エンタープライズ:ケーススタディ 2003/11/20 03:54:00 更新


ガートナー、「グリッドとWebサービスは将来的に融合する」

初日となった19日、同社主席アナリスト、亦賀忠明氏が「企業ITインフラストラクチャの未来:複雑性の抑制とIT価値の最大化」をテーマに講演を行った。

 ガートナージャパンは11月19日から3日間、東京・お台場で「Gartner Symposium ITxpo 2003」を開催している。初日となった19日、同社主席アナリスト、亦賀忠明氏が「企業ITインフラストラクチャの未来:複雑性の抑制とIT価値の最大化」をテーマに講演を行った。

 講演では、IBMのオートノミックコンピューティングやHewlett-PackardのAdaptive Infrastracureをはじめとして、Sunmicrosystems、NEC、富士通、日立など、さまざまなベンダーが、サーバマシンやストレージの仮想化、自律型のコンピューティングをコンセプトとして打ち出していることが挙げられた。

 また、Linuxの今後の攻勢の持続や、日本のサーバ市場において2008年末までにメインフレームシェアが、世界平均に近い14%程度にまで低下することなどが紹介されている。

 さらに、Webサービスについての解説も詳しく行われている。Webサービスについては、目的や機能がまだまだ理解されていないことが、普及を遅らせる原因になっているという。

 目を引いたのは、「Webサービスとグリッドコンピューティングが将来的に融合する」という提言。実際、両者は、分散コンポーネントの統合という目で見れば、似通った技術と言えるとしている。

 つまり、グリッドは、分散したコンピューティングノードやストレージを統合する技術。一方、Webサービスは分散したコンピューティングノードやストレージノードを統合する技術としている。レイヤーが異なるものの、基本的な考え方が「ユーティリティコンピューティング」であるという類似性があり、長期的には、企業システムとして両者は融合される可能性があるとしている。

 企業システムにおいて、サーバやストレージなどさまざまなデバイスが存在する中で、複雑性の抑制とコスト削減というテーマが与えられている。例えば、IBMのユーティリティコンピューティングを実装するための方法としても、よりシンプルなものが求められているという。

 つまり、グリッドコンピューティングによって、マシンレベルでのノードの統合が実現する一方で、最上位のレイヤーとなるアプリケーションはWebサービスで統合することができる。こうして、ネットワーク階層の下と上の両方を、仮想化を実現したすっきりした構成にできるという。

 こうした取り組みは既に始まっているが、既にGGF(グローバル・グリッド・フォーラム)ではこうしたサービスを「グリッドサービス」と呼んでいる。

 これにより、将来のプラットフォーム環境に大きな影響があるという。例えば、これまでは、UnixやWidnows、LinuxといったOS環境が、製品の優劣を比較する上での重要なファクターだったが、グリッドサービスの動きが本格化した場合は、これがあまり意味を成さなくなるという。

 すっきり統合されたインターネット仮想マシン上で、ユーティリティサービスを提供する環境を整えれば、システムの運用環境は大きく進化し、「単純なOS比較論は意味をなさなくなる」可能性も示唆している。

関連リンク
▼ガートナージャパン
▼Gartner Symposium ITxpo 2003

[怒賀新也,ITmedia]