エンタープライズ:ニュース 2003/08/01 15:20:00 更新


Windows対Linuxの考え方は無意味、電子政府戦略会議でMS古川氏が講演

Microsoftは7月31日、「電子政府戦略会議」で基調講演を行った。WindowsとLinuxを対立して考える図式は、電子政府の実現に何も役立たないと訴えた。

 7月31日〜8月1日の日程で、「第3回 電子政府戦略会議」が開かれた。官庁、自治体の電子政府・電子自治体推進責任者などを対象としたこのカンファレンスで、米Microsoftバイスプレジデントの古川 享氏は基調講演を行った。その中で、「Linuxを対立意識で考えるのは、私企業のエゴを押し付けるものでしかない」と話した。電子政府の実現に、WindowsとLinuxを対立させる考え方は何の役にも立たないという。

古川 享氏

基調講演には古川氏をホスト役に、マイクロソフトのマイケルローディング新社長のほか、エンタープライズビジネス担当の平井康文取締役、法務・政策企画本部の大井川和彦執行役員が立ち代り登場。あらゆる点で、マイクロソフトの電子政府や社会貢献に対する取り組みをアピールした


 これは、古川氏の前に行われたドイツ内務省CIOの基調講演を受けて発言したもの。マーティン・シャルブルッフCIOは、オープンソースを採用することで、単一のベンダーに依存しない体制を整備しているドイツの取り組みを紹介。ミュンヘン市や司法省などがLinuxに移行したことを例にあげたほか、Micorosoftと決別する形でマイグレーションを図るためのガイドラインを英語化して公開するなどと話していた。

 この講演に続いた古川氏は、電子政府実現に対する取り組みを知ってもらうと同時に、バイアス(偏見)を解きほぐしてもらいたいと講演をスタート。最初のバイアスとして指摘したのが、“Windows対Linux”という図式だった。

 「(前の基調講演を聞いて)ドイツは、中央も各都市も全部Linuxに傾いていると捉えられたかもしれない。しかしフランクフルトは、Windowsを核にした電子政府システムを構築すると発表してもいる。申し上げたいのは、電子政府実現のために対立の図式の中で、どちらが勝つか負けるかのあり方を語る(ことに意味はないということだ)、マイクロソフトもその一人かもしれないが、私どもが対立意識で考えるようなことがあれば、各国政府の行政に何の役にも立たないだけでなく、私企業のエゴを押し付けるものでしかない」(古川氏)

 また、講演を進める中で同氏は、マイクロソフトはオープンソースの良い点や全体の方向性には賛同しているとも話す。唯一反対しているのは、ソフトウェアを産業として成立させなくする方向性だけだと立場を説明した。

 マイクロソフトは標準に則ったXMLを積極的に推進し、プラットフォームやデバイスに依存しないサービスの連携を図る方向にある。標準に則った形をとることで、相互接続、安価でセキュアな環境の提供を約束するという。その上で、オープンソースについてよく考えてほしいと訴えた。

 「無償で手に入るソースコードで開発すれば、絶えず特許侵害の賠償請求というリスクを自分で追わなければならない。だが、商品であれば、ある程度保護されている。そのリスクをどうするのか、オープンソースを採用する中で考えてもらいたい」(古川氏)

 また、セキュリティについての懸念に対して、「不安を持っていると思う。これまでバグがあるものを出してきたのか、お前らは、と思っているかもしれない」と切り出し、設計・開発の段階からセキュリティを増したものを提供する「TrustWorthy Computing」の取り組みを説明。情報開示を速いサイクルで行っていくことで対処するアプローチに理解を求めた。

 この基調講演には、マイクロソフトの新社長マイケル・ローディング氏なども登場。マイクロソフトは行政への長期的なコミットを表した。ローディング社長は、「ITをツールとして社会の前進のために有効活用するという点で、究極的に共通する」と、関係団体や業界との提携関係を幅広い視点から推進していく方針を話した。

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[堀 哲也,ITmedia]