エンタープライズ:ニュース 2003/08/06 23:49:00 更新


エンタープライズでIMに求められるものは?

IMは近い将来、エンタープライズの生産性を向上させるドライバとなり、主流の技術、主要なインフラになるだろう。そのために理解しておくべき事柄は何だろうか。

 インスタント・メッセージング(IM)を企業内でどのように活用していくか。この問題は、これからのビジネス価値を高めていくに当たって、とても重要な課題になっていく。便利なツールである一方、IMはセキュリティやプライバシーといった微妙な問題もはらんでいるからだ。

 IMは通信ツールとしてさまざまな利点を備えている。迅速にコミュニケーションが可能、一度に複数の人々と会話ができる、いつでも世界中のどこででも安価に利用できるといった点だ。コンシューマに限って言えば、この利点だけを享受しておいてもさほど問題はない。

 だが、ビジネスの分野ではどうだろう? IM自身が持つ問題点あるいは課題を意識して、その解決を図ってからでなければ仕事のためのツールとしては利用はできない。ではいったい、それらはどのようなものだろう。

 まずIMを利用するにあたって、コミュニケーションの相手であるパートナー企業や顧客が、必ずしも自分と同じIMアプリケーションを使っているとは限らない。IMサービスを実現するアプリケーションはいくつかあるが、現状ではどれも相互接続性に乏しく、やりとりをするためには相手とまったく同じアプリケーションを利用することが前提となる。また、インターネットを介して利用する場合は、暗号化されていない「生の」データが流れることになるため、セキュリティやプライバシーをどうやって保証するかを考える必要がある。また、ログを取ったり、それをアーカイブ(まとめて保存)しておく機能なども備えておくべきだ。

 現在のIM市場の状況としては、全世界で2億以上のユーザーがおり、2006年までにはこれが5億人になるだろうと予測されている。このうちエンタープライズでは31%程度の利用があるとされているが、実際に上記の問題点をクリアして利用しているところは5%程度と低い数値にとどまっている。

 マイクロソフトが間もなく提供を開始するLive Communications Server(LCS)は、以前Microsoft Real Time Communications Server(RTC Server)と呼ばれていたものが名称変更して正式発売となるものだ。米Microsoft シニア テクノロジー スペシャリストのウォリー・モーゼス氏によれば、LCSは上にあげた課題や問題に取り組んだ結果、エンタープライズツールとしての条件を備えた製品になったという。

 同社ではビジネスの価値をより高めるためにコラボレーションとコミュニケーションにフォーカスしており、LCSによってエンドツーエンドの適切なソリューションを提供できるとしている。モーゼス氏は、エンタープライズ利用者の数値を「30%くらいにはしたい」として、LCSはそのために必要な数々の特徴を備えていると説明する。

 問題点として指摘した相互運用性や拡張性を考えれば、業界標準の仕組みを使うのが望ましい。LCSではプロトコルとしてSIP(Session Initiation Protocol)およびSIMPLE(SIP for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions)をサポート。多くのIMや企業がサポートに動いているプロトコルだ。セキュリティについてはADとの統合やKerberos認証、TLS接続で暗号化についても保証される。

ユーザー体験のメリットは?

 モーゼス氏によると、同社ではSQL Serverを併用して、IMを社内的な通知サービス=ノーティフィケーション(メンテナンス時のサーバダウンのタイミングなど)にも使っている。もちろんロギングやアーカイビングにも対応している。

 Office 2003のアプリケーションではプレゼンスがサポートされており、コラボレーションする相手の状態によって適切なコミュニケーション手段をとることが可能だ。Windows Messenger 5.0では、提供されるSDKで「『企業名』Messenger」といったブランディングも可能。さらに同社では、MSN Connect(MSN Messenger Connect for Enterprises)というソリューションを用意する。これは、MSNが提供しているIMサービスと、企業が独自に運用するIMシステムとのゲートウェイの役割をする。企業ユーザーはロギングや固有のユーザー名提供(mike@microsoft.comのように)といったサービスを受けることができ、管理性や信頼性の向上が図られる。

 全体を通して見ると、IMの利用によって企業は間違いなく金額的に節約ができる。ガートナーによると、IMを併用することで電子メールのトラフィックが約40%削減でき、固定電話の利用率も低くなるという。必要ならヴォイスにも移行できるし、低速回線では何よりも有利な通信ツールとなる。モーゼス氏はこう述べている。「PCと電話は近い将来統合されると考えている。統合というよりはうまく協調するようになると言ってもいいだろう。電話帳やプレゼンスなどをPC上で確認し、そのまま通話を始める。つまり、IMツールがインフォメーションエージェントとして、人と人だけでなくアプリケーション間のコミュニケーションをつかさどるハブの役割をするようになるだろう。」

関連記事
▼Microsoft Tech・Ed & EDC 2003 YOKOHAMAレポート
▼Windows.NETチャンネル

[柿沼雄一郎,ITmedia]