エンタープライズ:レビュー 2003/11/22 08:19:00 更新


レビュー:Red Hatからオープンソースに回帰した「Fedora Core 1」 (1/2)

Red Hat Linuxユーザー注目の「Fedora Core」。今後は、Fedoraか、Red Hat Enterprise Linuxか、または他ディストリビューションへと移るべきか、選択を迫られる形となった。その新版Fedora Core 1レビューをお送りする。

fedora-boot.gif

11月4日にリリースされたFedora Core 1。カーネル2.4が採用されており、次期Fedora Core 2ではカーネル2.6が採用される予定だ


 米Red Hat及び国内のレッドハットは、今後の無償版(いわゆるFTP版)製品の出荷やサポートを打ち切り、エンタープライズ向けを主軸とする方向転換をした(参考記事)。

Red Hat Linux打ち切りが既存ユーザーへ今後の選択を急務とした

 すなわち、今後レッドハットから個人ユーザー向けへのパッケージや無償版が提供されることはなくなってしまったのだ。既存の個人ユーザーも継続利用はできる。だが、新しいカーネルやErrataパッケージの供給が途絶えてしまうことも事実。最新版のRed Hat Linux 9でも2004年4月30日という期限が宣告された。これを受けつぐディストリビューションとして「Fedora Core」が位置づけられたのだ。

 元々の「Fedora Project」は、ハワイ大学のWarren Togami氏を中心とした(Red Hatベースの)新しいディストリビューション開発にあった。Red Hatも開発規模こそ違え、かつてはオープンソースからのディストリビューション開発というFedora Projectと同じ立場にあった。しかし、今やLinuxの一大勢力にまで成長を遂げたのは周知なことだ。そして米Red Hatは、これを転機と捉えたようだ。

 ターゲットはもちろんマイクロソフト。Windowsはコンシューマの使いやすさを重視した。そして企業へ急速に浸透し、ビジネス向けOSとしてもリプレースしてしまった。PCパフォーマンスの向上など、諸般の素因はここでは置こう。マイクロソフトが商用OSとして多くのハードウェアベンダーへライセンス提供し、巨額の利益を生み出しているのは事実なのだから。そして、Red Hatも「企業」である以上、利益を出さなければならず、本格的な商用OSを目指すのは自然なことだ。しかし、それではFTP版や国内でのパブリックエディションを利用してきた一般ユーザーへの選択肢が消えてしまう。そこで路線変更の代替としたProjectを「Fedora Project」と合併、Red Hatがスポンサーとなり立場を変えた。

 このような経緯からか、Fedora Coreリリースとして初となる「Fedora Core 1」のデスクトップやメニュー内容は、表面上Red Hat Linux 9とほとんど変わらない。

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Red Hat Linux 9とほとんど変わらないFedora Core 1の標準デスクトップ。左下にはRed Hatアイコンが残っているほどだ


現時点ではRed Hat Linuxのツールも残るデスクトップメニュー

 外見上は、グラフィカルログイン(runlevel 5)の起動スプラッシュや標準設定の背景画像が置換された程度だ。細かい個所だが、一例としてファイアウォールの設定画面がシンプルになった。インストール後はこの機能のオン、オフのトグル切り替えになり、セキュリティレベルは省略されている。従って、システムのファイアウォールを自分で書き直すなら別だが、あくまでGUIから操作したい場合はインストール時の設定に注意しなければならない。

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細部のツールが切り替わっている例の1つ、ファイアウォール設定


 「gnome-bluetoothやgnome-speech」(text読み上げツール)、「gpdf」(gnome PDFビューア)といったシステムや周辺機器のパッケージも豊富だが、マルチメディア系のパッケージも充実している。「sound-jucer」(CDリッピングツール)や、特定のディレクトリにあるサウンドライブラリを一括しマネージメントする「Rhythmbox」といったツールも含まれる(下画像)。

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「Rhythmbox」が含まれた


 一方で、メインテナンスされなくなったGNOME 1.2系列の「Galeon」や、「gnome-lockkit」、さらに「kprinter」へと移行した「qtcups」、「qt2」、「sndconf」などの旧パッケージが削除された。メニュー概観がとてもよく似ているので見落としやすいが、含まれるパッケージはシステム内部だけでもない。筆者のハードウェア環境を例にすれば、メニューを比較してデュアルヘッドのGUIセッティングツールが付属したのが、機能的に見て分かる違いだろうか。

0b.gif

デュアルヘッド用の設定ツールが付属


 MatroxのG400系のグラフィックチップは以前からデュアルヘッドに対応していたが、nVidiaやATIのチップでもこれを認識した。X Window System自体マルチディスプレイが可能だが、G400系以外のビデオカードでは複数枚利用してXF86Configの「Server Layout」セクションを編集する必要があった。Red Hat Linuxは、本来のxf86cnfコマンドを含まず、そして通常の方法でServer Layoutを設定してもマルチモニタには出力されなかったのだ。そのためデュアルヘッドや「Xinerama」オプションはまだ問題が多く、正常に動作しないことが多かった。Matrox以外の、nVidiaやATIのデュアルヘッドカードではこれを難なく認識し、GUIでの設定動作できたことには驚いたが、筆者環境では残念ながらクローン表示のみが可能だった。

未成熟ながらもACPIモジュールも追加

 Fedora Core 1と既存最新版のRed Hat Linux 9の大きな違いは外観面はよりも、むしろシステム内部にある。カーネルモジュールはチューニングされ、acpidが追加、CPUのクロックも任意に設定可能となっている。

 カーネルバージョンは現段階で2.4.22-1。ACPIモジュールが追加されるようになったが、標準ではオフだ。これはGRUBなど起動時のオプションで「acpi=on」と設定すれば有効になるが、リリースノートではまだ開発途上にあり、サスペンドやスリープモードで問題が残っていると記載されている。試すことは可能であり、/etc/grub.confを下リストのように編集することでACPIモードを有効にできる。

# vi /etc/grub.conf

〜中略〜

default=0
timeout=10
splashimage=(hd0,1)/grub/splash.xpm.gz
title Fedora Core (2.4.22-1.2115.nptl)
root (hd0,1)
kernel /vmlinuz-2.4.22-1.2115.nptl ro root=LABEL=/
acpi=on ←追加する
rhgb
initrd /initrd-2.4.22-1.2115.nptl.img

 上記の適用後、dmesgコマンドでカーネルメッセージを確認したのが次の通りだ。

Linux version 2.4.22-1.2115.nptl (bhcompile@daffy.perf.redhat.com) (gcc version 3.2.3 20030422 (Red Hat Linux 3.2.3-6)) #1 Wed Oct 29 15:42:51 EST 2003
BIOS-provided physical RAM map:
BIOS-e820: 0000000000000000 - 00000000000a0000 (usable)
BIOS-e820: 00000000000f0000 - 0000000000100000 (reserved)
BIOS-e820: 0000000000100000 - 000000001fff0000 (usable)
BIOS-e820: 000000001fff0000 - 000000001fff3000 (ACPI NVS)
BIOS-e820: 000000001fff3000 - 0000000020000000 (ACPI data)
BIOS-e820: 00000000fec00000 - 0000000100000000 (reserved)
0MB HIGHMEM available.
511MB LOWMEM available.
ACPI: have wakeup address 0xc0001000
On node 0 totalpages: 131056
zone(0): 4096 pages.
zone(1): 126960 pages.
zone(2): 0 pages.
ACPI: RSDP (v000 IntelR ) @ 0x000f6c90
ACPI: RSDT (v001 IntelR AWRDACPI 0x42302e31 AWRD 0x00000000) @ 0x1fff3000
ACPI: FADT (v001 IntelR AWRDACPI 0x42302e31 AWRD 0x00000000) @ 0x1fff3040
ACPI: MADT (v001 IntelR AWRDACPI 0x42302e31 AWRD 0x00000000) @ 0x1fff6700
ACPI: DSDT (v001 INTELR AWRDACPI 0x00001000 MSFT 0x0100000d) @ 0x00000000
Kernel command line: ro root=LABEL=/ acpi=on rhgb

〜以下略〜

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[渡辺裕一,ITmedia]