インタビュー
2004/01/29 13:07:00 更新


3Cからの脱却を――エンテラシス・ネットワークス新社長、土本氏の野望

エンテラシス・ネットワークスは2004年1月19日、代表取締役社長に土本良司氏が就任したと発表した。同氏はネットワーク業界の変質に合わせた新しいビジョンを示すことで、同市場のマッピングを大きく変えたいという。

 エンテラシス・ネットワークスは2004年1月19日、代表取締役社長に土本良司氏が就任したと発表した。ネットワーク業界の変質に合わせた新しいビジョンを示すことで、同市場のマッピングを大きく変えたいという同氏に話を聞いた。

土本良司氏

エンテラシス・ネットワークス代表取締役社長、土本良司氏


ITmedia まず、土本さんのこれまでの経歴を教えていただけますか?

土本 日本NCRで20年間、セールスやマーケティングを中心とした仕事に従事したあと、日本AT&Tで法人営業を経験するなど、いわゆるキャリア側から通信の世界を勉強させていただきました。

 そのあとスリーコム ジャパンに移り、今度は、ネットワーク機器ベンダーから見た通信の世界を見てきました。コンピュータ業界と通信業界で約31年間働いていることになりますね。

ITmedia 今回エンテラシス・ネットワークスの代表取締役社長に就任されましたが、どのような気持ちですか?

土本 この会社に入って強く感じたのは、今後、大きくネットワーク業界が変質していくだろうということです。今やどの企業もネットワークなしに企業活動は機能しない状況、いわばネットワーク中心であるといえます。そのため、ネットワークがビジネスの根幹をなし、それが止まる、あるいは何か大きな攻撃にさらされるといったことは絶対に避けなければなりません。運用面の努力などで頑張っているとはいえ、現状でそれが100%保障されているかといえば、残念ながらそうではないですよね。

 もちろん、それを保証にするために、ファイアウォールやIDSなどの技術をベースにした仕組みがありますが、それらも100%の安全を保障してくれるものではありません。

ITmedia そのあたりをどうしていこうと考えているのですか?

土本 今までのネットワーク機器業界がソリューションを中心としたさまざまな提案をする中で、企業は「3つのC」でベンダー選定を行っていたといえます。1つ目が「Connectivity」、2つ目が「Capacity」、そして3つ目が「Cost」です。いわゆる「繋がります、早いです、安いです」といった宣伝文句ですね。これらが意味するのは、ネットワーク機器がコモディティの世界に入ってきているということです。

 しかし、ネットワークがこれまで以上に重要な役割を果たしている現在、非常に古いこれらのパラダイムでソリューションを決定していいのかという問題意識を持っていただきたいと考えています。

ITmedia セキュリティを重視したベンダー選定を促すことで、エンテラシスが持つ技術力が生きてくるといったところでしょうか?

土本 そうです。今後、このパラダイムでネットワーク機器などの選定を行うことは、大きな禍根を残すことになるでしょう。3Cからの脱却という、今まで誰もまとめ切れなかったものを会社一丸となって推し進めていくことで、私たちはこのパラダイムシフトを推進するつもりです。正直、私も非常にエキサイトしていて、今までの経験を集大成するような形で、この意識変革を進めていければと思っています。

ITmedia このあたりは競合となるベンダーも早い段階で同様の方針を打ち出してくる気がしますが、どのあたりが優位性となりそうですか?

土本 コンセプトではなく、技術も伴ったものを打ち出していけるかどうかでしょうね。現実的に今動く形での提案ができるかというところで、優位性があると考えています。

 他社もいろいろと提案してくるでしょう。しかし、対投資効果を含めて、現実的な検討に値するソリューションを提案できる形になっているものは少ないのではないでしょうか。コンセプトがあっても、掛け声で終わってしまってはどうしようもないですからね。

ITmedia とはいえ、そういった意識改革は一日にして成ることはないでしょう。競合ベンダーが低価格競争を仕掛けてきた場合、それに追従せざるを得ないということはないですか?

土本 私はそうは思いません。先ほど話した3Cに目を囚われた決定をするトップは問題意識の低い人であると私は思うからです。少なくとも私たちは現在の3C戦争に参入するつもりは全くありません。経営者層に対しての問題提起をしたうえで、それに対するソリューションの提案をしていくつもりです。

 日本と米国でネットワークに対する意識の違いの差は、極言すれば、セキュリティに対する意識の違いであると言えます。「ゲームのルールを変えよう」と私はよく言いますが、マーケットに対してこの部分の啓蒙活動を積極的に行うことで、このマーケットのマッピングは大きく変わると思いますよ。

ITmedia 向こう1年で大きく変わりそうですか?

土本 そうですね。やはり1年くらいは掛かると思います。逆に言えば、急激な進化を遂げる業界において、2、3年といったスパンで悠長に考えてはいれませんからね。

ITmedia 最後に、自身に期待されている能力はどのあたりにあると自己分析されていますか?

土本 リーダーシップですね。マーケットに対して、企業の方向性を明確に伝えていくことが求められていると思います。



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