エンタープライズ:ニュース 2003/09/09 23:41:00 更新


トレンドマイクロ、新世代のウイルスを予防する「ウイルスバスター 2004」発表

トレンドマイクロは、MSBlastをはじめとする新世代ウイルスへの対策機能を盛り込んだ「ウイルスバスター 2004」を発表した。

 「MSBlastのような新世代ウイルスに対処するには、従来の手法に基づくウイルス対策だけでは不十分だ」(トレンドマイクロのプロダクトマーケティング部部長、山崎裕二氏)。

 トレンドマイクロは9月9日、こうした考え方に基づいたウイルス対策ソフトウェアの新バージョン「ウイルスバスター 2004」を発表した。これまでのように定義ファイルに基づいてウイルスを検出、削除するだけでなく、ウイルス感染を水際で食い止めるための予防機能が盛り込まれている。また、万一感染してしまったケースに備え、システムの修復機能も強化された。

 というのも、マクロウイルスや電子メールの添付ファイル経由で広がるウイルスといった「古典的ウイルス」と、NimdaやCode Red、Slammer、MSBlastといった昨今猛威を振るうウイルスとの間には大きな違いがあるからだ。トレンドマイクロが「ネットワークウイルス」と表現するこれら新タイプのウイルスは、OSやアプリケーションのセキュリティホールを悪用し、ユーザーがそれと気付かないうちに速やかに感染を広める。こうなると、いくらウイルス定義ファイルを急いで作成し、配布したとしても、守りきれない部分が生じてしまう。

 トレンドマイクロでは昨年より、こうしたウイルスの傾向を踏まえて「Trend Micro Enterprise Protection Strategy(TM EPS)」というコンセプトを提唱してきた。ウイルスの検出・削除を行うだけでなく、定義ファイルを作成するまで水際での「予防」を図るとともに、ウイルス感染後の復旧、事後対策というステップについても解決策を提供しようというもので、ウイルスバスター 2004にもそれが反映されている。

 例えば、深刻な影響を与えかねない新種のウイルスが発生した場合には、パーソナルファイアウォールのポリシーを変更し、ウイルス定義ファイルを作成・配布するまでの間、ウイルスの攻撃からPCを守る緊急対策設定機能が追加された。同時に「ウイルスアウトブレーク緊急警告」機能によって、PC上のポップアップ表示によってウイルスの存在が周知される仕組みである。この表示によって、まず最新のポリシーと定義ファイルを入手するようユーザーに促し、予防を図るわけだ。

 逆に、どうしてもウイルスの侵入を防ぎきれず、PCが被害を受けたとする。その後の復旧作業を速やかに行う手助けとなるのが、「ウイルス感染自動修復」機能だ。トレンドマイクロが提供する修復用プログラムやパターンファイルを通じて、ウイルスによって削除/変更された設定やレジストリを元通りに回復することができるという。

 また、いざというときに備えてネットワーク接続を遮断する「緊急ロックシステム」も備えている。これは自分のPCを感染から防ぐためだけでなく、周囲への再感染、つまり二次災害を防ぐためにも利用できる。

 一連の機能によって、ウイルスバスター 2004では、「たとえゼロデイ状態の攻撃が生じたとしても、100%とまではいかないが、かなりの程度被害を防げると思っている」(山崎氏)という。

広範なセキュリティ機能をサポート

 もう1つこのバージョンで注目したいのは、もはや「ウイルス対策ソフト」というカテゴリには収まりきらない機能をサポートしていることだ。

 例えば、ウイルスバスターはこれまでもパーソナルファイアウォール機能を搭載していたが、新バージョンではその機能を深めている。ウイルスバスター 2003からサポートしているステートフルインスペクション型はもちろん、より高いレイヤーでパケットの内容を精査するアプリケーションゲートウェイの機能も一部搭載した。またSYN FloodやPing Attackといった代表的な不正アクセス/DoS(サービス妨害)攻撃をブロックする不正侵入検知システム(IDS)機能を搭載している。

 「コンテンツセキュリティ」という側面でも機能強化が図られている。まず、インターネットからPCに向かうトラフィックに関しては、従来より提供されてきたURLフィルタリングに加え、スパムメールのフィルタリング機能が搭載された。後者では、ユーザー自身が登録するブラックリスト/ホワイトリストによるフィルタリングに加え、スパムメールの特徴に基づくチェックなど、複数の手法を組み合わせてスパムメールを判断し、メールのサブジェクトに「MEIWAKU」という文字列を加えて配信する。

 逆に、自分のPCからの不用意な情報流出を防ぐ機能としては、スパイウェアの検出機能、パスワードやクレジットカード番号といった重要な情報の外部送信をブロックする機能などがサポートされている。

 トレンドマイクロでは一連の新機能を搭載するとともに、ユーザビリティの向上とアップデート対象の拡充を図った。気になるのはパフォーマンスだが、PCに与える影響はウイルスバスター 2003と同程度という。

 ウイルスバスター 2004はWindows Me/98、Windows 2000/XPに対応している。価格はシングルユーザ版が8500円など。

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[高橋睦美,ITmedia]