エンタープライズ:インタビュー 2003/10/01 20:48:00 更新


AmazonのWebサービスはWeb版「セレクトショップ」乱立の幕開けか? (1/2)

Amazon.co.jpでもスタートしたWebサービスは、顧客に何をもたらすのか。前半部分ではAmazonが提供しているWebサービスについて、後半ではAmazon.com テクニカル・エヴァンジェリストのジェフ・バー氏に対して行ったインタビューを紹介する。

 Amazon.co.jpが2003年7月9日に開始したWebサービスはAmazon.comがこれまで培ったテクノロジーの一端を顧客も利用可能となることを意味している。

 同サービスは、メンバー登録をした個人、企業、あるいはWebサイトを対象に、Amazonのコンテンツや機能をXMLやSOAPを利用して取り込むことができるサービスである。このWebサービスで具体的に何が可能になるかというと、商品批評や商品説明、検索システム、商品カテゴリごとのランキングなどがあげられる。利用者側はこれらの情報を自サイト上のコンテンツとして利用できる。Amazonから見ると、Amazonの機能とコンテンツを利用可能にすることで、売り上げの面で直接的な貢献があることを想定したものとなっているわけだ。

 このサービスを利用するためには、同社のWebサイトからデベロッパートークン(Webサービスを利用するときのユーザID)と、サンプルやマニュアル、ライブラリなどが含まれるSDK(Software Development Kit Ver3.0)をダウンロードすればよい。

 このサービスは2002年7月に米国、2003年に入って英国で開始されており、約1年遅れで日本およびドイツで同時に提供を開始した。ワールドワイドでは、サービスの利用に必要なトークンが3万5000程度発行されているという。日本国内では、ファミ通.comでのランキング部分や、Mitsukatta.comなどで同サービスが利用されている。

 また、同サービスは、Amazonが以前から実施している「アソシエイト・プログラム」と連動している。同プログラムは、Amazonに商品購入客を誘導したWebサイトのオーナーに、Amazonから顧客紹介手数料が支払われるシステムだ。しかし、これまでは、サイトオーナーはAmazonで売られている書籍や商品への単純なリンクしか表示できなかった。

 自社の機能をWebサービスとして提供するという同プログラムは、同社の最大のライバルであるeBayが、同社に先立って実施している動きに続くものだ。eBayは2000年11月、同社のAPIを使ってデベロッパーがアプリケーションを作成できるプログラムを立ち上げている。これはXMLを採用したもので、サードパーティがこのAPIを使ってeBayの出品リストを自社のサイトに表示できるようにしたものだった。

 このWebサービスは、PHPなどと組み合わせることで自サイトのコンテンツを手間をかけずにリッチに見せることも可能なので、サイトオーナーにとってその利用はメリットが大きい。また、同サービスを利用してのWebサイト構築が簡単に行えるサイト構築アプリケーションがパッケージ販売されるなど、新たなビジネスチャンスも生まれてきている。

 なお、同サービスは、個別商品の情報の取り込みからショッピング・カートに追加するまでをWebサービスとして提供している。つまり、商品を実際に購入しようと思えば、AmazonのWebサイトに移動し、そこで決済に必要な処理を行う必要がある。

残る課題は?

 同社が提供するWebサービスを国内でも普及させるための鍵として、同社が考えているのは、サポートの充実であると、アマゾン ジャパン ビジネスディベロップメント マネージャーの山口公男氏は語る。

 さまざまな問題を論議する場であるディスカッションボードについても、これまでは英語のものしかなかったが、新たに日本語のディスカッションボードが用意されたことで、議論のための場は用意されたことになる。。

 ワールドワイドで考えると、著作権など、神経質にならざるを得ない問題も残る。というのは、同サービスを利用すれば、同社が持つデータベースから比較的自由に情報を取得できる。極論すれば、音楽CDのジャケット写真の画像イメージなどが簡単に取得できてしまう。そのため、とくに販売目的ではなく、データを取得したいと考える者もいるであろう。

 山口氏によると、画像の著作権に関しては、あくまで画像のURLを提供しているだけで、それを自サイトにダウンロードして利用することは規約に反するとし、あくまでも規約を遵守した上での利用が条件となるという。


 10億ドルを注ぎ込んだ同社のテクノロジーの一部が外部からも手軽に利用可能となったことで、近い将来同社のデータベースを活用したWebサイト、言い換えるなら、Web版の「セレクトショップ」とでも呼ぶべきものが乱立してくるのではないかと考えられる。


次ページでは、Amazon.com テクニカル・エヴァンジェリストのジェフ・バー氏へのインタビューを通して、AmazonのWebサービス戦略を紹介していく。

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[西尾泰三,ITmedia]