エンタープライズ:ニュース 2003/08/08 01:48:00 更新


Yukonの目指すSQLサーバの進化形、Tech・Edで英語版ベータ1をデモ

次期SQL Serverのコードネーム「Yukon」。マイクロソフトは、データベース解析に多面性を持たせる「ビジネスインテリジェント」をキーワードの1つとする進化形のバージョン。

 マイクロソフトのデベロッパー向けカンファレンス「Microsoft Tech・Ed 2003」開催の8月7日、4つに分けられた「Yukon」の講演が行われた。

 「Yukon」は現在リリースされているMicrosoft SQL Server 2000の後継となる次期バージョンのコードネーム。2003年8月現在、ベータ1(英語版)がワールドワイドで1800社へ配布済み、2004年初頭にはベータ2をさらに広く配布予定だという。現在、製品化は2004年後半のロードマップになっている。今回のTech・Ed 2003では概要からトピックとなる機能紹介がメインとなっており、2004年度のTech・Edこそが実践解説を網羅すると思われる。

 このような背景ではあるものの、講演内ではベータ1を積極的に披露する製品デモが随所に取り込まれ、具体的なイメージをつかみやすい内容となっていた。講演セッション名「SQL Server"Yukon"によるリアルタイムなビジネスインテリジェンス」と題された内容を中心に紹介していこう。


 メインスピーカーとなった米Microsoft、SQL Serverアーキテクトのデビット・キャンベル氏からは、ビジネスインテリジェンスをテーマとした、ここ30年間を振り返るデータ処理についてが語られた。

 キャンベル氏はまず最初に、初期のデータ処理がテープデバイスをメディアとして利用してきた背景を見つめ、例えば1週間の解析タイムラグがあったとしても、当時はオンライン処理という概念がなかったと強調する。

 オンラインでの意志決定追求こそがデータベースの進化を担うポイントだと語り、これまでのSQL Server 7.0や2000によって実現されてきた進化は、Yukonでいっそう高められるという。その進化形として位置づけられるのが「ビジネスインテリジェンス」と称される、膨大なデータをさまざまな側面から分析し、活用ができるよう配慮されるYukonのゴールだ。

Yukonでは従来比1/30以上のクリック数削減でキューブ作成が可能に

 製品マーケティング本部・前田隆志氏からはSQL Server 2000とYukonの比較がデモンストレーションされた。要となってくるのはアナリシスマネージャが必要なくなるという点であり、キューブ作成の手間がYukonでは劇的に軽減される点が示された。

 一般的にSQLでキューブを作成する際、データウェアハウスを構築する際にDTS(データ変換サービス)、またSQL ServerのETL(抽出変換サービス)を利用するのであればDTSを使い、OracleやSQL Serverのデータから移行するという手順を行う。

 SQL Server 2000の実際の操作を追ってみると、これまではEIのために分析マネージャを利用しているとDTSが無い、そのDTSのためには「エンタープライズマネージャ」を起動するという必要性があり、手間となる相互のやり取りが必要であったという。さらにキューブ自体を作成する際には、「分析マネージャ」を起動してからデータベース作成する際に、1つずつキューブ作成を行っている点も問題視された。

 このような操作はすべてYukonで見直され、従来まではキューブ作成のために700程度のクリックが必要だったものが、十数回程度のクリックに簡略化されるという。これほどの短縮はウイザードによるものが大きいと語り、デモ画面でも随所に見られた。

 講演で使われたベータ1では、「BIワークベンチ」と呼ばれるツールが別途用意されていたが、今後の開発過程でYukonへと統合されるという。このBIワークベンチは、VisualStudio.NETと同等のインタフェースを持ち、DTS、ETLのプロジェクトを作成することができるものだ。VisualStudio.NETとの関係がいっそう強化されていくことを物語る。

 ほかにもYukonのフィーチャーには、.NET Frameworkエンジンをデータベース処理に採用、そしてSOAPやWebサービスサポートによる親和性も期待される。さらに幅広い概要ではスケーラビリティ、セキュリティ面などの見直しも課題となっている。前述したようにVisualStudio.NET以外にもほかの製品との統合が強く位置付けられているのも特徴だ。Office 11はもちろん、次期Windows(コードネーム、「Longhorn」)で実現されるWinFSにも大きく関わるなど、今後のプロダクトに大きな影響を与えていく存在である。

関連リンク
▼Microsoft、次期SQL Server“Yukon”のプライベートベータをリリース
▼Microsoft Tech・Ed & EDC 2003 YOKOHAMAレポート
▼Windows.NETチャンネル

[木田佳克,ITmedia]