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2004/01/13 19:59:00 更新


無線LANでのVoIP活用を視野に入れたAirFlow製品、国内で展開

従来の無線LANアクセスポイントや無線LANスイッチとは異なるアプローチを取ったという米AirFlow Networksの製品が、日本国内でもリリースされた。

 無線LANの導入・運用とは切っても切り離せない電波干渉の問題。それを解決し、無線LANの管理を容易にするという米AirFlow Networksの製品が、1月13日、日本でもリリースされた。

 AirFlowの製品は、電波の状況を見ながら無線LANトラフィックを管理、制御する「AirServer」「AirSwitch」と、その配下でクライアントからのアクセスを収容する「AriHub」から構成されている。きょう体だけを見れば、既に市場に複数出回っている無線スイッチ製品に似ているが、「設計、アプローチはまったく違う」と、AirFlowの日本ビジネス担当、三澤建日子氏は言う。

 一般に、無線LANで広いオフィスをカバーしようとした場合、無計画にアクセスポイントを配置すると電波の干渉が発生し、通信が途切れるスポットができてしまう。これを避けるには、サイトサーベイに基づいて適切なアクセスポイント配置を計算し、複数のチャネルを使い分ける必要が生じる。ただ、これで全オフィスをカバーできたとしても、アクセスポイントから別のアクセスポイントの範囲へとユーザーが移動した場合、再アソシエーション/再認証が必要となり、通信の途切れやスループット低下は避けられない。これは、無線LANスイッチと専用アクセスポイントの組み合わせでも解決が困難な問題だった。

 AirFlowはそれを、いくつかの特許技術をベースに、AirServer/AirSwitchと複数のAirHubをまとめて仮想的に1つのアクセスポイントと見なすことにより解決する。物理的に複数のAirHubが存在しながら、全体で1つのMACアドレスを持つという形だ。ここでAirHubは、単一のアクセスポイントというよりも、アンテナおよび無線LANインタフェースを備えたハブ(ブリッジ)の役割を担う。

 したがって、「ユーザーが移動しても、アンテナが変わっているだけでアソシエーションは行わない。ゆえにハンドオフは発生せず、透過的なローミングが可能になる」(東京エレクトロン第一営業統括グループ統括リーダー、林英樹氏)。干渉を解決するというよりも、干渉の存在そのものを無くしてしまう、と捉えるほうが正確かもしれない。

 「無線LANは家庭では成功を収めているのに対し、企業ではまだ普及していない。その理由としてはセキュリティ、それに位置決めの問題が挙げられる」(林氏)。AirFlow製品は一連の課題を解決するという。

容易な管理とTCO削減を実現

 こうしたAirFlow製品の仕組みは、電波干渉の解決以外にもいくつかのメリットをもたらすという。まず、事前のサイトサーベイなどを行う必要がなく容易に導入できる。導入後の増設・拡張も、AirHubを追加するだけで済む。AirHubの管理やセキュリティ設定は、AirServer/AirSwitch側で一元的に行うことができ、これは、人的ミスに起因する事故を防ぐだけでなく、TCOの削減につながる。

 また、「既存の無線LAN製品では、ローミングにともない数百ミリ秒の途切れが生じていた。しかしわれわれの製品ではそれを7ミリ秒程度にまで抑えられる」(三澤氏)。これにより、通信の冗長性を確保するだけでなく、VoIPをはじめとする新しいタイプのアプリケーションと無線LAN環境の親和性を高めることができるという。

 さらに、AirFlowのカバレージ内で複数のチャネルを多重化(オーバーレイ)することも可能だ。複数のチャネルをアプリケーションごと、あるいはユーザーグループごとに割り当てて使用することができる。また無線LANのセキュリティを高める上では必須とも言える802.1xやWPA、IPSecをサポートするほか、SNMPにも対応する。

 東京エレクトロンによると価格は、アップリンクポートとしてギガビットイーサネット×2を備えたAirServerが168万円。AirServerの機能に加え、Power over Ethernet対応の10/100BASE-Tを12ポート備えたAirSwitchは196万円。AirHubは9万5000円。1台のAirServer/AirSwitchには実質的に100台ほどのAirHubを接続できる。今のところ対応している方式は802.11bのみだが、4〜5月には802.11aを、また夏ごろまでに802.11gをサポートする計画ということだ。

新たなタイプのアプリケーションを視野に

 AirFlowでは、ディストリビュータとして東京エレクトロンと、ネットワークソリューションパートナーとしてアライドテレシスと、またセキュリティソリューションパートナーとしてテリロジーとそれぞれ提携。さらにコマツトライリンク、ITサービスの各社ともパートナー提携を結んでいる。

 東京エレクトロンの林氏は、「既存の(有線)イーサネット環境に変更を加えることなく導入でき、企業ネットワークに統合しやすい」と指摘。AirFlow製品を同社無線LANソリューションの中心に置き、認証などの技術を組み合わせながら提供していくという。特に、「無線の上にデータだけでなく音声が乗ってくるようになれば、(これが)強力なソリューションになるだろう」(同氏)という。

 また、同じくAirFlowのパートナーとなったテリロジーも、「既に無線LAN上でVLANやVoIPを活用したいというニーズが生まれている」(テリロジーテレコム営業本部、亀山商太郎氏)と言う。

 中でも、モビリティを生かしたVoIPの需要が伸びるだろうと予測。「音声のほか、ビデオやコンファレンス、ストリーミングといった新しいアプリケーションを無線LAN環境で生かすには、こうした製品が必要だ。確かに既存の製品でも対応は可能だが、コストが高く付きすぎた」(亀山氏)。こうしたマルチメディアアプリケーションを念頭に置き、安全に、かつ高スループットで利用できるようにするという意味で、従来のファットアクセスポイント/シンアクセスポイントとは一線を画した「第三世代の製品だ」という。

 亀山氏によるとテリロジーでは、802.1x対応のソフトウェア「Odyssey」やRADIUSサーバ「Steel-Belted Radius」などと組み合わせてAirFlow製品を展開。またパートナーとともに、より深いレベルのサイトサーベイを含んだコンサルティングサービスも提供していく計画という。

関連リンク
▼AirFlow Networks
▼東京エレクトロン
▼テリロジー

[高橋睦美,ITmedia]

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