エンタープライズ:コラム 2003/09/09 15:26:00 更新


Linux Column:いよいよデスクトップLinuxへの移行始まるか

9月の第1週は2つのイベントがあった。ひとつは「PHPカンファレンス2003」。もうひとつはLindowsOSの発売だ。何となく関係ないように思われるこの2つだが、ちょっとした結びつきを発見した。

PHPカンファレンス2003では実践的事例が多数

 8月30日に開催された「PHPカンファレンス2003」。毎年夏に開催されるこのイベントだが、今回で早くも4回目となった。筆者は今回も司会ということで、朝から晩まで大忙しだったが、参加しての成果が多かったと感じる。

 特に1回目を開催したころはカンファレンス内容が開発者向けな技術情報が多い感じだった。今回は「楽天」のシステム事例紹介において、ビジネスにおけるシステム構築の中でPHPのメリットをどのように評価し、どのように位置付けていくべきかという視野の広い講演が行われた。徐々に開発者のレイヤーからユーザーレイヤーへと移行し、話題性が広がりつつあると感じられた。この調子であれば、2004年辺りには完全にシステム管理者の立場から、PHPによるシステム構築コストの削減や開発期間短縮といった話も飛び交いそうだ。

 技術的に見ても、PHPにはSmartyのような高機能なテンプレート機能を提供するクラスライブラリが多用されるようになり、システムの開発効率も向上しているようだ。

 今後の課題として、より大規模なシステムへの適用や、信頼性の向上をどのように図っていくべきか、という課題が共通認識として挙げられている。PHPの今後の発展に弾みがつけられそうなカンファレンスとなった。

LindowsOSは受け入れられるのか

 翌日の8月31日、筆者は秋葉原を歩いていた。夏休み最後の日曜日ということもあり、午後から人が増えたようであり、メインストリートである中央通りは歩くのもままならない。

 秋葉原駅に程近い大型店舗の店頭では、大々的にLindowsOSの発売キャンペーンを行っており、混雑に拍車をかけていた(関連記事)。通りがかりの人たちは、興味があるようなないような、それぞれの反応を示していた。同じ店頭で3つも4つもキャンペーンをしていては、キャンペーン効果が相殺されてしまうのではないだろうかなどと眺めていた。

 この店舗に限らず、秋葉原のあちこちでは発売開始キャンペーンが行われていた。しかし、思ったよりも静かな船出という感じだ。そういえば、Windows XPの販売キャンペーンの時もほとんど人出もなく静かな船出だっただけに、今時は秋葉原に出向くような人種はOSにはさほど興味はないのだろうか、と変な納得をしてしまった。

 実際、LindowsOSのようなOSがターゲットにしているだろうユーザーは、あくまでインターネット用、そしてMicrosoft Office互換のPCとして使いたいライトユーザーなのだろう。最近さらにディープになりつつあるアキバでキャンペーンするよりも、新宿などの量販店で行った方が効果があるのではないだろうか。今後は、ライトユーザー向けの低価格LindowsOSプリインストールマシンが各社から出てくるようなので、動向に注目したいと思う。

OpenOffice.orgに移行すべきか

 さて、冒頭で書いた共通点とはOpenOffice.orgの存在だ。PHPカンファレンス2003では、OpenOffice.orgの「Impress」を利用してのプレゼンを行う発表者がちらほらと。皆示し合わせたわけではないのに、同じテンプレートデザインを使っていたのには笑ってしまった。

 4年前は、PowerPointであったり、LinuxやFreeBSDユーザーとしてはMagicPointを使う人が多かった。しかし、OpenOffice.orgもいよいよ実用性が高くなってきたのだろうか。筆者は、10年来のPowerPoint使いのため、なかなかほかのソフトに移行することができないままだが、現在はPowerPoint 2000で以降のバージョンアップを控えているため、早めに次なる展開を考えておくべきかもしれない。出力面を考えれば、ローカル印刷にするか、あるいはPDFで出力して相手に渡すようなスタイルと考えれば、取りあえずどうにかなるのかもしれないと思う。そう思えば、移行することを考えてもよいだろうか。

 そしてLindowsOSも、ウリの1つとしているアプリケーションはオフィス製品であり、製品版にはサン・マイクロシステムズの「StarSuite」がバンドルされている。OpenOffice.orgも動作するだろうから、この辺りを接点にして段階的に脱Windowsを図っていけるだろう。筆者自身、EメールとWeb利用とプレゼン、そして表計算が行えれば事足りている。そうとはいえ、Windowsを抜け出せない。しかし、なんとなくだが今度こそ波が来たかなとも感じる。そうは思っても、やはり仕事で使っている環境を一足飛びに変更できるほどでもない。そこで、少しずつ確認しながら進むことにしたい。まずはプレゼンテーションツールが移行できるかどうかをWindows上で確認することにした。

 OpenOffice.orgのサイトから、Windows版の1.1.0 RC3をダウンロードしてきて早速インストールしてみる。Javaランタイムが要求されたが、軽く評価してみるだけだから一部の機能が使えなくなる旨警告されたが特に気にしないでインストールする。早速プレゼン作成を行ってみよう。メニューなどは英語だが、オプションで言語を日本語に設定して文字入力すれば問題ない。標準フォントが多少丸い雰囲気のゴシックなのがビジネスっぽくないが、この辺りは設定をつめていけばよいだけの話だろう。

 次に現在作成途中のPowerPoint 2000のファイルを読み込ませてみる。とりあえず問題は見当たらなかった。難点をいえば、アウトラインとスライド、ノートを同時に表示しながら編集作業が可能なビューが見あたらなく作業効率に影響しそうだ。このビューが追加されれば(あるいは設定を変更してそのようなビューが使えれば)、いっきに移行熱が高まる気がする。

 本当に簡単に触ってみただけだが、1.0の時のインプレッションに比べるとかなり完成度が高くなったと感じた。いろいろといじってみたくなる感じだ。今回触ってみたプレゼンツールに限っていえば、たまにしかプレゼンをする機会の無い人ならば十分実用に耐えるだろう。

 話がやや細かい点になってしまったが、最近筆者はLinuxはクライアントに使えるのかという点でずっと注目し、本コラムでもたびたび触れてきている。その感触として「まだまだかな」と思っていたが、ここに来て急激に「行けそうだ」に変わった。その感覚の変化が、まだ新鮮なうちにここに記しておきたいと思う。年末ぐらいに改めて、この感覚がさらにどのように変化したか、振り返ってみたい。

[宮原 徹,びぎねっと]