エンタープライズ:ニュース 2003/09/25 14:38:00 更新


ミラクル・リナックス、韓国企業2社と戦略提携を発表。アジア展開へ

ミラクル・リナックスは韓国企業2社と戦略提携したことを発表し、e-Japan構想およびアジア向けにセキュリティの高いOSを提供していくことを明らかにした。

 ミラクル・リナックスは9月25日、都内で会見を行い、韓国企業のSecuBrain、GeneVicの2社と戦略的な提携を締結したことを発表した。

 今後3社は、e-Japan構想ならびに韓国政府のIT化に向けてセキュリティの高いOS環境の構築支援を目指し、技術提携および共同製品検証、相互製品取引、マーケティングに取り組んでいく。

 当面の活動内容としては、SecuBrainが開発・販売しているセキュリティソフト「Hizard」のローカリゼーションを行い、日本市場でも「MIRACLE HiZARD」として販売していくことと、韓国市場にミラクル・リナックスのLinuxディストリビューション「MIRACLE LINUX」を販売していくことに注力する。MIRACLE LINUXの韓国市場への展開は、韓国語対応を完了した後となり、来年初を目標に開始される予定。

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左からSecuBrain President/CEOのLee Bryan氏、ミラクル・リナックス代表取締役社長の佐藤 武氏、GeneVic CEOのHan Hoon氏


 発表の席でミラクル・リナックス代表取締役社長の佐藤 武氏は、不正アクセス・クラッキング・ウィルスに対する脅威の増加から、世界でも先進的なセキュリティ技術を有する韓国企業の技術を取り入れることで、セキュアなOSソリューションを提供していくことが狙いと話す。

 また、MIRACLE LINUXのアジア展開に関して同氏は、「Linuxディストリビューションの勢力図を考えると、米国ではRed Hat Linux、ヨーロッパではSuSE Linuxが影響力を持っているが、ことアジアに関しては、一強とはいえない状況にある。こうした状況だからこそ、アジアを見据えて展開していく意義がある」と語る。とくにエンタープライズ分野が未成熟といえる韓国市場に対してLinuxを提供していくことは大きな意味を持つとしている。

 SecuBrainの「Hizard」は、Linuxカーネルのセキュリティ拡張を行うダイナミックモジュール。スタックメモリのアドレス部分がプログラムによって不正に書き換えられることを防ぐことで、バッファオーバーフロー(BOF)攻撃をリアルタイムに遮断できる機能を備える。また、ロールベースのアクセス制御機能を実装しており、成りすましなどのユーザー権限偽造を防止する。実際のデモでは、rootユーザーでもアクセスできないリソースが示され、いわゆる強制アクセス制御が成されている様子が実演された。

 これらの機能により、OSレベルでセキュリティを向上させることが可能となり、既存のファイヤウォールやIDSでは防げない攻撃に対しても対策可能になるとしている。

 なお、管理はWindows上で動作するGUI管理ツールから行える。現時点ではWindow NT4.0/2000/XP上で動作するものしか提供されていないが、今後日本市場の反応次第では、Linux上で動作する管理ツールなども提供する予定だという。

 こうして見るとHizardは、Linuxカーネル2.6系で標準搭載されるLSM(Linux Security Module)に近いものだといえる。LSMとの違いについて尋ねられると、ミラクル・リナックス技術本部本部長の小田切 耕司氏は、「たとえばSELinuxはBOF攻撃を防ぐことができないが、Hizardは防ぐことができる。また、まだ正式にリリースすらされてもいないLinuxカーネル2.6が市場で使用されるまでにはまだまだ時間がかかるが、Hizardなら、すぐに利用することができる」と現時点での導入のしやすさを強調した。

 なお、ミラクル・リナックスは「Hizard」の国内における独占的販売権を取得したことで、今後、Linux版だけでなく、Windows版、UNIX版の提供も年内リリースを目処に進めていく予定。

 「MIRACLE HiZARD」のLinux版は10月20日から出荷予定で、価格は1ノードあたり80万円から。この価格には管理ソフトも含まれるが、複数のノードを管理する場合は、別途料金が必要となる。

関連リンク
▼ミラクル・リナックス
▼SecuBrain
▼GeneVic

[西尾泰三,ITmedia]