エンタープライズ:ニュース 2003/09/24 03:13:00 更新


NCR Teradata年次ユーザー総会開幕──先進ユーザーに学び、迅速な意思決定のパワーを

シアトルでNCR Teradataの年次ユーザー総会が開幕した。新製品の発表はないものの、大規模データウェアハウスの構築では競合の追従を許さない。WalMartのような先進ユーザーに学び、あとは実装するだけ──そんなメッセージに力強い自信すら感じる。

 米国時間の9月22日、ワシントン州シアトルでNCR Teradataの年次ユーザー総会、「PARTNERS 2003」カンファレンスが開幕した。エメラルドシティのニックネームどおり、すっきりとした秋の空が気持ち良いシアトルに、およそ2700人の顧客やパートナーが集まった。

 1986年、わずか50人の参加者で始まったPARTNERSは、今年で17回を数える。PARTNER運営委員会の代表を務める3Mのマーク・ラー氏は、「回を重ねても変わらないことがある。それは教育の重要さだ」と話す。24日までの3日間で200のセッションが予定されているが、その多くはユーザー自身による事例紹介だ。日本からもジェーシービー、三井住友銀行、北陸コカ・コーラボトリングの3社がセッションを行う。

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PARTNERSの運営主体はあくまでユーザー。その代表としてホストを務める3Mのラー氏


 今年、PARTNERSカンファレンスが掲げたテーマは、「Driving Value Today」。データの洪水の中から価値ある情報を見つけ、いかに迅速で正確な意思決定を行うかが、企業の生き残りのためには不可欠となっている。いかに情報をビジネスの推進力にしているのか、先進ユーザーらとディスカッションすることで彼らが学んだことを共有できる。

 例えば、ラー氏がデータウェアハウスのプロジェクトを推進した3Mでは、5万点の商品を製造しているが、事業部ごとにまるで別会社のようで、データはばらばらに管理されていたという。いわゆる孤立した「インフォメーション サイロ」という課題に直面していたのだ。

 「利益は横ばい、しかも製品出荷は遅れがちになっていた。全社的なデータのシングルビューが不可欠だった」とラー氏。

 3Mは、手始めに間接資材の調達プロセスに「Teradata Warehouse」を導入し、データウェアハウス(DWH)を構築、迅速で適切な調達の意思決定によって年間8億ドルものコスト削減に成功した。

 Teradata Warehouseは、意思決定支援のために最初からパラレルデータベースとして開発されたTeradata Databaseを核とし、重要なクエリを優先できるPriority Scheduler、Teradata Warehouse Miner、Teradata Warehouse Builderなどから構成される。経営トップからコールセンターのオペレーターに至るまで、企業のすべての人に意思決定のパワーをもたらす強力なツールとして、昨年9月のPARTNERSでバージョン7が発表された

 DWHというと、トップの迅速で正確な意思決定を支援したり、効果的な販促策を立案するためのツールのようなイメージがあるが、こうした現場の日常業務に直結したDWHの活用が次の潮流となりつつある。

「一つの真実」が製造業にもパワーをもたらす

 ラー氏に紹介され、オープニングのゼネラルセッションに登場したのは、NCRのCEO、マーク・ハード氏。昨年9月のPARTNERSでは、Teradata部門のCOOからNCR全体の社長兼COOに昇格したばかりだったが、今年3月にはCEOへとトントン拍子に出世した。2002年、売り上げを対前年比で27%伸ばし、12億ドル規模の事業に成長させると共に黒字転換させた手腕が高く評価されたという。120年の歴史を誇り、「National」のブランドで知られるキャッシュレジスターのメーカーは、今やソフトウェアの事業責任者にその舵取りを任せようとしているのだ。

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「企業の舵取りには“シングルビュー”が不可欠」とハード氏


 ハード氏は、インターネットによって2005年までの2年間で有史以来の総和を上回るほどの莫大な情報が生み出されるというカリフォルニア大学バークレー校の有名な予測を引用し、NCRにとっては大きな市場機会があるとする。

 「インターネットでアクセスできる情報量は15ぺタバイトに達し、さらにe-コマースの進展によってデジタルデータが爆発的に増加する。すべてのものが接続されるようになれば、工場のラインやガソリンスタンドの給油機で、今、実際に何が起こっているのかを知ることができるようになる」とハード氏。

 例えば、こうだ。実用化に向けて研究が進むICタグがさまざまな製品に付けられたとしよう。それらの流れをリアルタイムでトラッキングすることで、資材の調達を微調整することができる。ある種のパターンが読めるようになれば、人の介在を減らし、さらにコストを引き下げながら売り上げを高めることができるようになるはずだ。NCRでは、このようにリアルタイムでの状況を把握するだけでなく、あるイベントに対して適切なアクションを自動的に実施する「アクティブデータウェアハウス」のロードマップを描き、顧客に進むべき針路を示している。

 ゼネラルセッション後のプレス向けQ&Aセッションで、通信業界や航空業界といった既存の主要顧客らだけではなく、製造業という巨大セクターにTeradataの新しい市場があるとハード氏は強調した。

 「データウェアハウスに格納された“一つの真実”が強力な購買パワーをもたらす」とハード氏。

 昨年9月のPARTNERSは、Teradata Warehouse 7.0という新製品の発表で華やいだが、今年は特に大きな目玉がない。大規模かつ複雑なデータウェアハウスの構築ではライバルたちの追従を許さないTeradataの実力からすれば、顧客らにはベストプラクティスを共有してもらい、あとは実装してもらうだけなのかもしれない。そこには力強い自信すら感じる。

 NCR Teradata部門は向こう9カ月で技術者やコンサルタント、あるいは営業担当者を10%増やし、さらなる成長を目指す。その第一弾として、6月にはグローバルコンサルティンググループを新設し、500人を超えるコンサルタントを集約している。

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[浅井英二,ITmedia]