘルム氏。Microsoftの5月に開かれたWindows Hardware Engineering Conference (WinHEC) ではLonghornは2005年だと言っており、新しいファイルシステムは採用されないと述べていた。

 Jupiter Researchの上級アナリストであるジョー・ウィルコックス氏はMicrosoftのLonghorn計画がまだ不確定状態にあると同意する。「Longhornに関してMicrosoftがどう動くかについてはまだまだたくさんの疑問が残る」と同氏。

 Microsoftのバルマー氏はLonghornを「ビッグバン」リリースだと形容し、「MicrosoftとIT業界全体のイノベーションサイクルを活性化させる」と述べた。Microsoftの開発陣は強いプレッシャーを受けており、同社は強いプレッシャーの下では最高の仕事をするとDirections on Microsoftのヘルム氏は評する。

 「歴史的に見て、Microsoftは巨大なキャンペーンを行ったときに最良の仕事をしてきた。LonghornはWindowsの大きなキャンペーンがかけられる。これはビクビクする状況だが、実際に製品に取り組んでいる人たちにとっては、自分の会社がこれに賭けているのだから、強いやりがいを感じるだろう」とヘルム氏。

 MicrosoftはLonghornのリリースに関するさらなる詳細を、10月にロサンジェルスで開催されるMicrosoft Professional Developers Conferenceで公表することを約束している。デベロッパー向けソフトウェアのプレビューはここで配布され、Longhornのベータ版は来年を予定している。

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[Joris Evers,IDG News Service(San Francisco Bureau)]

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