エンタープライズ:ニュース 2003/09/04 22:25:00 更新


HITACHI Cosminexusフォーラム・セミナーでJ2EE構築のノウハウを講演

アプリケーションサーバ「Cosminexus Version5」を5月に発表した日立製作所。半年ごとに行われているセミナーでは、同社がコンサルタント業務によって得られたノウハウも披露する場となっている。

 9月4日、東京コンファレンスセンター・品川にて日立製作所主催の「HITACHI Cosminexusフォーラム・セミナー」が開催された。同社によるセミナーは6カ月ごとに行われている。

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東京コンファレンスセンター・品川にて開催された


 会場には、日立製作所(以下、日立)を始め、16社のパートナーが介しJ2EEを取り巻く製品が各種展示された。日立からは、5月にアプリケーションサーバの新バージョン「Cosminexus Version5」が発表されており、同製品はサードパーティのコンポーネントを積極的に取り入れることでも知られている。Version5の主な新機能は、J2EE 1.3への対応、JAXP 1.2へのXMLプロセッサ対応などが挙げられる。

 日立製作所、ITコンサルティングセンタ・尾花 学氏が講演を行った「事例に見る、J2EEシステム構築の勘所」では、J2EEに対応するシステム構築を行う上でどのような点に注力すればよいのかがテーマとなった。

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尾花 学氏からは事例から学ぶ構築のためのノウハウが語られた


 冒頭で語られたのは、サーバの多層化とクラスタリング構成について。J2EEのシステムではスケールアウトも可能な柔軟な構成であることが必須だという。さらに「システムとはインテリジェンスビルのようなもの」だと語り、人の流れ(業務の流れ)をレイアウトしていく必要性を強調する。日立が行っているコンサルティングでのノウハウも披露され、システム構築における用件として5つが挙げられた。

1. 信頼性の確保

2. 性能の確保

3. セキュリティの確保

4. 運用監視

5. 拡張性

 Cosminexusが注力している「コンポーネント」自体についても触れられた。コンポーネントの扱いで注意しなければならないのは、連携する際の実行条件を制約することだと語り、個々のコンポーネントが動作しやすいよう配慮するべきだという。さらに、「往々にして忘れがちなのは、画面設計かもしれない」と尾花氏。「画面設計によってシステム全体のイメージは大きく変わり、強引かもしれないが画面設計が優れなければシステム全体がうまく機能しないはずだ」と強調する。

事例から学ぶシステム構築の落とし穴

 日立によるコンサルタント事業で得られた事例として、幾つかが挙げられた。1つ目は、処理の重さに対する問題であり、「大量な画像転送が業務処理の邪魔をしてしまう」というテーマだ。画像をアプリケーションサーバ上に置くというのは大きな問題だと指摘する。

 注意しなければならないのは、常にクライアント側の状況を考慮することであり、そのためには画像取得のために本来サイトが目的とする手続きを妨げるようなことがあってはならないという。

 画像だけではなく検索処理面についても触れる。検索ヒット件数には十分に考慮する必要があり、後述する点が配慮されているサイトでは、1画面に10件程度しかヒットさせないはずだという。むやみに一括表示をせず、適量な件数に制限することでトラフィックを軽減することが目的だと語る。「例えば、オンラインショッピングサイトでは、購入をしてもらうことが目的であり、商品検索自体が問題ではない。もちろん容易な検索性も重要であるものの、いざ購入手続きを行っている際に画面がフリーズするような事態では最悪だろう」と尾花氏。このため、アクセスピーク時のクライアント状況を想定することが重要であり、この事例のような場合には、画像取得はHTTPサーバに任せる必要性があるだろうという。可能であればサーバ自体を分けてしまうのが好ましい、とも付け加えられた。

 次なる事例にはセッション維持と負荷分散についてが挙げられた。

 アクセスするユーザーを追尾するための仕組み「Cookie」。このCookieが行う動作の1つは、有効期限を加えクライアントに返すことだ。しかし、いかなる場合もクライアントが必ずしもオンラインのままだと限定してはならない、と強調する。さらに、トラフィックが増えることでサーバを増設した際、元のサーバ上でCookieの保存期間が思う通りバランス考量されなければ、本来の機能を失ってしまう。優れたサイトほど、Cookieデータがクライアントと交わされる率が低いともコメントされた。

 最後に挙げられた事例は、SSLが解除されてしまうという問題についてだ。

 アプリケーションサーバ上でのSSLセッションは、大まかにJSP内で相対パスを記述。そして相対パス記述することでSSLであることがアプリケーションサーバに伝わる。この際、URLにはHTTPSが付加される具合だ。しかし、SSLアクセラレータの扱い方によってはSSLポート443でのセッションが解除され、標準の80でつながってしまう。このような場合には、次の点を見直さなければならないという。

1. SSLを必要とする業務処理は明確なのか

2. ネットワーク構成を見直す

3. SSLアクセラレータの仕様を明らかにする

 まとめとして語られたJ2EEシステム構築のポイントは、まず第一に「コンポーネントの集合体であることを考慮する」、そして「コンポーネントをブラックボックス化しない」、「仕様を憶測で作ってしまう傾向があるため、J2EEを運用する必要性を明確にする」、「業務処理ごとにコンポーネント間のシーケンスを明確にする」、「自らのコンポーネント内で処理を解決する」という点だ。

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Cosminexus Version5についての位置づけを語る


 日立ではさまざまなコンサルティング事業を通し、講演で紹介されたような事例を多数蓄積しているという。Cosminexusがサードパーティのコンポーネントと協調するように、同社の意向には優れたコンポーネントを適所に利用し、連携の際の注意点も把握してほしいとのメッセージも含まれている。

関連リンク
▼Cosminexus 総合サイト
▼ミドルウェア・プラットフォームソフトウェア総合サイト
▼Java チャンネル

[木田佳克,ITmedia]