エンタープライズ:ニュース | 2003/08/07 22:21:00 更新 |
そのクライアント開発、ユーザビリティ意識してますか? クライアントと生産性の関係
「Microsoft Tech・Ed & EDC 2003 YOKOHAMA」では、企業システムにおけるクライアント開発に関するセッションが開かれた。はやりに流されたWebアプリの採用は、真の生産性に結びついていないかもしれない。
「ユーザビリティを忘れないでほしい」。「Microsoft Tech・Ed & EDC 2003 YOKOHAMA」で、企業システムにおけるクライアント開発についてセッションを行ったマイクロソフトの西谷 亮氏(デベロッパーマーケティング本部デベロッパーエバンジェリスト)は、クライアント開発で忘れがちになる“ユーザーの視点”を大切にするよう、デベロッパーに訴えた。
Webアプリケーションによるクライアント開発が現在の流行だが、どんなものでもWebアプリケーションにするのは間違いだ、と西谷氏。WebアプリケーションはHTTPをしゃべれば利用できるため、サポートできるプラットフォームの幅が広く、一元管理ができるため展開・運用コストも低い。これらメリットから、現在好まれる傾向にある。
だが、西谷氏は「スクリプトを埋め込み凝った作りにするなら、ブラウザに制約を与えてしまうこともあるだろう」と、システムの都合が先行するクライアント開発に疑問を投げかけた。
ITによる生産性の向上とは、本来ユーザーの業務効率を高めることだ。開発者にとっての開発効率の高さとは、必ずしも一致しないということを念頭した方がよい。“まずシステムありき”の視点から開発を行うのではなく、ユーザビリティに注目して開発すべきというのが西谷氏の主張だ。同氏はこれについて、マイクロソフトのOfficeの開発を具体的に挙げて説明した。
Officeの開発では、ユーザーの生産性を高めるためにユーザビリティラボを使っている。一般から被験者を集め、操作でつまずきやすいポイントを常に研究しているのだ。つまずいた操作に関するユーザーの解決時間を計り、それがどれだけ短縮できるかを基準に開発している。
「Officeの開発チームは言ってみればISVのようなもの。ユーザーの視点を考えれば、自ずとこのようなことが必要になります」(西谷氏)。クライアント開発は、使用する人間の立場で考えることが第一ステップだという。
そのためには、まずどのようなクライアントが必要なのか、アプリケーションの利用局面に照らした検討が必要だ。社内で利用するデスクトップなのか、モバイルデバイスなのか、Webアプリケーションでいいのか、Windowsアプリケーションでいいのか――。
「モバイルといっても、ノートPC、PDA、携帯電話と3種類あります。何のために利用するかで、選択肢が変わってくる。これも重要です」(西谷)。西谷氏の考えでは、オフラインの作業でよければPDA、常にオンラインである必要なら携帯電話を採用するのがよいという。
また、ユーザーインターフェース(UI)も最重要な要素だ。西谷氏は次期OS「Longhorn」でのUI強化の話を持ち出し、ユーザーがシステムとコミュニケーションできるUIを目指して開発を進めていることを紹介。これもシステムの制約からユーザーを解放するために行われているという。
UIのデザインという点では、マイクロソフトがOS開発で培ったUIデザインノウハウをまとめ、「UIデザインガイド」として年内にまとめる予定。これを一読して、参考にしてほしいとのことだ。
西谷氏によると、これを踏まえた上で開発者に求められるのが、技術に対する見識だという。西谷氏は、タブレットPCのペン入力を例にして、「極論すれば、こういう技術を知っているか、知らないかでユーザビリティに差が出てくる」と話した。
クライアントのユーザビリティを最大限に考慮できれば、「バックエンドでは、Webサービスを使うなり、もう開発者が自由に設計してください」とのことだ。
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[堀 哲也,ITmedia]